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木漏れ日のルアー<FA:萩尾滋さんから>
夢というよりは眠っていた時浮かべていたイメージですね。
新芽。
木漏れ日にきらめく、糸の切れたルアー。
渓流の圧倒的な轟音。
手元の竿から糸が泳ぎ風にひらめいている。
ルアーを枝にかっさらわれたのは何度目か。
カーキのウェーダーを着て腿まで水に浸かっている友人の投げたルアーは、綺麗な弧を描き白い水とともに岩の狭間に吸い込まれる。
滝の水飛沫。
小豆色のTシャツを着た別の友人が話しながら歩み寄ってくるが聞き取れない。
おおかたまた私がルアーを引っ掛けてしまったことについてだろうと見当をつける。
私に手持ちのルアーはもうない。
陽を返すルアーが眩しい。




