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1-3 第三帝国を名乗った魔王、魔王城へ飛ぶ2人(1.8k)

 仕立てたスーツを着た大男の俺が、スカートを膝丈ひざたけに切り詰めた薄赤色のドレス姿のジェット嬢に背負われて飛ぶ。

 

 通称【カッコ悪い飛び方】。


 この飛び方をあまり人に見られたくないのは二人の共通認識なので、高高度に上昇して早々に首都上空を脱出。

 でもあまり高高度に上がると寒いので、城壁都市上空を抜けたら低高度飛行に切り替えて引き続き【カッコ悪い飛び方】。


 ちなみに飛行原理はジェット嬢の両脚である【魔力推進脚】。

 大腿切断したジェット嬢の両脚にノズルを埋め込み、風魔法の応用でその中で圧縮空気を連続的に生成して噴射することで推力を得る。無限燃料の魔力ロケットエンジンだ。


 針路は北向き。

 ジェット嬢がどこに向かっているのかは分からないが、俺もこの状況でどこに行けばいいのか分からない。

 王宮に置き去りの荷物の回収はしたいが、あんな感じで逃走したので、戻りづらい。

 あの祝賀会で何が気に入らなかったのか分からないが、ジェット嬢は飛びながら黙っている。

 こういうときにあんまり話しかけるものではないと思うが、気になることが出てきたので注意深く聞いてみる。


「王宮の常識を教えてくれ。会場で乱闘するのがテーブルマナーなのか?」

「そんなわけないでしょ」


 そりゃそうだ。じゃぁあの乱闘は一体何なんだ。

 キャスリンの衝動的暴挙か?


「キャスリンはいつもあんな感じなのか?」

「いつもではないし、あそこまで派手なのは初めてよ」


 引っかかる回答だが、乱闘パーティが王宮の日常ではないということは何となくわかった。

 じゃぁ、何が悪かったのか。

 【魔王討伐一周年記念祝賀会】だからだろうか。

 そこで別の事が気になったので、ジェット嬢に聞いてみることにした。


「この世界の常識として教えてくれ。【魔王】って一体何なんだ」

「【魔王】は【魔王】よ。この世界の常識では、【魔物】を作り出して世界を苦しめ続けた諸悪の根源って言われているわ」


「この世界の常識として、【魔王】はいつから居たんだ? 千年前とかか? 【世代交代】とかしてるのか?」

「異世界人なだけあって面白いこと考えるわね。【魔王】が【世代交代】とか考えたこと無かったわ。【魔王】が出現したのは今から八十三年前。だから今年は【魔王歴83年】よ」


「【魔王】の出た年を基準にこよみを数えていたのか。わりと【魔王】は新しいんだな。それ以前のこの世界の歴史やこよみはどうだったんだ?」

「一度調べようとしたことはあるんだけど、記録が残ってないみたい」


 俺の前世世界では二千年以上前の本が残っていたりもするが、この世界では八十三年前より前の歴史資料が無いのか。

 異世界人の俺が口出しできる話じゃないが、過去の歴史はもうちょっと大事にしたほうが良いようにも思う。

 まぁ、それはいいや。


「この世界の一般常識からして、【魔王】って喋れるのか? 【魔物】をばらまいた目的とかあるのか?」

「この世界の一般常識として、喋ってたわよ。【魔物】の力で【第三帝国】として世界征服するとか言ってたわ」


 言ってたとか、会ったことあるのかよ。喋ったことあるのかよ。

 でもなんかそのへんは【滅殺案件】がからみそうだ。

 それよりも、すごく気になる単語が出てきた。


「この世界の一般常識として、【第三帝国】って【魔王】が言ってたのか?」

「そうよ。センス無いわよね。ユグドラシル王国とエスタンシア帝国の二国しかないからって、【第三帝国】を名乗るって」


 【第三帝国】という謎の国名。

 【魔王】について、さらに気になることができてしまった。


 現在、【カッコ悪い飛び方】で北上中。

 俺の地理感が合っていれば、ここからさらに北上すれば【魔王城】だ。


「このまま【魔王城】に行くことってできないか?」

「できなくはないけど、あの場所はあんまり行きたくないわね」


 【滅殺案件】が大きく絡みそうな場所だからな。


「でも、帰り道といえば帰り道だし、誰もいないはずだし、【絵】をこっそり貰いに行くのはいいかもしれない」

「【絵】って何だ。【魔王城】に【絵】が飾ってあったのか?」


「そうよ。エントランスにいくつか飾ってあって、そのうちの一つがちょっと気になってはいたのよ」

「それは丁度いい。誰も居なかったら頂いてしまおう。俺も用事はすぐ済ませるから、【魔王城】行ってみるか」


「了解」


 こうして、俺達は針路を北北西に向けて、【魔王城】を目指した。


 そこで俺は、取り返しのつかない失敗をすることになる。

●次号予告(笑)●


 前世でも、転生後でも、さんざん言葉遣いの大切さと、【失言】の危険性を学んでいたにも関わらず。

 男はやらかした。

 案内役は消え失せ、相方に捨てられ、帰る手段も無い。

 ならば、案内役の最後の言葉に従い、【魔王城】の謁見の間に続く階段を昇るしかない。


 そこで見た【副魔王】。


 前世世界でガチで【魔王】と呼ばれていたあの御方がそこに居た。

 この爺さんに名乗らせてはいけない。

 【魔王】と呼ばれた男は咄嗟とっさに知恵を絞り、【副魔王】に名を与える。


次号:クレイジーエンジニアと副魔王

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