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【夢日記】内側を旅しても(stray thoughts.)  作者: 遠宮 にけ ❤️ nilce
2019年の夢

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インフィナとあかりとさとり<FA:萩尾滋さんから>

 インフィナという青年はツタンカーメンに似ている。

 シャープな目は隈取りしたようにくっきりしていて、磨き上げられた石器のように鋭い。


 彼はわたしたちあかりさとり姉妹と共に家の和室に寝っ転がっている。

 ビーズクッションに深々と身体を埋めて真剣すぎる顔で日本の漫画に目を落としている。




 わたしはあかり。

 この家の主人の娘の、姉の方だ。

 幼馴染みの少しお兄さんだったインフィナとは生まれた頃からずっと一緒にいる。

 妹のさとりと同じくらい、当たり前にずっと。




 今日の町内は大人たちが騒がしい。

 選挙があるんだ。


 選挙の後大人たちは何故かうちに集まって、飲んだり食ったりしている。

 わたしたち子供は二階でくつろいでいたんだけれど、焼き鳥と日本酒片手に大人たちが二階にまで上がってくるから、三階まで退却させられる。


 二階は洗濯物でいっぱいなのになあ。

 下着だって干してあるのに、嫌だなあ。

 インフィナに見られるのは別になんともないんだけど、知らない大人が見るのは嫌。




 三階のベランダからは神社が見える。

 父親と神社の石段を登っていた幼児が、ゴロリと転がり落ちた。

 落ちた先は池みたい……というより小さな小川みたいに大きな水溜まり。

 幼児はぐるぐると水中芋虫ゴロゴロしながら流されていく。

 なんだか楽しそうだが、手を引いて階段を上がっていた父親は大慌て。

 必死で水飛沫をあげながら後を追いかけている。



 窓を開けてその様子をみていると

「さむくないの?」とちえが言う。

 ちえはもうおっぱいが大きいから、子供みたいだけど大人かな。

 インフィナより年下だったかもしれないけど。

 ても、とにかく大人。

 もう大人。




 三階の部屋にはすでに四人、お揃いの青い服を着た子供がいる。

 茶色いビーズクッションが同じ数だけ。

 みんなそれぞれ好きな本を手に自由に転がっている。

 そのほかにまだ四人。

 同じ色の服。

 漫画を選んだり外をみたりしながら部屋をうろうろしている。



 子供たちはビーズソファーを挟んで背中合わせに座る。

 八人前後二列。

 それぞれが互いの身体に触れ合ってその感覚を受け止め、次に同じ感覚を与えるゲームをしている。

 眼鏡をかけたダウン症の女の子もいる。

 触れるのは大概首の後ろだ。

 桃色に染まった耳がじゅくじゅくした桃みたいと思う。





 生成りの布の上を左に進むと過去へ行ける。

 過去に進むと両親に会うことになる。

「大きくなったね」って抱きしめられるわたしとさとり。

 なぜか他人のはずのインフィナも父親に抱きしめられている。

 インフィナはツタンカーメンに似た顔を、フニャッと柔らかくする。

 その顔が好き。

 インフィナはいつもは尖った顔してるけど、本当はとても可愛いんだ。

 誰も知らない。




 白と黒とぶちのウサギが白い壁の穴に入る。

 壁というか……ウサギのための穴の家だ。

 どこもかしこも穴だらけなんだ。



 わたしは届いたばかりの箱を開けぺらぺらのプラスチック掃除機を取り出した。

 ルンバみたいに自動で動くものだ。

 それを使ってウサギの家を掃除する。


 しかし軽い掃除機は畳んだ洗濯物に上がってきて、牧草を撒き散らしてしまう。

 洗濯物が汚れ、大人の男の人が困ったと言う。

 タオルはいくらくらいだろうと眉を寄せて難しい顔。


 わたしはこんな木屑くらい、払い落として洗い直せばいいだろと思う。

 すると思っただけなのに床から水が湧き出して、洗濯物もタオルもみんな濡れてしまう。

 溢れてそれから一定の向きに流れ出す。

 川みたいに。

 牧草も流れていってしまう。




 20191209

挿絵(By みてみん)

萩尾滋さんから

https://mypage.syosetu.com/831976/

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