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4-4 新開発! 魔力駆動電動機(1.0k)

 セクハラと失言に雷を落とし、ふてくされたジェット嬢。

 怒りはもっともだが、俺としては気になるところは別にある。


「今のは雷魔法か?」

「そうよ」


 後ろを向いたままジェット嬢が応える。


「ヘンリー卿、喜べ。電源が確保できたぞ」


 フォードが復活し、ジェット嬢がこっちを向いた。

 ヘンリー卿も目を丸くして俺を見る。


「雷は、電気だ」

「「「はい?」」」


 この世界では雷が電気の一種であることは認識されていなかったようだ。前世世界では常識だったが、そこでもそれが常識になるまでの過程というものはあったのだ。


 机に置いてあるヘンリー卿の電動機でんどうきの前にジェット嬢が車いすで座る。


電動機でんどうきから出ている二本の銅線をくっつけた状態で持って、その中に小さい雷を流すようなイメージで魔法を発動させてみてくれ」

「わかった。やってみる」


 ブーン  カタン、カタン、カタン


 ヘンリー卿、フォード、部屋の入口からメアリが見守る中、電動機でんどうきはゆっくりと動き出した。


「「「「動いた!」」」」


 歓声が上がる。

 魔力による電動機でんどうきの運転。

 ファンタジーとテクノロジーが連結された歴史的瞬間である。


「うぉぉぉぉぉ!!」


 電動機でんどうきの始動を見て、ヘンリー卿が雄叫びを上げる。


「もうちょっと雷を強く流せるか?」


 俺はジェット嬢に頼んでみる。


 シュイィィィィィィーン


 電動機でんどうきが勢いよく回りだした。回転子のバランスも良く、軸受けのガタも無い。機構部分の完成度が高い。鍛冶屋の技術力の高さと、ヘンリー卿がこの電動機でんどうきに懸けた情熱が伝わってくるようだ。

 見た感じ滑り軸受だが、あとで軸受けの材質と潤滑油の素性を聞いてみよう。


「ファンタスティーック!」


 シュイーン シュルルルル シュイーーン シュルルルルー


 ジェット嬢が夢中だ。

 可変速運転を楽しんでいる。


「これはすごい技術だ! ヘンリー卿! これはすごいぞ!」


 フォードも興奮している。


「うおぉぉぉぉ! うぉぉぉぉぉ! ゴフッ!!」


 感動の雄叫びを上げていたヘンリー卿が興奮しすぎて鼻血を出して倒れた。


「ヘンリー卿! これは歴史を変える大発明だ! 設計図を! 設計図を見せてくれ! 部品作った鍛冶屋を教えてくれ! 俺にも作らせてくれ! つくらせてくれぇぇぇ!」


 フォードが駆け寄ってヘンリー卿を抱き起しながら叫ぶ。

 そして部屋の入口にはヘンリー卿とフォードの姿を見て号泣しているメアリがいる。


たっとい。たっといわ……」


 見なかったことにしよう。

 ジェット嬢は相変わらず夢中で電動機でんどうきで遊んでいる。


「ファンタスティーック! ファンタスティーック!」


 シュィィィーーーン シュイィィィーン


「カオスティックだな」


 俺だけが、俺だけが。

 正気でその部屋に立っていた。

●次号予告(笑)●


 剣と魔法のファンタスティック世界。日常の中に魔法があるのが当たり前のこの世界では、【機械】の発達が遅れていた。


 そんな中で突如完成した魔力駆動の【電動機でんどうき】。それの生み出す強力で安定した回転運動は、若者達に今まで欲しかったものを作り出す夢を見せた。


 しかし、動力源はあくまで魔力。魔術師が居ないと回せない。


 だったら、魔術師を増やせばいい。

 そう考えた青年は、男と女に当たり前のように無茶ぶりをする。


「町内から魔法適性のある人を集めてきたんだ。彼らに魔力で電動機が回す技術を伝授してくれ」


次号:クレイジーエンジニアと魔法学校

(幕間入るかも)

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