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ゆらぎ
視界に映るのは緑色の揺らぎ。
緑色は人。
揺らぎは体温の放熱。
きっと一人ひとりの体温の違いが、人である緑色の形を縁取るように現れた靄を歪めたり、引き寄せたりするんだ。
多くの人々の間で知らず交換されている、熱。
もろもろになって角砂糖が崩壊し紅茶に溶けていくように空中がもやもや揺らいで、僕はとても息をつけない。
濃密すぎて喉につかえてしまうから。
ベッドで眠れないまま緑色を見ている。
もうすぐ死ぬことは知っている。
座敷に敷かれた敷布団の真っ白なシーツの上で仰向けになってもう指先も動かすことができない。
気遣う家族の音がする。
チューニングの合わないラジオの音みたいで、意味のある言葉としては届かない。
音がきらめいている。




