むなびれのまりも/枯れ葉の歩行
この頃息子も夢の話をします。
私は体中を覆う真っ赤な胸びれをひらひらと波打たせる。
ひれは先端に向かうにつれて色を薄くして、末端は殆ど透けて水と同化しているように思えた。
私の身体はむなびれのまりも。
丸い全身にびっしりと胸びれが生えているのだ。
私の外側には他の器官がなにもない。
ただ、ひだを広げてあちこちで仰ぐように揺らしつづける。
水が震え、浮遊物が星々のようにきらめき、私は水中で静止する。
静止しているようで、ひれは揺らいで一時も動きを止めることはない。
光が差す。
私はむなびれのまりも。
美しく醜悪で、儚くも満ち満ちた。
私の夢は「むなびれのまりも」
息子の夢は「枯れ葉の歩行」でした。
枯れ葉は舞い落ちて地面につくと走り出すんだそうです。
腐葉土のような湿った土の上で
枯れ葉は一面敷き詰めたように降り積もっていて
足の踏みどころがなくて
息子は枯れ葉を踏んでしまう。
踏みたくないのに踏んでしまう。
葉は粉々になってしまう。
どうすることもできなくて
それが悲しいんだと言っていました。




