第13話 次元収納の中身
さらに数日が経ち、やっと屋敷へと戻ってきた。
俺は鍵を開けて屋敷へと入る。
「生活魔法で身体は綺麗に出来るし、装備は次元収納に一度入れれば綺麗になるけど、やっぱり風呂に入りたいよな……」
そんな事を呟きながらホールに入ると、すぐに白い靄からフェリスが現れた。
「ただいま……フェリ――」
俺は言葉を詰まらせた。何故ならフェリスはとても悲しそうで今にも泣き出しそうな表情をしていたからだ。
十年以上経ってやっと認められる家主がいきなり数日も帰ってこなかったので、もしかしたら心配したのかもしれない。
「――フェリス、帰るのが遅れてごめん」
家精霊に謝るのもおかしいが、俺は頭を下げて謝罪をする。
『ぉ…そ…ぃ……しんぱい……した……』
小さな鈴のような声がフェリスから放たれた。
想定外の言葉に俺は目を見開く。
「……えっ!? フェリス、お前……話せるのか!?」
フェリスは俺の問いに答えることなく姿を消していく。
「フェリス! ちょっとまってよ!」
俺はホールに響き渡るような大声で叫ぶがフェリスは現れなかった。
出てこないフェリスにため息をつき、俺は風呂へと向かう。
風呂はいつでも入れるようにしてあった。
服を脱ぎ捨て、身体を洗ったあとに浴槽に身体を沈めていく。
「ふはぁ……これだよ、これ。やっぱり日本人は風呂だろ……」
広い浴槽で足を伸ばし、顎が着くまで身体を沈めた俺は今後の事を考える。
とりあえずの目標は転職し魔法術師をレベル100まで持っていく。そして、2次職を選択するか、前衛系の1次職に転職する。
後は、魔法を覚える事か……。回復系の神聖魔法は幼女賢者から買ったから問題ない。ギルドに行って素材を売るついでに買いに行くか。
風呂を上がった俺は着替えてリビングで寛いでいると、数日に渡る狩りから緊張感からかいつのまにか寝ていた。
夜、気づいて起きると、いつの間にか俺の身体に毛布が掛かっていた。
思わず俺は頬を緩ませた。
「フェリス……ありがとう」
誰もいない部屋で俺は一言礼を言い、寝室のベッドの中で改めて眠ることにした。
翌朝、ダイニングで朝食を取っているとフェリスがそっと現れる。
「フェリス、おはよう! 昨日は毛布ありがとう」
笑みを浮かべて挨拶をすると、フェリスは少しだけ頬を緩め本当に小さい声だが返事が帰ってきた。
「――お…はよう……」
また心配するかもしれないので、俺は今日の予定を伝えることにした。
「フェリス、今日は街で買い物に出かけてくる。あと、ギルドにも。コクヨウの世話を頼んでもいいか? あいつ、次元収納の中だけだと機嫌悪くなるんだ」
俺の言葉に、フェリスは笑みを浮かべ大きく頷いた。
「ありがとう、よろしく頼むよ」
朝食を済ませ、俺は着替えて街へと出かけた。コクヨウも付いて行きたそうな顔をしていたが、説明をすると理解できたのか、大人しく厩舎に入りくつろぎ始めた。
商店はすでに開いており、店員と話しながら美味しそうな食材を次々と買っていく。あまりの量に心配されたが「大丈夫」と言い、両手に大量の袋を持ち、路地に入って次元収納にしまっていく。
そして冒険者ギルドにつくと、受付の順番待ちをしている冒険者たちの後ろに並ぶ。
5分ほどで順番がきて、受付嬢の前に立つ。
「いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ。本日のご用件は?」
「魔物の素材の納品なんだが……ちょっと量が多くてね……」
俺は軽く手に持つリュックを叩くと、察したかのように素材置き場に案内された。
素材置き場はギルド会館の横の建物で、体育館のように広々とした空間だった。
受付嬢は、解体をしている職員に声を掛ける。
「シングレットさん、素材の持ち込みなのですが、お願いしていいですか?」
「いいよ、そこの空いている場所に置いておいて」
受付嬢は俺のところに来て、素材を置く場所を解体場担当職員の言われた通りに案内をしてくれた。
「あとは、あの職員の指示に従ってください。納品一覧の用紙を貰えますので、それをカウンターにお出しください」
「わかった。ありがとう」
俺が礼を言うと、笑顔で一礼してギルドへと戻っていった。
素材を置く場所を指示された俺は、そこから次々と次元収納から魔物を出していく。
途中、作業しながら横目で見ていた職員は、その作業の手が止まり、目を見開き驚いている。
それでも、魔物を更にに出していると、職員が走って来て止められた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!! そんなに大量に!? もしかして……まだあるのか!?」
「まだ半分も出してないかな……」
少し悩んで答えた俺の返事に職員は絶句する。
すでに置いた魔物で小さな山が3つほど出来ていた。扱い易いように魔物の種類ごとに分けたつもりであったが、だしたのはゴブリンの耳がまとまった袋が3つと、そのまま素材として使える魔物として、オーク、フォレストウルフ、フォレストベアと出していた。
まだ他にもオーガや、コモドオオトカゲを大きくしたようなアースドラゴンは次元収納に仕舞っている状態だ。
「そんなに大量に出されても処理できん。おーい、誰かギルドに走ってチーフか誰か呼んできてくれ!」
シングレットの言葉に若い職員が作業をやめギルドへと駆けていった。
俺はただその場で待つように言われ立ち尽くしていた。
いつもありがとうございます。
ちょっと本気だして書いてます。
ちなみに転生貴族は土曜日更新予定になります。




