性質の違う生き物<FA:萩尾滋さんから>
この子は植物のお前には手に負えないだろう。
日差しが私に告げる。
そうだろうか、そうかもしれない、そうでなければいいと思う。
私はメタセコイアのようなヒリヒリとした皮膚をした一本の木だ。
ささくれ立った幹はまっすぐに伸び、どこにもつかみどころがない。
息子のふくふくとした柔らかい、皮膚に水分をたっぷりと含んだまあるい頬。
息子が手を伸ばすのに、緑の私は応えられない。
愛する息子を抱きしめることもできない。
欲しているものを与えることができないのに、息子は私の愛を疑わず不足を訴えることはなかった。
ただ退屈でしかたないらしく、息子はときにバネじかけのように瞬間的に躍動した。
帰宅後ランドセルをおいて息子は家を飛び出す。
二階の部屋から屋根を走り停車している郵便トラックの上へ飛び乗る。
発車した勢いで落ちてタイヤの下敷きに成りかけても懲りない。
そのように動いてはならないのだと理解しない。
息子の内側は植物の私にはわからない衝動に満ちていて、私の言葉は届かない。




