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【このラノ3位!】魔術漁りは選び取る  作者: らむなべ
第十一部後編 失われたアリア

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305.エピローグ -とある貴族の名前-

「グ、グ、グリアーレさん! 聞きました!?」


 シャーメリアン商業連合国のとある酒場。

 カレジャス傭兵団の魔剣士見習いロアが扉を蹴り壊す勢いで飛び込んでくる。


「どうしたロア」

「今さっき商人の人達から聞いたんです!!」

「じょ、嬢ちゃん……扉はもうちょい優しく……」


 バタン!! と大きな音が響く。

 店主の声はどうやら聞こえていないらしい。


「ロア……一応ウヴァルさんやその他大勢もいるんだぞ」


 酒場ではカレジャス傭兵団の面々が昼から酒を(あお)っている。

 テーブルには樽ジョッキが似合わないグリアーレと樽ジョッキが似合うウヴァルが座っており、他のテーブルにもウヴァル曰くその他大勢の傭兵団の面々が豪快に酒を飲んでいた。


「お頭もその他大勢で俺達をくくってんじゃねえか!!」

「そんなんだから人望がねえんだよボケ」

「ああん? 喧嘩売ってんのかその他大勢?」

「知らねえのかお頭。喧嘩ってのは匿名でも売り買いできるんだぜ?」

「上等だごらあ!!」


 全員が樽ジョッキをテーブルに叩きつけるように置いて、殴りかかろうとする。

酒場の店主が乱闘騒ぎを覚悟したその瞬間――。


「全員黙れ。ロアの話が聞けん」

「はい」

「うす」

「すんません」


 グリアーレの一言で喧嘩は未遂で終わり、傭兵達は大人しく席に戻る。

 どうやら売っていた喧嘩は不良品だったらしい。

 全員を黙らせると、グリアーレはロアに優し気な声色で向き直る。


「話の腰を折ってすまないなロア。話してくれ。それとも私だけが聞いたほうがいいか? それなら席を外そう」

「ち、違うんです! みんなに聞いてほしくて!」

「あん? 何だ? まーたばばあの暗殺未遂か?」

「そうじゃないです! さっきスターレイ王国に行っていた商人さんと話してたんですけど……新しく領地を貰った貴族のとこに行ったらしいんです! それでその名前が!!」


 ロアがその貴族の名前を言うと傭兵団の面々は最初押し黙った。

 だが次の瞬間にはもう破顔していて、


「ぶひゃはははは! ひゃははははは!!!」

「ははははは!!」

「ぎゃはははは!!」

「馬鹿だ!! あいつ馬鹿だ!! うはははは!!」


 笑い声でこの場を壊す勢いで酒場は大笑いに包まれた。

 ウヴァルはもちろんグリアーレさえ腹を抱えて笑っている。

 意味がわかっていないのは酒場の店主だけだった。客が陽気なのは酒場ならよくある事で別段気にする事ではない。喧嘩騒ぎでないなら何よりだ。

 なにせあんなに楽しそうに、目尻に涙を溜めながら笑っているのだから。


「隠す気あんのかよあのガキ! 勉強してんじゃねえのかよ! くっそ頭悪いまんまだぞ!」

「これセーフなんか!? ひゃははは! 魔術契約違反であいつの首ぽーんって飛んだりしねえか!?」

「ぎゃははは! こんなん酒なくても酔えるだろ!」

「あいつ最高だなまじで!!」


 ロアが商人から聞いてきた話は詳しい事情こそなかった。

 その商人は……スターレイ王国の王都で起きた魔術暴走事件の際に、王都で商いをしていたらしい。


「はー……久しぶりにこんなに笑ったな……感謝するぞロア」

「もう……あの子ってば……」

「そう言うなロア。あいつが私達を今でも大切に思ってくれているという事だろう」


 王城が倒壊するほどの暴走事件……それは魔術大国であるスターレイならでは。

 そして、今回の事件を解決して見事暴走を収めた貴族は公爵領の隣に領地を貰ったのだという。


「それはそうですけどグリアーレさん……いくらなんでも馬鹿すぎますよ……」

「それは間違いないな」

「ど、どうします?」

「堂々としていればいいんだ。別に私達があれこれ言うことではない」


 少年はまだ成人前だったが、魔術の才能が認められて今回陞爵(しょうやく)

 元々、魔術機関アプレンティスに所属していたのだという。

 スターレイ王国の上級貴族に仲間入りしたその貴族の名は——。



「俺との約束通り……お前、まじででっけえ男になっちまうんだなあ……」



 カナタ・カレジャス伯爵。

 十五歳になる前に上級貴族入りを果たした才気溢れる若き魔術師。


「今日は全部俺の奢りだああ!! 店にある酒全部もってこおい!!」

「ひょっほーい!! さっすが我等が団長!!」

「仕方ない。今日は私も付き合うか」

「オレンジジュース! オレンジジュース樽でください!!」

「お、ロアも飲むか!」

「魔剣士見習いロア! オレンジジュース一気飲みします!!」

「いけいけぇ!」


 その家名には、傭兵団(おんじんたち)の名を。

 かつてここにいた少年はどんな立場になっても彼等の事を忘れない。

 酒臭くて、乱暴で、ちょっと優しくて温かいこの場所を。決して。

いつも読んでくれてありがとうございます。

第十一部後編「失われたアリア」及び王都編完結となります。

第十二部からは新章になりますが、ちょっとテイストが違います。かっこいい詠唱(かっこいいよね…?)もかっこいい戦闘シーン(かっこいいって思ってくれてるよね…?)もでてきません。小休憩の番外だと思ってください。

十三部「無尽侵攻国家トラウリヒ」からまたお話が動き出す感じです。更新頻度も流石に十一部後編のように週六とはならないのでご容赦ください。

書籍のほうも好評発売中です!皆さん買ってくれましたか……買ってくれたら続きます……これだけは間違いないんです……よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
いつまでも傭兵団との縁が続くカナタらしい仮名。 ほんわかしますねぇ。 公爵あたりはどんな反応をしたんだろ?
そうなりますよねえ、家名って家族の名前ですもんねえ…!
次次章が何か不穏なんだが
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