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2-2 魔王討伐隊前線基地の跡地(1.6k)

 魔王討伐隊前線基地跡地にて、廃棄されているガラクタを物色する俺。


 車輪付きの大砲のようなものが数門捨てられているのも見つけた。

 技術者のさがとでもいうか、こういうの好きなのでウキウキ気分で確認。


「前装式かつ、駐退機ちゅうたいきナシの初歩的な大砲か」


 しゃがんで砲口から内側をのぞき込んで細かなところを見る。

 前世ではこういうものの現物は博物館で柵超しでしか見られなかった。でも今は近くで見ても触っても動かしてもいいのだ。

 ちょっと楽しい。


「砲身内にライフルは刻んでない。滑口砲か? 砲身も思っていたより厚肉だな。口径は85mm程度、砲身長は十五口径ぐらいといったところか」


 ぶつぶつとつぶやきながら、今度は立ち上がり上から砲身を見下ろしながら考える。

 前装式ということは、発射口側から弾薬を装填するということで、これでは連射はできない。

 駐退機ちゅうたいきナシだと、発射の反動で大砲自体が後ろに飛び跳ねるので、発射のたびに据え付け直す必要がある。


 今まで遭った【魔物】を思い出す。

 この大砲ではあんな風に動きまわる標的に命中させるのは絶望的だ。

 何を考えてこんなものを持ってきたのやら。


「【魔物】相手では置物確定だな」


 そう言いながら、大砲の後端部をそっと触る。


 轟音と共に大砲が暴発ぼうはつ


 砲全体が後ろに飛び跳ねて周囲が煙に包まれた。


「…………」


 けむりが晴れてきたところでおそるおそるジェット嬢の居る方を見ると、目を丸くさせてこちらを見ていた。


あきれた……。本当に暴発ぼうはつさせたわ、このアホ……」


 誰がアホだ。

 俺か。俺だよね。

 わかってる。


「ごめんなさい。今後気を付けます」


 装填状態で放置したアホも悪いと思うが、ろくに確認もせず不用意に触った俺が一番悪い。

 そういえばさっき俺コレの砲口覗いてたよな。


 いや、考えるまい。


 廃棄物の中から気に入ったガラクタを集めて、それを抱えてジェット嬢のところにウキウキ気分で戻る。


 オカンにシメられるボウズの姿が再び顕現した。

 座るジェット嬢の前に正座してうなだれる俺。


「さっきアンタが暴発させたアレは大砲って言って、取り扱いがすごい難しい武器なの。すごく危ないの。不用意に触らないで」


 アレが大砲ってことは俺だって知っている。

 取り扱いが難しいってことも、危ないってこともよく知っている。

 なのに、何故不用意に触ってしまったのかは分からない。


 これが俺のダメ行動癖。

 だからダメな結果になる。

 だから説教される。


「申し訳ありません」


 謝る俺にジェット嬢の追い討ちは続く。


「とにかくアンタは、武器やそれに類するものは触らないで。見つけても触らないで。絶対にロクなことにならないから」


 怒られながらも、気になったことがあって聞いてみる。


「あの大砲は【魔物】相手には不向きだと思うんだが、何でここに持ってきていたんだ?」

「魔王討伐計画を共同で行っていたエスタンシア帝国から提供されたのよ。命中した時の破壊力はあるから使えると思ってた人も多かった。だから、前線基地まで持ってきたの。でもアンタの言う通りで、【魔物】相手には不向きだったわ。結局討伐でも使えなかった」


 ため息をつきながらも事情を教えてくれるジェット嬢。


「当たらなければどうということはない。というやつだな」

「そう。それよ」


 ジェット嬢とは仲良くやっていける気がした。


 その後、ジェット嬢は林の中で迷っているときに俺が話した魔法の話を持ち出してきた。


「魔法に対する解釈が違ってるってどういうこと? アンタ魔法使えるの?」


 あの時は直後に【魔物】が出たのと、それをオーバーキルした後に食べ物の話で盛り上がったので今まで忘れていた。


「俺は魔法は使えない。だが、俺の前世で得た知識からすると、魔法のエネルギー源についての解釈が間違っていると思ってな」

「どういうこと? 術者の体内で生成しているってのが私たちの常識だけど」


 ジェット嬢の疑問に対し、俺は前世の世界の常識と絡めて俺の考えを説明する。


「エネルギー保存則というのがあってな。エネルギーっていうのは消えたり現れたりはしないもんなんだ」


 剣と魔法の世界でこの俺の前世の世界の常識が成立するのか。

 理由は無いが、なぜだか俺は成立すると確信していた。

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