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臨死戦隊★ゴエイジャー配属編 臨死レッドの思い出(2.7k)

 私は元・ユグドラシル王国戦略陸軍少佐。今は【臨死戦隊★ゴエイジャー】の【臨死レッド】だ。本名はブラッドフォードというが、今後はもう【臨死レッド】でいいやと思っている。

 【臨死レッド】の呼び名の通りシンボルカラーは赤であるが、【魔王妃】様の赤が薄赤色に対して、私の赤はちょっと濃いめの赤だ。その違いにはこだわりたい。


 王宮が【元・聖女(最終兵器)】の襲撃を受けたあの日。王宮防衛隊本部より背後からの狙撃を試みた。

 私はかつて彼女に何度も命を救われた。だが私は【軍人】。国を守るのが仕事。私情を捨て外道に徹するのも役割だ。

 討ち取ったあかつきには自分もその銃で後を追い、黄泉の国で彼女に詫びる覚悟で銃口を向けた。


 結果、建屋ごと粉砕されて四日ほど臨死。


 見つかるはずがない背後遠距離の狭間はざまからの狙撃そげきを察知された上に、王宮防衛隊本部建屋に仕込んであった最強の装甲板【ヨセフシールド3】を謎の光弾こうだん一撃で粉砕された瞬間。【なんかもう無理】と思ってどうでもよくなったのはいい思い出だ。


 【魔王討伐計画】当時、私は王宮騎士団の団長だった。

 今の彼女が覚えているかどうかは分からないが、彼女が【聖女(最終兵器)】だった頃、いや、その前から彼女とは何かと関わる事が多かった。


 【聖女】という謎の肩書でスカウトされて王宮に来た彼女につい【でかい】と言ってしまい、その場で火魔法で黒焦げにされて病院で目覚めたのもいい思い出だ。

 【魔王討伐計画】の全体像が発表された会議で、逆上した彼女を取り押さえようとして殴り飛ばされ、病院で目覚めたのもいい思い出だ。


 新兵中心で編成された或る小隊が集団離職で壊滅する事件が発生。再発防止策に悩んだ結果、第一王子からの助言に従い新兵の訓練に彼女を動員。

 すると彼女は【鋼の剣は簡単に折れる】と無茶苦茶を教えだすので【デタラメ言うな】と思わずツッコミ。

 実演するというのでかまえたら拳だけで剣を折り盾を砕き鎧を貫き病院送り。魔法が無くても強すぎる。

 第一王子程ではないが【規格外】を痛感したのはいい思い出だ。

 結局、彼女による猛訓練で新兵達は【猛者もさ】と【離職者りしょくしゃ】の真っ二つに分かれて、人数は半分になったが戦力は三倍になったのはいい思い出だ。


 【魔王討伐計画】が進行して前線が平野部から山林地帯に進むと、見通しの悪い林の中で我々騎士団は苦戦した。

 負傷者や殉職者の増加に危険を感じて計画の見直しを第一王子に具申ぐしんしたら、緘口令かんこうれいを敷いたうえで彼女をおとりとした集団戦術を導入して計画を強行。

 効果は覿面てきめんだったが、毎回ズタボロにされる彼女を見て騎士道精神が痛んだのはしょっぱい思い出だ。


 【魔王】との決戦時には彼女達が乗る馬車の御者ぎょしゃをしていた。

 その帰路で、彼女が第一王子の亡骸に禁術の死者蘇生法を行使するのを止めようとして殴り飛ばされ、気が付いたら手遅れだったのは苦い思い出だ。

 あの時、崖下で生き残った彼女だけでも連れ帰ろうとして燃やされかけて、逃げることしかできなかったのは後悔していたが、後から生きていると聞いて安心したのはいい思い出だ。

 

 エスタンシア帝国からの【宣戦布告】への対応として組織変更を行った時、私は【ユグドラシル王国戦略陸軍】の少佐に任命された。

 迎撃作戦の打ち合わせのために首都のヘンリー邸に行ったら、第一王子によく似た大男と会ったが、アレが第一王子ではないことはすぐに分かったのもいい思い出だ。

 【異世界人】らしいが、そんなことは全く気にならなかった。両脚を失った彼女があの大男の背中に張り付いて幸せそうに寝ているのを見たとき、苦労が多かった分余生をおだやかに送ってほしいと密かに願ったのはいい思い出だ。


 【魔王討伐一周年記念祝賀会】で、彼女があの大男を背負って飛び去ったのを見て、大変なことになるぞ思ったのもいい思い出……。


 実際、大変なことになってしまった。


 臨死体験から帰ってきて病院で目覚めた時には、首都中心部の王城区画内は病院等の一部施設を除いて瓦礫がれきになっていた。

 テントで作られた仮設王城執務室にて顔面ボコボコになった国王から指示を受け、城下町にある指定の場所【バー・ワリャーグ】に行った。


 そこでは、【聖女】の侍女だったアンと、キャスリン様の侍女だったメイがウェイトレスをしていた。そこのマスターの指示で、先に到着して私を待っていたメンバーとアンとメイを含めた私達八人は貸し切りの馬車に乗り【魔王城】に出発。

 王国西側都市で各地名産品を食べ歩きしながらの六日間の長旅を経て、【魔王城】に到着。


 【配属面談】で吹っ飛ばされた後、【辛辣しんらつ長】より、就業規定の説明を受けた。勤務場所は【魔王城】と辺鄙へんぴなところだが、労働条件は悪くない。


 私は既婚であるため、【単身赴任手当】が付く。

 【魔王城】勤務の日は【危険手当】が付くので、実質毎日【危険手当】が付く。

 手当込みだとユグドラシル王国戦略陸軍の時より手取りは増えた。


 住み込みの仕事なので【残業代】は無いかと思っていたが、勤務時間は朝食から夕食までが基本で、その時間外に必要な業務が発生した場合は【残業代】が出るそうだ。

 基本的に【週休二日制】で休みの日は外出も自由だが、その日【魔王城】で食事を摂るかどうかはアンかメイにちゃんと連絡するようにとのことだった。

 【有給休暇】は年間二十日もあるそうだ。シフト調整して業務に穴が開かないようにすれば、わりと自由に使えるとか。


 そして、勤務中にうっかり【魔王妃】様の逆鱗げきりんに触れて殺されかけた時には、結構高額な【被滅殺特別手当ひめっさつとくべつてあて】が支給されるそうだが、これは勘弁してほしい。


 臨死体験はもうこりごりだ。


 【臨死戦隊★ゴエイジャー】のリーダー【臨死レッド】として私に与えられた仕事は、魔王城の維持管理と、他メンバーの任務の補助。メンバーの誰かが【有給休暇】を取るための予備人員でもあるそうな。


 分かりやすく言えば【補欠】兼【雑用係】。


 まぁ、平時におけるリーダーの仕事というのはこんなものだ。


 一番最初に私の仕事内容は決まった。

 他メンバーの仕事内容も逐次ちくじ決まっていくとか。


 だが、一体何を【護衛】するのかは不明だ。

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