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臨死戦隊★ゴエイジャー配属編 臨死ブラックの黒歴史(3.7k)

 私は、元・ユグドラシル王国国境警備隊副隊長。本名はレイマン。アンダーソン領出身で、黒目黒髪で見た目も黒いが、腹まで黒い自覚アリの職業軍人だった。

 ちなみに地元に同じ配色の妹が居るが、アレは黒というより【闇】だ。


 そんな黒い私だが、失業していたところを【臨死戦隊★ゴエイジャー】所属の【臨死ブラック】として再就職を果たした。

 元々黒がトレードマークだったので今後は【臨死ブラック】を名乗ろうと思う。


 あのむすめが王宮に逆襲に来た日。

 世界の滅亡を防ぐために、死なばもろともとドクトルGと共に事務棟の建屋内より狙撃を試みた。


 結果、建物ごと粉砕。生き埋めにされて一日臨死。


 実はあのむすめとの出会いは結構古い。

 出会った当時、私は王宮騎士団の情報収集部隊に所属しており、【魔物】の発生状況調査のため国境沿いの領地を巡回する仕事をしていた。


 ヘンリー領の前線基地の食堂にて休憩中に、美人のウェイトレスが居たので話しかけてみた。見た目の割に話し方が子供っぽいと思って歳を聞いたら実際子供だった。


 つい笑ったら、テーブルセットごと焼かれた。


 あのむすめの【回復魔法】は強力で、黒焦げにされた私はすぐに復活した。

 治療後にあのむすめは養母に尻を叩かれて泣いていた。

 治せるからといって躊躇ちゅうちょなく人を黒焦げにするのはどうなんだ。


 だが、【使える】と思った。


 【魔物】討伐の最前線で重傷者が出た場合は【回復魔法】の使い手が多く所属している王宮病院に搬送するのが慣例だった。

 しかし、王宮のある首都は前線から遠い。

 搬送中に亡くなる傷病者も少なからず居た。


 【魔物】の出没は国境付近に集中しているんだから、前線近くに【回復魔法】の使い手を寄越せと再三意見具申しても王宮の連中は聞く耳持たねぇ。

 でも前線に近いこの場所にあのむすめが居るならそれでいいやと、この時以降は前線での負傷者はこの場所に送るようにした。


 【77年ユグドラシル東部スタンビート事件】の時、私は王宮騎士団応援部隊の副隊長として合同討伐隊に参加していた。


 あの時は危なかった。


 前例の無い【魔物】の多さにより負傷者が続出。隊長も負傷し陣形が崩壊して部隊全滅の危機に陥った。

 退路たいろすら失いつつあった絶体絶命の状況の中、一か八かの賭けとしてあのむすめ殿しんがりを任せた。


 あのむすめは、殿しんがりついでに討伐まで完遂した。


 その直後、私は調査隊を編成してリバーサイドシティ跡地の状況確認に行った。調査隊全員が絶句した。首都を超える規模の大都市の跡地を、あのむすめ一人で焼け野原にしていた。


 【ヤバイ】と思った。


 あのむすめの存在は実は王宮には報告せずに隠していた。だけど、ここまでデタラメされると隠すこともできず【今回たまたま逸材見つけました】的な感じでやんわりと報告。


 強力な【回復魔法】と桁違いの魔法破壊力。

 案の定、【魔物】討伐の戦力として欲しいと王宮から声が上がった。


 前線担当の私としてはあのむすめは前線が近いここに居てほしかったので理由をつけてのらりくらりと断り続けていたが、王命で連れてこいとなったらさすがに逆らえない。


 しかし、あのむすめは、怒らせたら国を滅ぼしかねない超危険人物。

 初対面で機嫌を損ねて瞬時に焼かれた私がそう思うんだから間違いない。


 どういう口実で誘えば安全に扱えるかを考え抜いて、【聖女】という用語を勝手に作った。

 【聖属性魔法が使える珍しい女】を略しただけだが、なんか響きが良いし、あのむすめはこういうのが好きそうな気がした。

 これでスカウトしたら素直についてきた。


 スカウトして王宮に連れてきてしばらく放置状態になったが、これは王宮騎士団も王宮病院も【仕事は手伝ってほしいけど、近くに置きたくない】とかすごく勝手なことを言い出したからだ。

