35/138
鋏の歯肉
赤い蠍のような生き物に執拗に狙われている。
そいつは尻から蜘蛛のように糸を吐き、私を追う。
俊敏に足元を飛び回る。
真っ赤な鋏の刃にはつややかな白い歯。
桃色の引き締まった歯肉に親指ほどの臼歯が三つ生えている。
犬歯ではない。
臼歯なのだ。
私の足首を挟み皮膚を突き破るのではなく、骨を砕こうとしている。
鋏の間に隠されている黒くて太い管。
力ずくで挟んだあと、こいつを私に差し込んで私を内側からいただく寸法なのだろう。
手元にあるのは頼りない泡の風呂用洗剤で、応戦するも効果は微妙。
ついに私は左足の甲、小指の付け根を刺される。
歯。好きだよね。




