肝心なときにいないのかよ
年下上司の指示の下、図書館の棚卸し、データ整理を行う。
プラス職員の出欠と、給与計算などの事務処理が本日のわたしの仕事だ。
本日は閉館日。
図書館のフロントには棚卸しや本の補修を手伝うボランティアが集まっている。
皆保育園の先生がしているようなかわいいエプロンをした女性たちだ。
Oさんという男性の書類に月をまたいでの何かがあって処理に迷ったので、相談にあげた。
華奢でぱっつりと揃えた前髪のストレートロングヘアで相当に幼く見える年下上司は、大声で集団の中からOさんを呼びつけ、みなの前でボロカスに罵る。
それがあまりに長く激しいため見ていられなくなったわたしは、近くにいた柔らかなウェーブした色素の薄い髪の中年女性に「どうしたら(上司が?)優しくなれますか」と尋ねた。
「撫でてあげればいいんだよ」と彼女はメガネの奥に微笑みを浮かべている。
わたしは上司を撫でればいいのかな、それはとても勇気がいることだ……と思う。
いよいよ時間が来て、集まってくれたボランティアに指示を出さなくてはならない。
しかし上司はこの肝心な時に不在だ。
Oさんを連れて退席したきり戻ってこないのである。
ボランティアを除くと残っている職員は、今回作業を初めて体験するわたしだけであった。
20191206