 連れて来いと自分達で言っておきながらお前らええかげんにせぇよと。


 しかし、扱いが決まらず放置された状態でも、あのむすめは王宮内で自分でやることを見つけていい仕事をした。

 長年の内勤でたるんでいた連中を文字通り叩き直してくれた。


 最終的にあのむすめの処遇は第一王子預かりとなり、【魔王討伐計画】にて【聖女(最終兵器)】として活用したのち【王妃】として王宮で囲い込むという扱いに落ち着いた。


 正直それってどうなんだと思ったが、惚れたのかどうなのか第一王子がそうしたいというので反対もできない。

 辺境育ちの少女をこちらの都合で連れてきたうえに、そんな扱いをすることに罪悪感が無かったわけではない。

 でも、第一王子の婚約者となり喜ぶ姿を見てまぁいいのかなとも思った。


 教育担当の宰相より、あのむすめは見た目ほど残念な脳筋娘ではないとは聞いたし、ある意味似た者同士の最強夫婦が国王と王妃になるならこの国も安泰かなと思った。


 その後、【魔王】最終決戦で発生したイレギュラーで全部狂ってしまった。


 エスタンシア帝国との戦争では、私は国境警備隊として東側の国境線の哨戒を行いつつ、少佐と協力して迎撃作戦の詳細を詰める仕事を担当した。


 第一王子似のあの大男とあのむすめが【出入国管理法違反】をしでかした時、あのむすめは何食わぬ顔でかつて私を黒焦げにしたテーブルに案内した。


 あの大男の手前取り調べでは厳しく注意はしたものの、威嚇されていたのは私の方だ。

 そして、その時提供してくれた情報はその後の作戦にとって非常に有益なものだった。

 あのむすめは放置していても本当にいい仕事をする。


 その後、自分の発案した【八咫烏特攻作戦】に自ら志願し三カ月ほどエスタンシア帝国にて捕虜として過ごした。

 扱いは悪くなかったが、あちらの国は食糧事情が悪くて毎日空腹。

 おかげで瘦せてしまった。


 外交交渉の結果、大量の穀物と引き換えに私は帰還を果たした。

 とにかく痩せすぎて体力も落ちてしまったので、【軍人】の仕事にすぐに復帰することはできず、一旦【退役】となった。【失業】だ。

 それでも【予備役】扱いとして籍を残しつつ、王宮内で外交関係部署の非常勤講師として細々と仕事をすることになった。


 【魔王討伐一周年記念祝賀会】で、元・第一王子の顔面修復とそれを見て逆上するあのむすめを見た時【この国オワタ】と思った。


 誰の発案だよ。

 誰の指示だよ。

 誰の許可だよ。

 ドクトルGもそれ危ないって分かるだろ、実行犯するなよ。


 あの大男を【替え玉】にして即位させるという計画は聞いていたけど、まさかアレをやるとは思わなかった。

 あのむすめを怒らせないように気を配ってきた私の苦労を見事に台無しにして、国家存亡の危機をわざわざ作り出してくれた。


 一日間の臨死体験から帰ってきた後、瓦礫がれきの山になっていた王宮跡地にて、第二王子と一緒にボロ毛布でぐるぐる巻きにされてキャスリン様にムチでシバかれてた国王の指示で、ドクトルGと共に【バー・ワリャーグ】に向かった。


 キャスリン様から許可が下りたので出発前にドクトルGと一緒に国王の顔面をボコボコにしてやった。


 【バー・ワリャーグ】にてレッドの到着を待った後、貸切馬車にて【魔王城】に出発。道中で食べ歩きを堪能しながら【魔王城】に到着。

 【配属面談】で吹っ飛ばされた後、【辛辣しんらつ長】から就業規定の説明を受けた。今までにない好条件だった。


 体力も戻ってきていたので、滑走路工事や西側台地の草刈りをしつつ、そのついでに魔王城北側の国境線を確認したりと程々に仕事をした。

 ブルーは【乗機】として割り当てられた【双発葉巻号】で飛んで行った。配属直後は城の設備担当のイエローが一番忙かった。


 私の次の仕事は、イエローと共に王宮にある金庫と【禁書庫】の中身を根こそぎ【魔王城】に運ぶこと。イエローの予定が空き次第トラクターで首都に出発の予定だ。


………………

…………

……


 そして今。

 【魔王城】入口広場で黒焦げにされた【魔王】様を五人がかりで医務室に運んでいる。

 大きいから倒れられてしまうと運ぶのが大変だ。あのむすめに【公開処刑】をされるなんて、一体何をして怒らせたのやら。


 焼かれた【魔王】様を見ながら、初対面であのむすめに焼かれたトラウマを思い出し思わず震える。

 あのむすめならすぐに治療はできるんだろうが、やられる方はたまったもんじゃない。


 もう何があってもあのむすめを怒らせないようにしよう。

 そして、【黒焦げ仲間】となった【魔王】様に、しっかりと仕えよう。


 私は臨死ブラック。

 黒目黒髪腹黒、そして黒焦げ【魔王】の部下の臨死ブラックだ。


 何を【護衛】すればいいのかは分からないが。

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