27/138
クローゼットの中では
クリーニングから戻ってきたネクタイをめくると菌糸が伸びた。
まるで魚のエラをめくって覗き見たみたいに
アコーディオンのひだみたいに
規則的に整列した白い線が
重力に負けて崩壊する。
崩壊して剥がれ、ふわりと舞う。
ふわふわ切れた端を震わせながら、足下にゆっくりと落ちていく。
ネクタイはきっと美しく清浄になる途中だったんだ。
これからうんときれいになるところだった。
だから私はネクタイをクローゼットに戻す。
そうっと空気を震わせないように気をつけてクローゼットの扉を締める。
真っ暗なクローゼットの中で菌糸が働くのを思いながら。




