83 ボウリング 前編
おかしい、一話に収まる予定だったのに思ったより膨らんだ。
そんな感じで83話です。お願いします。
平日の昼下がり、俺は友人と共にボウリング場に来ていた。
俺の隣にはすっかり親友ポジションに定着した碧、そして『推し』である杏実さん、それに加えて杏実さんの友人であり、俺達のクラスメイトであるダンス部の友香梨さん。
なんでこんな事に──────。
時は二日前に遡る。
数学の追試の結果が返ってきて、その結果を見てとりあえず安心していると後ろから碧が話しかけてきた。
「おっ、まあまあ良い点取れてるじゃん。これなら明後日は心置きなく遊べそうだな」
北燈高校は前後期制を取っており、その境目となる一日は特別に休日となる。
俺と碧はその日を利用して遊びに出かけようと以前から話していたのだ。まあ俺が追試に引っかかったせいでその話がここまで滞っていたのだが。
「結局どこ行く? カラオケとかはうちの生徒達で予約埋まってそうだけど」
「俺はボウリングとか良いんじゃないかと思ってて」
俺が尋ねると、すぐに碧が返す。
「へぇ、ボウリングか良いじゃん。決まり」
「おっけ」
そうして碧と遊びの計画を立てていると、突如として明るい声が会話に飛び込んできた。
「ふっふっふ。話は聞かせてもらったよ。…………私と友香梨ちゃんもその日遊ぼうと思ってるんだけど、えっと、その、一緒に行かない?」
役者めいた口調で会話に入り、喋っている最中に恥ずかしさが込み上げてきたのか、勢いが尻すぼみになっていったのは俺の『推し』の杏実さん。その後ろに友香梨さんも微笑みながら立っている。
碧はそんな二人に一度視線を向けた後、俺の方に向き直り「どうする?」と視線で尋ねてくる。
「まあ男二人で遊ぶよりも楽しくなりそうだし良いんじゃないか?」
俺がそう漏らすと、パッと杏実さんの顔が輝く。
そんなやり取りを経て現在、俺達はボウリング場に来ているわけだ。
今は店内に入り、受付カウンターに並んでいる所だ。
よほど楽しみらしく、さっきから受付に並びながら杏実さんが手をぶんぶんと振り回しており、それに合わせてスカートもゆらゆらと揺れている。
ちなみに今日のそれぞれのコーデは、杏実さんが白色の服にやや短めのグレーのプリーツスカート。
友香梨さんは上は杏実さんと色違いのライトイエロー、下は白のタイトめのボトムス。
碧はどこかのバンドのロゴと思われる模様が入った白のシャツにネイビーの薄手のジャケット、ベージュのズボン。
俺はと言うと、ネイビーの長袖シャツにジーパンを合わせただけのシンプルな格好になっている。もうちょっと何かしら手を加えた方が良かったか。
ボウリングという運動をするのに杏実さんがスカートを履いているので、少し不安に思っていると、何も言わないうちから「ちゃんとスパッツ履いてるから大丈夫!」と言われた。ただの杞憂だったようだ。
適当に会話をしているうちにすぐに受付に辿り着き、とりあえず二ゲームをオーダーした。
そしてそのまま貸し靴を取りに移動。
碧が二十六センチのシューズを手に取るのを杏実さんがじっと見つめていた。
余談だが、世の中には「ボウリングデート」なるものが存在する。
それはボウリング場で貸し靴を借りる際に彼氏、彼女の足のサイズをこっそりと知り、後に靴をプレゼントする時の参考にするために行われる、と言われている。
意外と、杏実さんは抜け目が無い。
そして、その後はそれぞれが適当にボールを持って自分達のレーンに入るといざゲーム開始。
意気揚々と一番乗りで杏実さんがボールを投じると、それはそのまま一直線にガターに吸い込まれていった。
杏実さんのボール音痴はここでも健在だ。
「ボウリング、初めてなんだよね〜。思ってたよりも難しいね」
第二投も見事にガターにボールを飛び込ませた杏実さんが呟く。
「私も初めて〜」
そう言いながら友香梨さんが放ったボールはレーンを滑るように移動し、七ピンを倒す事に成功した。
「え〜〜! なんで友香梨ちゃんそんなに上手いの〜?!」
と杏実さんが嘆くと、友香梨さんは「う〜ん、運動神経?」とド正論を叩き込み、俺と碧は思わず吹き出した。
俺の第一投は三ピンを捉える事に成功したものの、次の投球ではガターに。杏実さんから「仲間だ!」と不名誉な視線を向けられた。
小学生以来のボウリングだしこんなもんか、と席に設置されているモニターで結果を眺めていると、碧がボールを手に歩き出す。
そして途中から小走りになり、碧が放ったボールは真正面から僅かに逸れたポイントに飛びこみ、全てのピンを薙ぎ倒していった。
読んでいただきありがとうございました!
土曜くらいに後編を更新する予定なのでよろしくお願いします!
読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!




