21-2 兵站戦、軍需物資空輸任務(1.4k)
【出入国管理法違反】で【逮捕】され腹黒男から取り調べを受けた二日後。
俺達二人は【ジェット☆ブースター】となり、有翼貨物コンテナ【八咫烏】を引いて東海岸線上空を北上していた。
海岸線上空から内陸側を見ると南から北へ延々と道路が続いており、そこをトレーラーを引いたトラクターの車列が走っている。
開戦準備開始から約一カ月。
【国家総動員兵站計画】の中で進めていた陸上輸送路整備計画により、南部の鉱山地区とヨセフタウンを海岸線沿いに繋ぐ【国道1号線】と、首都とヨセフタウンを内陸部で繋ぐ【国道2号線】が開通していた。
どちらもトラクター専用道路。
俺の前世世界で言うところの高速道路だ。
幹線道路の開通と【西方運搬機械株式会社】が戦時量産体制で大量生産した輸送用トラクターにより、陸上での貨物輸送力は格段に向上。
戦略物資の輸送は陸上輸送が主力となっていた。
砲弾等の【爆発物】の輸送についても、梱包技術の改良や小分けにした輸送計画、被害対策班込みの輸送車列編成等の工夫で安全な陸上輸送が可能となり、各地の工場で完成したものから次々とサロンフランクフルト裏山の弾薬庫に納品されていた。
その結果、開発が遅延したうえに運用に制約の多い【八咫烏】は輸送機としての出番は無くなってしまい、今回の【八咫烏】は最初で最後の輸送任務。そしてその積み荷は穀物。
「あの第二王子がここまでの大事業をやり遂げるとは思わなかったわ」
背後のジェット嬢がロケットエンジン係をしながらつぶやく。
「確かに。謁見以来姿を見てないけど、王宮で頑張ってたんだな」
第二王子夫妻。
何かと残念な二人と思っていたけど本気出したらすごいコンビなのかもしれない。
彼等が王位を継承したらそれはそれで国は豊かになりそうな気がした。
でも、この状況下でも姿が見えない第一王子が何処に居るのかは気になる。
【八咫烏】本体側に搭乗するのは、【ユグドラシル王国戦略空軍】のロバート少尉以下三名。
本体側の動翼操作が主任務であるが、離着陸時以外は機体傾斜の制御以外はあんまりすることが無い。
この世界では無線通信技術が無いので【ジェット☆ブースター】と【八咫烏】間の意思疎通は手旗信号で行う。
通常飛行では問題ないが、積み荷で異常が起きた場合などの対応に問題があるというところも【八咫烏】による【爆発物】の輸送が中止された理由だ。
俺は飛びながらも前世での開発職の仕事を思い出していた。
開発開始後の状況変化や開発の遅延により、思うような結果が出せなかった開発案件も少なからずあった。技術的には成功していても企画的には失敗という結末もモノづくりにはあり得るのだ。
それはこちらの世界でも同じこと。
【ジェット☆ブースター】と【八咫烏】は、そんな開発の一つとしてこの世界の技術史に残るのだろう。
この任務が終わったら【ジェット☆ブースター】と【八咫烏】はしばらくお蔵入り。
ジェット嬢は【ジェット☆ブースター】で遊びたいと言ったが、軍の管轄の機材なので無断使用は許可できないとあの腹黒男に釘を刺されてしょんぼりしていた。
ついでに【ウィルバーウイング】も没収されたので、しばらく遊覧飛行もお預け。
でも、実質スパイ容疑がかかっていると考えればやむなし。
ちなみに、【国道1号線】の愛称は【東海道】。【国道2号線】は【中央道】だそうだ。
前世日本人だった俺にとっては懐かしい響き。




