10-7 キャスリン、試作2号機を強奪(0.7k)
第二王子の妻キャスリンが、あり得ない方法で【試作2号機】を強奪した翌日午前中。キャスリンはその【試作2号機】で帰ってきた。
滑走路に綺麗に着陸し、床下の搭乗口から降りて、出迎えたウィルバー達に開口一番。
「コレ頂戴!!」
昨日はこの【試作2号機】で首都の王宮まで帰ったとか。居住棟の自室の真上の屋根に着陸させて自室の窓から帰宅したそうだ。
飛行機でドア・ツー・ドアする奴は初めて見た。
【試作2号機】は試作機であり商品ではないのでウィルバーは引き渡しに難色を示したが、キャスリンが結構な額の小切手を持ってきたこともありフォードは貸出の形での提供を提案。
消耗品交換などの定期点検が必要になるので、飛行時間記録を確実につけることと飛行時間が規定を超えるまえに必ずここで整備を受けるという条件で機体を引き渡した。
イェーガ王子はキャスリンの帰還を待つため予定を変更し、昨晩は護衛の三名含めてサロンフランクフルトに宿泊していた。朝から顔色が悪く胃のあたりを押さえていた。
なんか気の毒になってきた。
ヨセフタウンから首都まで直線距離でおよそ250km。馬車では五日かかる距離だが【試作2号機】なら二時間もかからない。
キャスリンが首都とサロンフランクフルトを高速で往復することを想定し、護衛騎士二名がここに常駐することになった。
【試作2号機】は操縦者しか乗れないので、イェーガ王子と護衛一人はこれから五日かけて馬車で首都に帰るそうだ。
疑問に思っていたことを思い切ってキャスリンに直接聞いてみた。
「操縦が難しい【試作2号機】をどうやったらあんな自由に動かせるんだ?」
「操縦席に取扱説明書がありましたの」
それは答えになってない。
俺は、あの配色が原因だと思うことにした。
●次号予告(笑)●
人が住めそうだけど、住んでいない場所。
町になりそうだけど、街になっていない場所。
そういう場所には、そうなるだけの理由がある。
サロンフランクフルト周辺は、海抜高度がヨセフタウンよりも低い。
この世界の生活排水の処理は、排水溝による河川放流に頼っていた。
【西方運搬機械株式会社】の工場が稼働を開始、今まで数名しか居住していなかったサロンフランクフルト周辺に百名を超える人員が常駐しだした。
雨の多い季節が終わり夏が近づく中、サロンフランクフルト周辺が街となっていなかった驚愕の理由が居住者達を襲う。
領主と社長を含む四名がテーブルを囲み【お通夜状態】。
その中で、【金色の滅殺破壊魔神】がつぶやく。
「焼き払いたいわ」
クレイジーエンジニアは町を、世界を救えるか。
次回:クレイジーエンジニアと環境改善




