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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第三章『秋』
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78 白熱! 体育祭! 後編

体育祭後編です!

投稿タイミングが普段より遅かった分、普段よりちょっと文字数多めです! よろしくお願いします!


前編をまだ読んでない人は『前へ』で一話前を先にご覧ください

 杏実さんが障害物競走を終えた少し後、俺と碧が挑む二人三脚の時間がやってきた。


 今回のルールは二人で一組となり、六組でのリレーで勝敗をつける方式となっている。

 俺と碧は二組目という比較的責任の少ない場所の担当となっているので俺としては安心だ。もちろんミス無くやり遂げたいところだが、仮に碧と息が合わずにタイムロスをしてしまっても後ろに控える先輩達が取り返してくれるはずだ。


「よし、行くぞ佑! 最初の一歩目は繋ぎ合わせてる内側の足だからな!」

「わかってるよ碧! 行こう!」


 グラウンドに乗り出した際、碧が放った自分自身と俺を鼓舞する声に威勢よく返すと、にかっと碧が笑う。

 応援席では最前列に杏実さんが陣取っているのが見えた。

 少し顔を傾けてみると、青団の応援席には千波の姿が見られた。仲の良い子でも出場するのだろうか。自分の団の応援のついでになるにしても、俺が二人三脚をする姿は千波の目に映る可能性が高そうだ。だったらなおさら頑張らないとな。



 グラウンドに団ごとに整列すると、体育教師が一歩前に出て、号砲を鳴らす。それと同時に各団の一組目が一斉に飛び出した。

 流石に九団もあると、そのうちの幾らかはスタートの時点でペアと呼吸が合わずに早々に転倒していた。

 幸いにも我らが赤団の一組目の二年生のペアは上手く歩けていて、ペースも中々良い。

 そしてそのまま危なげなくペースを保ち、二位で二組目の俺達にバトンタッチした。


 俺と碧は練習通りに内側の足から勢いよく踏み出すと、振り込んだ地面から砂埃が上がる。そのままの勢いで二歩目、三歩目と続き、最高のスタートを切った。

 そしてそのまま俺達はスピードを上げ、一位のペアが一瞬もたついた隙に一気に距離を詰めると、それに並んだところで碧が俺に声をかけた。


「ペース上げるぞ!」


 相談では無く宣言。

 すでに今のペースは練習で最高記録を出した時と同じくらいだから、これ以上飛ばすのは少しリスクがある。それでも、碧が行けると判断してのことだし、何よりも俺の中に()()()()という感覚があったから俺は碧の宣言に無言で頷くと、足をより速く回転させた。

 瞬間、一気にペースが上がり、並走していた一位の団を颯爽と抜き去る。

 応援席からは一気に歓声が上がる。


 このまま一気にゴールまで駆け込み、バトンタッチを! と行きたかったのだが、事はそう上手くは運ばなかった。


 俺は卓球部、碧はテニス部。体育館部活と外部活。この違いが、普段から外を走っているかの差が、俺と碧の歩幅を少しずつずらしていた。

 そして、前を走っていたペアを抜き去った直後にそれは明確な差として表れ、明らかに碧の足が俺の足よりも早く前に動き、俺を引っ張る形となった。

 当然、俺はバランスを崩し前に倒れる。そして、足を繋がれている碧にもそれは伝播し、二人揃って派手に転倒した。

 グラウンドには今度はため息がこだまする。

 慌てて立ち上がるも、その時には先ほど抜いたペアに抜き返されており、結局交代した時と同じ二位のままでのバトンタッチとなってしまった。


「あ〜、無茶しすぎたか〜」


 次のペアに交代して、足同士を繋いでいた紐を解いた碧がその場に倒れ込んでそう言うので、


「だな。でも、盛り上がったし楽しかった!」


と返すと、碧からも「そうだな、楽しかった!」と溌剌とした声が返ってきた。




 結局、後ろに残っていた先輩達も抜きつ抜かれつの激闘を演じた末、二人三脚は二着での終了となった。


 応援席に戻ると、「良かったぞ〜」という歓声と共に、転倒した俺達を案じる声も聞こえてきた。

 俺も碧も転倒した際に軽く膝を擦りむいていたが、少ない出血で済んでいたので別にいいだろうと思っていると、二人三脚の後に待っていた昼食休憩の際に杏実さんによって救護テントに連行された。

