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2-3 魔王城での物騒な遊び(2.2k)

 俺が【魔王城】に到着して部屋を割り当てられた翌日。

 ウラジィさんの案内で【魔王城】とその周辺を一通り見た。


 城の周辺を見た。

 水は裏のため池から引いていて、簡易的な浄水器もあるそうなので飲用水も確保できているそうな。また、城自体が崖っぷちに作られているので排水の水はけも良い。

 水源としては城の裏側に井戸もあったが、ため池があるのでそっちは使っていないとのこと。


 城の内部も見た。

 昨日寝た部屋が【謁見の間】の下のフロアにあたる一階。その下につながる階段もあったが、その先はウラジィさんも未確認とか。

 年齢的に階段で転んでしまうと後が大変なので、手すりの無い暗い階段を下りるのは避けたそうだ。

 俺も今回はパスした。


 その一階フロアには、広い食堂や調理場もあった。

 かつて、多くの人がここで生活していたようだ。テーブルや椅子等の機材も古くて汚れてはいるが手入れをすれば使えそうだ。

 一階フロア入口付近の廊下に放置してあったパイプや金具は、手すりを作ろうとしてウラジィさんが集めた建材らしい。

 薄暗い廊下に置いてあるとむしろそれで転びそうなので、俺がエントランスに運び出した。


………………

…………

……


 案内を終えた後、ウラジィさんは二階の玉座で日光浴。

 できる範囲の片付けを終えて俺は手持無沙汰になったので、部屋にあった掃除道具を持ち出してエントランスの掃除をしている。


 壁のほこりを払うついでに、エントランスに飾ってある絵を時計回りに順番に見ていく。

 ジェット嬢が気になっていたのはどれだろうか。


 船の絵がある。帆船だな。

 そういえば、この世界で船は見たことないな。でもボートはあったから、船もどこかにあるんだろう。


 次も船の絵だ。

 外輪がある初歩的な蒸気船だな。

 あれ? この世界では蒸気機関は発明されてなかったような。エスタンシア帝国にはあるのかな。


 また次も船の絵だ。

 でも、今度は外輪が無い代わりに、煙突がある。なんか、俺の前世世界の船のようだ。ディーゼルエンジンかな。エスタンシア帝国の技術はどこまで進んでるんだろう。


 その次は、飛行機の絵だな。

 両翼下にジェットエンジンを搭載した初期のジェット戦闘機。


 おかしいだろ!


 玉座で日光浴するウラジィさんのところに走る。


「ウラジィさん! 【絵】がおかしいんです!」

「何がおかしい。言ってみろ若造」


「この世界に無いはずの、ジェット戦闘機の絵があるんだ」

「やはりアレはこの世界には無いのか」


 そうか。ウラジィさんは来てからほとんどここに居たから、この世界にある物と無い物の区別がつかないのか。


「まぁ、そんなことだろうとは思ってた。アレはわし達の前世世界の物だ。ちなみに描いたのはわしじゃない。最初からここにあった」

「これは一体。どういうことだ?」


わしに聞くな。若造のほうがこの世界長いんだろ」

「それもそうか」


「分かるだろ。わし達より前にも【転生者】が居たということだ」

「なるほど。それはぜひ会ってみたいな」


「生きていればな」

「そうか。亡くなっている可能性もあるのか」


わしもそれを見てここで一カ月いろいろ考えてはいた。推測聞くか?」

「聞かせてくれ」


「ここに居たという先代の【魔王】が【転生者】だと考えておる」


 もしかしてこのファンタスティック世界は【転生者】が【魔王】になるルールなのか?

 俺がこの世界に降臨したのは【魔王】討伐に成功した直後だったはず。

 そして、降臨した場所もこの【魔王城】の近くだ。


 だとしたら、俺がこの異世界に来たのは……。


「そうか、だから俺が【魔王】なのか」

「何を納得しとるんだ。何か分かったならわしにも教えてくれ」


 この後、ウラジィさんとお互いの知っていることの情報交換を行った。

 【魔王】討伐と、俺の降臨した時期、この世界における【魔王】に関する一般常識。

 この世界の地理感。あと、ユグドラシル王国とエスタンシア帝国の戦争の話。

 そして、魔法の話。


 意外にもウラジィさんは魔法の話に食いついた。


「その魔法というやつ面白いな。わしにも使えたりしないかな」

「いや、無理なんじゃないかな」


「若造。最初から無理と思ったら無理だろ。できない理由は無いだろうよ」

「そういえば、今まで魔法は使えないと思ってたけど、使えないと思ってた理由に根拠は無いな」


 ウラジィさんは玉座から立ち上がって、それっぽい構えをして叫ぶ。


「タルナード!」


 何にも出ない。

 でも、俺もやってみたくなったのでファンタジーぽい呪文で真似してみる。


「ファイヤボール!」

「クラスノポール!」


「アイスランス!」

「キンジャール!」


「エリアヒール!」

「シクヴァル!」


 転生者の40代オッサンと、70代の爺さんが【魔王城】の玉座近くでふざけて魔法ごっこ。端から見るとシュールな光景だと思うが、誰も見てないしそれなりに楽しい。


「メテオフォール!」

「ツァーリ・ボンバ!」


「ウラジィさん。それ本当にできたらヤバイやつでしょ」

「若造こそ」


「ちなみに、ウラジィさん。魔法が使えるならやってみたいことあるのか」

「若返りたい。若造みたいに」


「じゃぁせめて、それが出来そうなやつ試そうぜ。さっき試したの全部物騒なやつじゃないか」

「それもそうだな」


 とりあえず、俺達は魔法が使えないことは分かった。

 この世界の魔法理論を一新した【フロギストン理論】の提唱者である俺が、その魔法を使えない。

 まぁ、魔法なだけに理論じゃないんだろうね。こういうのは。

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