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2-2 転生仲間と語り合った夜(1.6k)

 剣と魔法の世界にある【魔王城】の一室にて。

 【魔王】と【副魔王】にされた若者と爺さんがちゃぶ台で対面で夕食。


 シュールすぎるだろ。


 でも、干し肉は旨かった。

 一通り食べたところで、ウラジィさんが話しかけてきた。


「若造。わしは一カ月前にここに来た。お前の言った通り同郷だ。知ってるかもしれんが、わしは70代のジジイだ」

「一カ月も一人でここに居たのか? ほかに誰か居ないのか?」


「ああ、わしだけだ。気づいたらあの玉座に居て、【案内役】にいくつか指示を受けた後、一人で放置された。この城にはわししかいない」

「それは大変だったな」


 俺は転生直後にジェット嬢に出会うことが出来たから、何不自由なく生活はできたけど、異世界転生後に放置とかされたら正直たまらない。


「まぁ、この城を自由に使っていいと言われたから何とかなったがな」

「食料とかどうしてたんだよ」


「若造。前世のわしを知ってるんだろ。わしサバイバル得意よ」


 確か、諜報員の経験があるんだっけ。

 ウラジィさんは楽しそうだ。


「でも実は、サバイバル的なことはしてない。城にたくさん金貨あった。一日ぐらい歩いたところに小さい村あるから、そこに買い物行った」


 去年の時点ではそんなの無かったと思うけど、魔王討伐完了後のヴァルハラ平野の開拓でできたんだろうか。


「若造。そういえば名前を聞いてなかったな」


 そういえばそうだ。

 でも俺は名乗る名前が無い。

 この御方相手にデタラメするのはちょっと怖いので正直に話そう。


「俺は40代のオッサン。だけど、転生した時に前世の名前を忘れた」

「そうか、それはわしと同じだな」


「えっ? でもウラジィさんさっき名乗ろうとしてたよな」

「前世の名前忘れたけど、名乗りたかった名前はあったんだ」


「ちなみに、俺が何も言わなかったら何て名乗るつもりだったんだ?」


「レーニン」


「それはいろんな意味でやめといたほうがよかったんじゃないかな」

「そうだな。それに【魔王】様に名前を貰ったことだし、ここではウラジィで生きるよ。よくわからんが、前世の名前に近い気がしてなんかしっくりくる」


 まぁ、一部使ってるからな。


「それよりも若造。お前のその身体と顔。どう見ても日本人の40代には見えん。どちらかというとわしの地元の若者の風貌だ」

「俺にもよくわかってないが、この身体は前世の俺とは別人の身体だ。この世界でこの歳まで生きた誰かのものと考えているが、それが誰なのかまでは俺は知らない」


「いいなぁ。わしも転生するなら若返りたかったよ。その顔なかなかのイケメンじゃないか」


 そう言って、ウラジィさんはちゃぶ台下から卓上鏡を出して俺に向けた。

 俺は、それに映る自分の顔を見て思わず叫ぶ。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!」


 俺の顔が変わっていた。

 髪型はボウズだが、鼻が高くなり、顎と目元が細くなり、洋風のイケメンになっていた。

 転生初日にジェット嬢にしこたま殴られてボコボコにされた部分が復元されたような感じ。

 そして、この顔はこの世界で見た誰かに似ているような気がする。

 誰だっけ。


「どうしたよ。その顔で一年過ごしたんじゃないのか?」

「あー。コレはもしかして、【魔王討伐一周年記念祝賀会】であの男にされたアレが原因かな。アレは【回復魔法】だったのか?」


 ウラジィさんは狼狽ろうばいする俺を見てため息をついて一言。


「よくわからんが、若造もいろいろあったんだな」


「今日はもう遅い。そろそろ寝るぞ。ランプの燃料は限りがあるから夜更かしは禁物だ。この部屋は若造が使え。わしは隣の部屋で寝る」


 それだけ言って、ウラジィさんはもう一個のランプを持って部屋から出て行った。


 ランプの燃料は限りがある。確かにそうだ。

 ジェット嬢が居る時は、火魔法応用の照明器具が使い放題だったが、ジェット嬢に捨てられた今、何をするにも制限がある。


 座敷の隅にちょうどいい毛布があった。

 俺は、ランプを消して座敷で寝た。寒かった。

 でも、暖房は無い。

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