 初めは軽くいなしていたのだが、珍しく杏実さんが引き下がらなかったので俺達は抵抗を諦めた。


 消毒を受け、絆創膏を膝に貼って応援席に戻ると、「軽い傷からでも菌とか入るんだよ、もう!」と注意された。




 昼食を終えると、いよいよ体育祭の花形、リレー ───の前に、砲丸投げが挟まる。

 これにはうちの団からは強肩を持つ大喜を起用したのだが、当然ながら他の団も投げるのが得意な野球部を起用してきた。


 今日は調子が悪かったのか、それとも野球ボール以外を投げるのが苦手なのか、大喜の記録はあまり伸びず、五位止まりだった。


 そして、迎えたリレー。

 うちの団のリレーの選手はほとんどが二、三年の先輩だったので知らない人が多かったが、他の団のリレーの選手を見ると、見慣れた顔が二つもあった。

 一つは青団の第一走者の位置に立っている幼馴染であり、『想い人』である千波。

 もう一つは、今年の夏にちゃんと関わり出すようになってすっかり見慣れてしまった顔であり、黄色団のアンカーを務めている彩陽さん。


 一年生でアンカーを任されているなんて凄いな、と彩陽さんを見ていると、「中学の時は陸上やってたんだって」と横から杏実さんが教えてくれた。

 そして、千波って確かに女子の中では運動得意な方だとは思うけどそんなに走るの速かったっけ、と思っていると、これまた杏実さんが「あ〜、千波ちゃんはリレーの人が少なすぎて急遽入ったらしいよ〜」と苦笑い混じりで教えてくれた。

 そんなやり取りをしているうちに号砲が鳴り、リレーが始まった。


 号砲と共に飛び出した各団の選手達は、一気にぐんぐんと加速していく。千波も後方ではあるもののどうにか食らいついている。思わず「すごいな」と言葉が溢れる。

 そして、そのまま特にアクシデントも無くバトンパスへ。ここでもミスは無く、無事に千波は自分の役割を全うした。

 走り終えた後、人一倍肩で息をしていた彼女の姿が印象的だった。






 (千波)は別に走るのが得意なわけじゃない。

 けれど、人数の兼ね合いでどうしてもと団長から言われたから、リレーに参加することになった。


 体育祭当日、リレーの直前。グラウンドに立って応援席を見ると、赤団の席の前の方に佑がいるのを発見した。

 佑も見てる。頑張らなきゃ。そんな思いで私はスタートを切った。


 スタートダッシュは上々、他の子にも付いていけていた。けれど、人数合わせで入ったような私がそこから先の加速にまで付いていけるはずはなく、少しずつ離されていくのが分かった。

 それでも、心の奥底にあった佑に「周りに差をつけられての最下位」みたいな情けない姿を見せたくない、という思いが、私の足を加速させた。

 息も苦しいし、今自分がどの位置を走っているかも分からなくなっていたけれど、無我夢中になって足を動かし続けるうちに気づくと下位集団に紛れてバトンパスを成功させていた。


 バトンパスを終え、走り切った、よく分からないけど周りにもどうにか食らいつけた、という思いが溢れた瞬間、一気に疲れに襲われた。

 力強い踏み込みの反動で足の裏はめっちゃ痛いし、呼吸も中々整わず、ずっと肩が上下している。

 だけど、達成感に包まれていて不思議と心地良かった。





 その後のリレーは、黄色団のアンカーの彩陽さんが五位でバトンを受け、二位にまで迫るところまで順位を押し上げたのがハイライトだった。

 俺としてはもうちょっと大番狂わせが起こると面白かったのだが、仕方がない。それにしても、彩陽さんは本当に速かった。知り合いの新たな一面を発見だ。


 

リレーが終わると表彰式、文化祭と体育祭の受賞発表が行われた。


 赤団からは三つの受賞。『アート』が二位、『展示』が三位、『応援』が三位。

 一位がなくてパッとしないが、これは素晴らしい結果だ。何せ、一つも賞を取れていない団もあるのだ。

 自分がちゃんと関わった『展示』の三位が発表された時なんかは思わず周りにいた友達と抱き合ってしまった。


 表彰が終わると、ついに楽しかった学校祭も終了。

 校長先生の挨拶をもって、学校祭は終わりを告げた。

 校長先生の挨拶で今日の学校は終了という扱いなので、ほとんどの生徒が教室に荷物を取りに行った後は一目散に家に帰る。


 ───しかし、俺達にはまだ延長戦が残っている。


 打ち上げどうしようか、なんて話しながら帰っていく生徒達を横目で見つつ、今日までの二日間楽しかったな〜と雑談を振りながら碧をどうにか教室に留まらせる。全ては杏実さんの告白のために。




 同時刻、佑に碧を引き留めてもらっているので急いで教室に向かおうとする杏実の元に大柄な一つの影が近づく。


「……杏実、ちょっといいか?」


 峰口大喜の、一世一代の勝負が始まる。

読んでいただきありがとうございました!


これで恐らく年内の更新はラストです!

初投稿の一年でしたが、たくさんの人に目を通していただけたらようで嬉しいです!

来年もよろしくお願いします!

ps.今回の長期休暇では投稿頻度アップキャンペーンはやりません。読まないといけないものが貯まってるので

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