4-4 歴史から消えた勇者(0.7k)
【副魔王】のウラジィさんの支援で首都脱出に成功してから四日目の夕方。
ウラジィさんはうまくやってくれたようで、今のところ追っ手は無い。
首都とヨセフタウンを繋ぐ【中央道】沿いに歩いて北上。
途中のドライブイン的な宿場町で宿を取りながらひたすら歩く。
一人での宿泊も買い物も慣れたものだ。字が読めなくても問題ない。
そして、ビッグマッチョの一人旅なので、珍道中の時よりペースが速い。
この調子ならあと三日ぐらいでヨセフタウンに到着できそうだ。
そこに本当にジェット嬢が居るかどうかは分からない。
だが、珍道中の途中で度々見た、北東側の空に輝くオーロラのようなもの。
あれは、俺を呼んでいるような気がしたのだ。
今の目的地は、そのオーロラの下。方角的にはヨセフタウンに合致している。
俺は人生経験豊富な40代オッサン。会って何をするかは決めている。
ジェット嬢を縛る【呪い】をどうにかしてやるのだ。
・魔王歴83年 5月27日
魔王討伐完了以降【行方不明】扱いとなっていた、【勇者】ユグドラシル王国第一王子ユーリ・ジル・ユグドラシルの【死亡】が王宮より正式に発表された。
しかし、その発表を気に留める人は多くなかった。
これにより、王位継承権はイェーガ第二王子に移った。
その際、国王が懸念していた【王位継承権問題】は発生しなかった。
開戦前の短期間で国内全体の陸上輸送インフラ整備事業をやり遂げたイェーガ王子と、空と陸から最前線を支え続けたキャスリンは、次期国王と王妃にふさわしい人物として各地領主及びユグドラシル王国国民に広く認められていたのだった。
こうして、【魔王】から世界を救った【勇者】は歴史の表舞台からひっそりと消えた。
●次号予告(笑)●
長い旅路の末、男は泣かせた女と再会を果たす。
男は女を縛る呪いを【荒療治】で払い、都市全体を恐怖に陥れる。
『ふぁいとー・めっさーつ!』
春の夜空に禁断の掛け声が響き、大災害と共にそれは降臨した。
次号:クレイジーエンジニアと真・金色の滅殺破壊魔神




