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毛布をかけて、私は眠る<FA:萩尾滋さんから>
今、私に誰かが毛布をかけてくれた。
毛布はペッタリと輪郭を縁取る膜みたいだ。
私は、私の形の石膏をとるみたいに頭の先まで覆われる。
繭のように包まれる。
私の内側は寂しくて、瞬く間に緑色に溶けた。
白い毛布に体液が滲み、汚れる。
新芽のように鮮やかな黄緑。
行かないでほしいと叫んでいるつもりで、現実の体は身じろぎひとつしていない。
音が聞こえる。
廊下を歩く音。
階段を上がる。
私には手も足も区別がなかった。
目も耳も口もどこにあるかわからなかった。
溶けて内側が外側で、外側が内側だから。
聞こえていると思っているのは振動の感覚。
見ているつもりでいるのは私の内側のイメージ。
現実じゃない。
肌を感覚したい、と願う。




