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子供の頃、一番怖かった夢<FA:萩尾滋さんから>
テディベアを見ていなくてはいけない。
私の視界は固定されている。
三脚の上のカメラみたいにぴったりと。
瞬きも許されない。
籐の椅子に腰かけたテディベアを見ていなくてはいけない。
黄金色の少し波打った毛並み。
黒く艶のある黒目だけの瞳。
電球色の光を反射している。
表情はない。
なんの変哲も無いテディ。
目をそらすことは許されない。
テディベアの瞳をただ見ていなくてはいけない。
怖くて怖くて怖くて、苦しくてたまらないのに身動ぎも出来ず、私はテディベアを見つめ続ける。
いつまでも終わりが見えないまま。
毎日。




