臨死戦隊★ゴエイジャー配属編 臨死イエローの仕事運(2.8k)
私は、元・ユグドラシル王国戦略陸軍の戦闘工兵隊隊長。そして今は【臨死戦隊★ゴエイジャー】所属の【臨死イエロー】。
本名はミハエル。でも今後は【臨死イエロー】で仕事しようと思う。
あの日、居住棟の崩壊に巻き込まれて生き埋めにされたところ、死ぬ前の最後の仕事のつもりで瓦礫の隙間から拳銃で狙ったら容赦なく追い討ち。
追加で崩れた瓦礫に圧迫されて三日ほど臨死。
【聖女】様との最初の出会いは、【魔物】討伐に随伴した時だった。
王宮騎士団に所属して【魔物】討伐任務に勤しんでいた頃。
日頃の熱心な仕事ぶりが認められて念願の小隊長に昇進し、新編成された王宮騎士団【西部第08小隊】の小隊長に就任。
新兵十八名を率いて【聖女】様の護衛として平野部の【魔物】討伐の初陣。
大型馬車で現場到着と同時に、手ぶらで単身迷いなく【魔物】の群れに向かっていく【聖女】様。慌てて追いかけた次の瞬間、目の前に広がる地獄絵図。
その光景を見てへたり込む新兵の胸倉掴んで【警戒心】を送って来るなと吊るし上げる【聖女】様。【無茶言うな!】とツッコミ入れたら殴り飛ばされ、気づいたのは最寄りの街の病院のベッド。
枕元には部下十八名の辞職願。私の小隊は初陣で壊滅した。
仕事ができた気がしなかった。
部隊壊滅の責任者として降格となり内勤に回され、しばらくは王宮図書館の司書として勤務。各方面から依頼された文献調査などの仕事をした。
エスタンシア帝国から大砲を供与された際、鍛冶屋の出身で機械を扱える腕を見込まれ、砲兵として【魔王討伐計画】に参加を命じられた。
久々の大きな仕事と張り切った。
だけど、この大砲が【魔物】相手にはさっぱり使えなかった。
前線基地が【魔物】に襲われた際、大砲の発射準備をしている間に【魔物】に接近されて私は重症を負った。他の騎士がなんとか撃退してくれたが、私は何の活躍もできずに戦力外。
装填状態で放置してしまった大砲は気がかりだったが、【魔王】討伐完了の報を受けて武装を全部捨てて撤収。最前線の街の病院に入院。
やっぱり仕事ができた気がしなかった
エスタンシア帝国軍との交戦においては、戦闘工兵隊隊長として前線基地と反斜面陣地を結ぶ高速輸送トロッコの設営に従事。
反斜面陣地側で試運転中に暴走したトロッコに撥ね飛ばされて、そのトロッコで運ばれ病院送り。開戦前にトロッコによる傷病者搬送の予行演習ができたと後から感謝された。
またしても仕事ができた気がしなかった。
三日間の臨死体験から帰ってきた後、王城区画の【墓標】の下で、顔面ボコボコの傷だらけで頭髪をチリ毛にされた国王の指示で【バー・ワリャーグ】に向かう。
そこで先に来ていた仲間達と合流し、レッド到着後に【魔王城】に移動。
【配属面談】で吹っ飛ばされた後、【辛辣長】から【就業規定】の説明を受けた。前職よりも高収入になったので、今度こそ仕事を頑張ろうと思った。
配属されてからの初仕事は忙しかった。
まずは【魔王城】を大人数で居住可能な状態にしないといけない。そのためには何よりも水回り。給水系統も大事だが、排水系統はもっと大事だ。
【魔王城】は斜面に建っている城で地下二階まである。
地下一階は掃除すればすぐに使える状態であったが、その下の地下二階は給水配管の水漏れと排水配管の詰まりにより天井近くまで水没していた。
でも、これは幸いだった。
【魔王城】の居住区画は長期間空き家状態だったようだが、給水配管の末端部で水漏れが続いていたおかけで、水回りの装置や配管の腐食が抑えられて使用可能な状態で残っていた。
とりあえず地下二階は後回しにして、水漏れの応急処置と排水周りを確認。生活排水は近くのヴァルハラ川に自然放流になっていたが、【浄化槽】の実用化以降は生活排水の自然放流は原則禁止となっているのでここにも【浄化槽】が必要だ。
そして、山のふもとに滑走路を作る工事の計画も任された。
大量の木の伐採が必要になるので、それを運び出すための道がまず欲しい。
もろもろの手配のため、【辛辣長】に概略予算の承認を頂いたのち、リーダーのレッドと共に配属翌日に最寄りの村まで出かけて各所に相談。
【浄化槽】は【西方環境開発株式会社】の支店に水配管を含めて工事を依頼。滑走路については、村に出入りしている林業の人達に声をかけて伐採工事支援を依頼した。王城の再建のために木材の需要が高まっていたので、製材所や林業者や輸送業者が喜んで協力してくれた。
私達も中古のトラクターとトレーラを購入できたので、いろいろな【買い出し】ができるようになった。最寄りの村まで徒歩だと一日かかるので、トラクターは何より欲しかった。
滑走路建設では道作りは人海戦術だったが、滑走路区画の伐採は【魔王妃】様が協力してくれたので助かった。
こちらで目印を付けた木の根に向かって【魔王城】の入口広場から例の光弾で狙撃。着弾の衝撃で根っこから掘り起こされて地面から浮き上がった木を、皆で大型トレーラまで運び、林の外に設営した仮設製材所で枝を落として村まで運ぶ。
いい木材が大量に確保できたと喜ばれた。
伐採と運搬の工賃清算をお願いした【辛辣長】によると、木材の売り上げで工賃の大半は相殺できたそうだ。
この辺は国有林なので、木を勝手に切ったり売ったり良かったのかは気になった。でも、そのへんは【辛辣長】の仕事と考えて気にしないことにした。
滑走路の整地は、土魔法を駆使した人海戦術だ。木を掘り起こした穴を埋めて平らにならして、土魔法で固める。それを繰り返し。広いから大変だったけど、仲間達と一緒にがんばった。
昨日あの滑走路に大型機が無事着陸していた時は嬉しかった。魔王城の機械室窓から見ていたが、ブルーの【乗機】として【魔王城】の備品になるそうなので一度乗ってみたい。
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現在、【魔王城】地下一階の私の仕事部屋として割り振られた部屋で【魔王妃】様に頼まれた箱型の【寝室】を作っている。
意外だったけど【魔王妃】様は機械とか工作とか好きらしい。あの背中合わせハーネスも【魔王妃】様設計とか。
そして、【魔王】様は【異世界人】とのことなので、異世界技術の知識を持っているとか。
時間ができたときにいろいろ教えてもらいたい。
何かと仕事運の無かった私だけど、ここではいい仕事ができそうな気がする。
まぁ、何を【護衛】するのかは、仕事していればそのうち分かるのだろう。




