洗濯機の底に張り付いた水飴
私は園の先生になり赴任したばかりだ。
担当のクラスカラーはピンクで、上履きも雑巾もピンク。
洗濯ネットも洗濯バサミもみんなピンク色だ。
金曜日は、布巾を洗濯ネットに入れて当番の子供に持たせて帰すよう聞いていたのに、忘れてしまった。
忘れたのでこちらで洗濯しなければと思う。
すらりとした長身の主任も、洗濯機で自分のクラスのものを洗っている。
主任のクラスカラーは緑。何もかも緑色だ。
さっさと洗濯を済ませて帰ろう、と青い蓋の洗濯機を開けて布巾を放り込もうとする。
しかし洗濯機の中には、既に子供のパンツと靴下が二組入っていた。
洗ったものか洗う前か、いつからそこにあるのかもわからない。
どちらにしろこのままというわけにはいかない。
これは何かと主任に尋ねると、保健室のものではないかとのこと。
主任はいいから一緒に洗ってしまえと言い残して行ってしまう。
布巾と誰のかも知らないパンツを一緒に洗うのか……と思うが従うことにする。
布巾をネットに入れず一枚ひらひらと放り込んだ瞬間、洗濯機の底に大人用スリッパが二組入っていることがわかってハッとする。
しかも底には何か透明な水飴状のものが溜まっている。
いつのまにか洗濯機の底は床に空いた大きな穴だ。
ほとんど洞穴。
底は人一人分より遥かに深い。
再度主任に報告すると、颯爽と飛び降り、スリッパを拾い上げてくれた。
「自分が置いたものだ、すまなかった」
超人的な跳躍力だ。
主任の上履きには透明な水飴状の何かと黒い土がべったりとついてしまっている。
洗濯機の底にも足跡がくっきり残っている。
もう一組のスリッパは大柄な男の保健の先生のものらしい。
「ここに物を以前取りに入った時、履き物がなかったので入れておいたんだ。ほら、ないと困るだろう? 保健の先生もそれでおいて行ったんだろう。……しかしそのままでも困るな」
主任は上履きの汚れを丁寧にティッシュに取って始末し、どうしたものかと腕組みをする。
透明な水飴のような物がなくてもほとんど洗濯機の底は沼みたいなものだ。
でもまあいいか、と考えることを放棄して、私は洗濯機(洞穴)の蓋を閉めて、あっさり注水を開始した。
絶対にまあよくないし。
床にあいた大穴にスイッチ一つで注水。そして渦を巻くんだよね?
むむ。危険この上ないような。
主任はgleeのスー・シルベスター先生にそっくりでしたw
もちろんジャージ。




