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6-4 鉛蓄電池が運ばれてきた日(1.0k)

 さんざんな初対面だったプランテだったが、彼がボルタ領から運んできた荷物は俺の心のときめきゲージを刺激するステキなものだった。


【鉛蓄電池】


 希硫酸電解液の高い導電率による驚異的な大電流放電能力と、鉛の持つ高い水素過電圧により水系ながら単セル当たり2Vという高い起電力を得た、水系蓄電池の王者。

 

 ボルタ領にてプランテが研究し続けていた電池系で、ヘンリー卿の電動機完成の報を受けて、その電動機の電源特性に合わせる形で完成させ、ここに運び込まれたとのこと。


 鉛蓄電池を馬車から降ろして展示室に運搬する作業は俺も手伝った。

 一緒に作業した若い衆に重量物の持ち上げ方を指導した。

 腰で吊り上げるんじゃない。下からすくうように支えて、脚の力で上げるんだと。

 若いうちから習慣として注意しておかないとこういうダメージは蓄積するからな。40代になったときにいきなりギックリ腰発症して救急搬送されるからな。


 口うるさくいってもなかなか若い衆は理解してくれない。だけど、俺は40代のオッサン。人生の辛さ苦しさ痛み、そしてなにより腰の痛みを知っている。

 分かってくれない若い衆相手でも根気よく指導する。かつて、若かった俺を根気よく指導してくれた上司のように。


 その後昼食。

 フォードが連れてきた大人数により食堂は満員御礼。にぎやかなランチタイムになった。

 車いすに降ろしたジェット嬢は配膳を手伝っていた。ウェイトレス業復活とか。

 俺も手伝おうとしたら、でかくて邪魔だから繁忙時間帯は調理場に入るなとメアリに追い出された。


 顔は笑顔で、心で泣いた。


 午後からは忙しかった。

 フォードがトラクターの設計や部品の試作のために町中から集めてきた大人数。

 その中には、鍛冶屋や大工の次男三男や市街地にある技術学校の講師も含まれており、トラクター設計の傍ら、製図技術の講習会やジェット嬢による小集団簡易魔法学校。

 屋外では魔法応用の熱間鍛造による即席での部品の試作などを行っていた。


 しばらくするとヘンリー卿も来た。プランテとヘンリー卿は展示室にて電動機と鉛蓄電池の組み合わせ運転試験を行うとのこと。

 電動機が直流直巻ちょくりゅうちょくまきだから軸無負荷で電池直結すると危ないと伝えると、鍛冶屋が即席で電動機用の軸負荷装置を作ってくれた。


 この世界の若い衆は皆エネルギッシュだ。

 【魔王】討伐成功により【魔物】が出なくなり、城壁都市外側で自由に活動が出来るようになった。

 格段に広くなった自分たちの世界と、俺が持ち込んだ技術の種で、自分達の新しい未来を切り開こうとしているように見える。


 俺は40代のオッサン。未来を切り開こうとする若者を導くのが仕事。

 ここでの俺のやるべきことが見えた気がした。

●次号予告(笑)●


 進みつつある小さな産業革命。それの未来に夢を抱いて多くの男達が集まる。


 その中には、心に傷を抱えた者も居た。

 前世で40代オッサンだった男は、そんな若者に世界の真理を示す大切な言葉を授ける。


【長身はモテ要素では無い】


 その言葉に感銘を受けた小柄男達は団結し、揃いも揃ってダメな方向に転がりだす。

そして、背中合わせの二人が見守る前で、超えてはいけない一線を越える。


「ふぁいとー・めっさーつ!」


 女の変な掛け声と共に頭上から降り注ぐ溶岩の雨。

 【セクハラ発言】の報復は【大惨事】。

 男の友情の行方はどっちだ。


次号:クレイジーエンジニアと男の友情

(幕間入るかも)

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