レンタカーでガソリンスタンド
旅先で足湯に浸かろうと思う。
近くに神社があって温泉もあると聞き、看板に従い道を行く。
でもたどり着けない。
家族で来ていたのに足湯を探しに向かったのはわたし一人だ。
二人はおそらくどこかでのんびりしながら私が見つけて呼びにくるのを待っている。
道は途中で二手に分かれそして繋がる。
つまり空から見ると円を描いていた。
それから車に乗って本当の目的地へ向かう。
もう何年もハンドルを触ってないだろう夫の運転だった。
田舎の対面道路で行き交う車もないから大丈夫だろうか。
助手席で気を揉む。
警察署前を通らないといけないのに、夫は標識のある箇所で左折をしないで過ぎてしまう。
そのあと右折する。
高架でぐるりとして左折する構造になっている。
標識になぜか警察署は三つもあって、左折指示があった二つの警察署は目的のものではなかった。
右折の南警察署が正しい。
そうか、じゃあそれでいいんだなと安心する。
レンタカーを返却するのにガソリンスタンドに寄る。
二人は先にホテルでのんびりしているのだろう。
車内には私一人だ。
順番待ちに並ぶ。
給油先はものすごい混んでいてほとんど左右前後ぴったりくっついた状態だ。
なのに並んで停めたまま車を置いて買い物に出ているも人もいる。
どおりで動かないわけだ。
突然強引にバックしてきた紫のワゴンに、隣の車がグシャグシャにされる。
何度も角度を変えてぶつかるので、隣の車はタイヤのついた鉄の球と化す。
運転手不在で動かない状況に、余程腹が立ったのだろうか。
例によって隣の車の人も買い物に出ていたようで、中には誰もいなかった。
戻ってきた持ち主は、買い物袋を落とし悲鳴をあげる。
窓を開け周囲の運転手たちが、何が起きたのか口々に話しかける。
紫のワゴンは既に道に出るところだ。
番号を覚えようと思うが覚えきれない。
日除けのかかった暗いリアガラスに、髪を二つわけにした幼い女の子の影が映っている。
リアシートで兄弟と無邪気にはしゃいでいる。
目の前で大人があんな行為をしていたのに、まるでへっちゃらなように見える。
それから間もなく給油の順番が回ってくるがホースが届くかどうかギリギリなくらい遠い。
レンタカーは古い自分の車と違ってハイテクで、操作に不安を感じる。
よく知らない記号やレバーがいっぱいあるが、基本は変わらない、わからないところは触らなきゃいいんだと思う。
それでもこうぎゅうぎゅうだとぶつけないか心配になる。
20191006




