表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/166

17-5 異世界技術者達の選択(0.9k)

 牢獄と、ある意味牢獄よりもしんどい秘密会議から解放された俺達は首都のヘンリー邸へ帰ってきた。


 そして、昨日バカ騒ぎをしたあの部屋に再び集まっている。

 昨日と違うのは、ジェット嬢が俺の背中ではなく皆から見える位置に居ること。


 机がハイテーブルのため椅子に座ると高さが合わないので、ジェット嬢は【ヨセフタウン名産高強度耐食鉄合金製四段脚立】の三段目に座っている。


 ヘンリー卿が【ヨセフタウン名産耐食鉄合金製バケツ(大)】をもってきて皆に呼びかける。


「この世界の未来の選択をするぞ」


 ウェーバ、プランテ、ルクランシェが、紙束をバケツに入れる。

 そして、ヘンリー卿も紙束をバケツに入れて、そこに火をつけた。


 室内に置いたバケツの中で紙束が燃える。

 煙が出たので、プランテとルクランシェが窓を開けた。


 ジェット嬢がどこからともなく紙束を取り出して言う。


「牢獄で描いていた分がここにあるわ」

「そうか、それは助かる。ウェーバ、プランテ、ルクランシェ、描いたものが全部揃っているか確認してくれ」


 ヘンリー卿が応えて、全員が紙束を確認する。


「全部あります」


 ヘンリー卿がその紙束をまとめて、バケツで燃える火の中に入れる。


 バケツの中で燃える紙束は、昨日と今日で描いた【滅殺破壊弾】の設計資料。

 今日の秘密会議を通じて、技術者達は何らかの答えを見つけたようだ。


 それがどのようなものかは分からないし、各人で見つけた答えは違うのだろう。

 それでも、【滅殺破壊弾】がこの世界の歴史に不必要という認識は共有したということだ。


 全員でバケツの中で紙束が燃え尽きるのを見守った。


 燃え尽きた頃、ヘンリー卿が口を開いた。


「我々の未来の選択を祝って、飲もうじゃないか」


 全員、静かに頷く。


 【ザ・メイド】の方が酒とグラスを持ってきた。

 そこで、脚立に座るジェット嬢が一言。


「今日は投獄されるような発言は慎みなさいよ」


 そうだな。もう投獄はこりごりだ。


 エスタンシア帝国との開戦期日まで残り五十八日。

 やるべきこと、考えるべきことは多い。

 でもそれは明日からだ。


 今日はもう疲れた。

 休んでもいいだろう。

●次号予告(笑)●


 大砲と重機関銃の近代的陸戦兵器で武装する敵国エスタンシア帝国軍に対し、自国ユグドラシル王国は剣と盾のファンタスティック装備。

 正面から対峙すれば秒殺不可避な火力差。


 防衛戦となる初戦を引き分けに落とし込むためには兵器と戦術の革新が必要。

 各地領主が国を守るために要素技術を持ち寄る中、男は【戦争の現実】と【技術者倫理】の間で葛藤かっとうする。


「新兵器の開発を拒否した俺が、新兵器の開発を提案するのか?」


「俺は技術者だ。軍人じゃない」


 開戦期限は間近。

 戦争へと転がり始めた歴史の流れを止めることはできない。


 世界の破滅を防ぐための、異世界技術による戦争への加担。

 前世世界の英霊えいれいに対して、これは、報恩ほうおんか、それとも冒涜ぼうとく


次号:クレイジーエンジニアと反斜面陣地

(また幕間入るかも)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