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第28話 戦闘

 

 絶望的に思っていたのは、ダイ達四人だけではなかった。

 ルミーナも口には出さないが、この数相手では生き残れる自信もなかった。数体が相手なら難なく倒せるだろうが、目の前には三十体以上のオークがいる。何とか商人達を逃がすのが精一杯だろうと悟りながら剣を構えた。

 ――しかし、その中で一人だけ楽観視している者がいた。そう、トーヤにとっては何でもない敵であった。

 

 なんだ……? みんな待つのか? ――たかがオーク相手に……?


 俺はオークの群れへと駆け出していく。

 後ろからは「待つんだ!」と声が聞こえたが、こんな雑魚相手に待つ必要はない。

 先頭を走るオークに向かって、身体強化(ブースト)を使い、一気にスピードを上げ駆け寄り剣を横に一閃する。

 そのまま、その横にいるオークにも斬りかかる。

 俺が通りすぎた後、二体のオークが崩れ落ちていく。

 後ろから声が上がるが、そんな事に気にしている場合じゃない。次のオークに向かっていく。


 ……こんなのオークの集落にいた数に比べたら大したこともない。あの時は上位種もいたしな。あれに比べたら……。

 

 以前、森で狩りをしている際に、オークの集落を見つけ、三桁はいるであろうかというオークの殲滅をしたこともある。本人的にはあくまで経験値稼ぎの一貫でしかなかった。トウヤの中ではその程度でしかない。

 ただし、ソロで活動していたトウヤには、それが普通ではないと知る由もなかった。

 

「よしっ! 次!」

 

 俺は身長程の長さの剣を振り回し、オークの首を斬り飛ばす。そして遠い場所にいるオークには『火炎弾(ファイアーバレット)』を放っていく。

 顔に直撃したオークの顔は吹き飛び、悲鳴をあげることなくそのまま倒れこむ。

 更にオークの振り下ろされる棍棒を躱し、剣で斬りつけていく。

 ほんの数分の間に、オークの数は半分まで減っていた。俺の横ではコクヨウもオークを踏み潰している姿が見える。

 俺を笑みを浮かべて更に剣を振るう。

 

 そして気づく。

 ……もしかして――誰も戦ってない……?

 

 思わず、俺は後ろに飛び、オークから一度距離を取り、後ろを振り返った。

 ――そこには口を開き、唖然としているルミーナ達がいた。

 

「ルミーナさんっ!!」

 

 俺の声に気づき、ルミーナはハッとする。

 剣を握り直し、声をあげる。

 

「残りのオークは少ない。いくぞ!」

 

 その声に反応して、ダイ達もオークに向かっていく。

 全員が動きだしたことで、俺も安心してオークに斬りかかっていく。

 そして数分後には立っているオークはいなくなっていた。

 

「こんなもんだな……」


 倒したオークを見下ろしながら俺は呟く。そして全身に浴びた返り血を取り出した布で拭い、剣を拭いてから次元収納(ストレージ)に仕舞う。

 そして皆の無事を確認するために振り返ると、全員が俺に視線を向け唖然としている。

 

「皆さん無事ですね。まさかこんなところにオークが出るなんてねぇ……」

 

 緊張感もなく話しかけるが、ルミーナ達が苦笑している。

 

「……トーヤ……回復術師(プリースト)だよ……な……? なんだその強さは……」


 ルミーナが絞り出したような声で呟く。

 俺は頭を掻きながら軽く答える。

 

「ずっとソロでしたからね……。何でも出来ないといけませんでしたから」

「そ、そうか……しかし、それだけですまない強さな気がするが……」

 

 ヨソヨソしいルミーナであったが、ダイ達はそれどころではなかった。

 俺が近づくと、一歩後ろに下がる程に。思わず苦笑してしまう。

 

「みんなも大丈夫そうだな……それで……素材はどうしようか」

 

 オークは脂肪分が豊富で雑食性でありながら、肉は美味い。討伐証明は豚のような鼻を切り取ればいいのだが、出来れば持ち帰りたい。自分から言い出す訳にもいかず悩んでいるとルミーナから声がかかった。

 

「そうだな……、トーヤ、次元収納(ストレージ)に入るだけでいい。持ち帰ってくれるか? ギルドに納めればその分報酬も増える筈だ」

 

 ルミーナの言葉に俺は頷き、近くに転がっているオークの死骸を次々と仕舞っていく。

 数分のうちに全部の死骸がなくなり、オーク達の血だけが広がっている状態となった。

 

「とりあえず、全部入ったので持ち帰りますね」

 

 軽く言う俺の言葉に再度全員が唖然としたのは言うまでもなかった。

 

 

 その後、血の匂いが酷いために、商人達も移動の準備をする。

 テントを畳み、少し離れたところまで移動した。

 匂いが届かない場所で再度休憩をとり仮眠をとる。

 しかし皆、先ほどの戦いによって興奮状態であり、眠れる状況ではなかった。

 そんな中、俺は気にすることもなくそのまま眠りにつくのであった。

 

 次の日、昨日の魔物との戦いが嘘のように静かな街道を俺とルミーナが先頭に立って進む。

 昨日の戦いからダイたち四人は俺と少し距離をとるようになった。

 もしかして昨日やり過ぎたのかなと思いつつも進んでいく。 


「やっと街が見えてきたぁ」


 視線の先にはフェンディーの街が入ってきた。

いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
まだここまでしか読めていませんが、大変引き込まれる物語で気に入りました。 まだまだ先があるので、大事に拝読させていただきたいと思います。
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