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14-3 プランテ研究室の萌え研究(2.3k)

 研究室入口にて、久しぶりに会うプランテに挨拶する。


「プランテよ。久しぶりだな元気にしてたか」

「お久しぶりです。おかげさまで研究は順調ですよ。今日はルクランシェも来ています。コーヒーを淹れますので、どうぞ研究室の中へどうぞ」


「すまんな。……コーヒーは飲みたいが、俺は研究室には入れなさそうだ」


 プランテの研究室。

 【鉛蓄電池】と【魔力電池】の改良と並行してフロギストンに影響を与える材料の研究も行っている。そして、その研究室の中は【潜水艦状態】になっていた。


 【潜水艦状態】とは。


 前世の俺は、工業大学の工学部で技術を学んだ。

 その大学の一部の研究室には、研究に没頭する人間ばかりが集まってしまったがために、書籍や機材が溜まる一方になり、潜水艦の艦内のように人間一人がやっと通れる隙間を残して埋まってしまった部屋がいくつもあった。


 そのような状態を指して【潜水艦状態】という。

 防火安全上マジで危険な状態なので、早急な改善が望まれるというやつだ。


 当然、そんな状態の部屋にビッグマッチョかつ、ジェット嬢を張り付けている俺が入室できるはずもなく、研究室外側の談話スペースにてコーヒーを飲みながら話をすることになった。

 談話スペースの椅子にジェット嬢を降ろして、俺、ジェット嬢、プランテ、ルクランシェでテーブルを囲む。


 キャスリンの状態を考えると、ゆっくりコーヒーなど飲んでる場合ではない。

 だけど、そんな時こそあせりは禁物だ。状況を把握しつつも、落ち着いて行動するためにあえて休憩を挟む。どんな戦場でも人間は休憩なしでは戦えないのだ。

 そういう考え方は魔王討伐隊メンバーとして本物の戦場を経験したジェット嬢も理解しているようで、落ち着いて座ってコーヒーを飲んでいる。


「プランテよ。説明するのが難しいんだが、フロギストンの波動に影響を与えそうな材料やアイテムに心当たりはないか」

「望む効果が得られるかどうかわかりませんが、魔術師の魔力強化ができないかと考えて試作した物ならありますよ。ルクランシェ。ちょっと研究室から試作品もってきて」

「わかりました。とりあえず全部持ってきます」


 ルクランシェが研究室から持ってきてテーブル上に並べたアイテムは、俺の前世世界で見覚えのあるものだった。


【ネコ耳(トラ・立ち)】

【ネコ耳(黒・立ち)】

【ネコ耳(白・立ち)】

【ネコ耳(黒・垂れ)】

【ネコ耳(白・垂れ)】

【ウサギ耳(黒・大・ストレート)】

【ウサギ耳(茶・中・左途中折れ)】

【ウサギ耳(白・小・ストレート)】

【ウサギ耳(茶・小・垂れ)】

【犬耳(黒・ブリック)】

【犬耳(茶・バット)】

【犬耳(赤・ドロップ)】

【犬耳(橙・キャンドルフレーム)】

【犬耳(黄・バタフライ)】

【犬耳(緑・コックド)】

【犬耳(青・ローズ)】

【犬耳(紫・ボタン)】

【犬耳(灰・ペンダント)】

【犬耳(白・フォールド)】


 何の研究室だよ。何の研究してたんだよ。


「ユグドラシル王国南部の鉱山地区で最近発見された耐火繊維材料がフロギストンに影響を与えていそうだったので、それを組み込んで装着に適した形に加工したものがこちらになります。帽子や髪飾りのように頭の上に装着して【萌え】ます」


 ルクランシェが楽しそうに説明する。


 その耐火繊維材料って、俺の前世世界のアスベストに相当する物じゃないだろうな。もしそうだとしたら長期的には危険なものだから広く普及する前に止めたい。

 そして最後の一言は本音か? 趣味か? そういう趣向なのか?


「【萌え】の概念を体現したこのデザインは我々の研究の最高傑作です。でも、装備できる人が限られるうえに、人によって得られる効果がバラバラです。ウェーバは装備すると仕事がはかどるというので【キツネ耳(茶)】を貸出中です。クララに【ネコ耳(白・垂れ)】を装備させようとしたら逃げられました。そして後でフォード社長に怒られました。メアリ様は【ウサギ耳(茶・小・垂れ)】が装備できそうですが、怖くて頼めません」


 プランテもまた楽しそうに補足説明。


 装備できる人が限られるうえに、実質効果があったのがウェーバだけか。また変な【電波】を受信していないといいが。

 メアリに頼むのが怖いのは同感だ。確かに装備できそうな気はするが。


 そして、本当に何の研究をしてたんだよ。

 まぁ、それはいい。


 問題はジェット嬢が装備できるものがあるかどうかだ。俺の主観では髪色に合わせて黒いのが似合いそうだが。

 おそるおそるジェット嬢を見ると、既に【ウサギ耳(黒・大・ストレート)】を装備して喜んでいた。


「アンタたちなかなかセンスいいじゃない。コレが一番効果ありそうな気がするわ」

「【萌え】を理解いただけて光栄であります!!」


 プランテとルクランシェは嬉しそうだ。

 ジェット嬢が正しく【萌え】の概念を理解したかどうかは分からんが。


 ジェット嬢の黒髪短髪の上にストレートに伸びる50cm程度の長くて黒いウサギ耳。長さを考えると普通に倒れそうだけど、ジェット嬢の頭の上に乗ったウサギ耳はピンと上を向いて立っている。

 そして、良く似合っている。

 薄赤色のメイド服ともよく調和がとれている。


 【ウサギ耳対応背中張付型滅殺破壊系ヒロイン】爆誕


 需要は無いな。

 売るつもりは無いけれど。


 俺達は【ウサギ耳(黒・大・ストレート)】と予備として【ネコ耳(黒・立ち)】を借りて、食堂棟への帰路に付いた。

 ジェット嬢は【ウサギ耳(黒・大・ストレート)】装備状態で俺の背中に張り付いたので【西方運搬機械株式会社】の工場内を通るときに視線を集めていたが、ジェット嬢がいいならいいやと思ってスルーした。


 当然、俺は【ネコ耳(黒・立ち)】を装備しなかった。

 これは俺に装備できるアイテムじゃない。

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