にどいひと<FA:萩尾滋さんから>
夢のメモのタイトルがこうでした。
ひどいひとって書きたかったのかなぁ?
予測変換による誤字もあって、謎。
彼女は狂っている。
会話は成立しているはずなのに、返事はまるで謎解きのよう。
暗号のような答えから意味を取り出して返す。
返す。
そしてその答えも決してまっすぐ返ってこない。
日々の繰り返しが羽毛のように、綿毛のように、静かに重なり、降り積もる。
陽が透けるほどに薄く、重量があるのかどうか感じられない。
どのくらいの量があるだろう
目も耳も閉じて、水面に浮かぶように私を置いて、降り積もる質量を実感してみたい。
油を弾くように浮くのかもしれない。
深海まで一気に落ちていくかもしれない。
狂っているからいいだろう。
彼女が背負って死ねばいい。
どうせ何もわからない。
人々は目を背ける。
背負って死ぬべきは彼女ではないことは、きっと知っている。
背負うべきが誰かは見えない。
確かに側にあるのに、隠れているから。
わからない彼女が、背負って死んでくれればいい。
願っているのは誰かわからない。
誰もがかもしれない。
彼女の行為は、言動は、周囲に緩やかな誤解を生み続ける。
振る舞いに理由があるのかどうかもわからない。
自ら種を蒔き誤解を招いているようにも思える。
それとも、全くの無垢なのか。
いつの間にか罪は、確かに彼女のものだと人々の認識は歪み始める。
背負って死ぬべきは彼女ではなかったことを、知っていたことも忘れる。
何もわからない彼女は、会話になるかならないかの問答を繰り返し私に求める。
わからないふりかもしれない、ふと思う。
彼女は背負って死ぬべきが自分ではないことを、知っていたことを忘れた。
私は彼女の中から行動の意味を、キーになる何事かを見出したいと願い、カレンダーに記録を残す。
彼女とのやりとりが記録に降り積もる。
記録の中にひらめきを見る。
眩しさに目を細めながら光に手を伸ばす。
理解した、掴んだ、と感覚した先からわからなくなる。
光に白く消えた指先を眼前に戻すと、炭の跡だけが残っている。
指紋の間で炭は細かに震えている。
これは言葉だ。
意味がある。
言葉は読み取ることができないまま、霧散する。
空中に溶ける。
解ける。
逃げ出す。
ほんの少しが浸透し、私は感覚する。
理解には至らない程度の僅かな確かさ。
そして私も不適切をかぶる。
聞いて、聞いて、聞こえない言葉を紡ぎ、疑いを踏み、私は彼女になる。




