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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第三章『秋』
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76 文化祭の午後

文化祭編はラスト! 76話です!

よろしくお願いします!

 いやぁ、中々面白かったな、『舞台』。

 俺達の団のものも面白かったが、千波や舞唯さん達の団のものは飛び抜けて面白かった。

 まさか、「うさぎとかめ2024」なんてタイトルで、のんびり屋の女の子とせっかちな男の子のラブコメをやるとは思わないじゃないか。あ、ご察しの通り舞唯さんはヒロインであるのんびり屋の女の子役でした。当人がそもそものんびり屋なので完璧に役がハマっていた。


 何やら友達と約束があるらしい碧と別れ、『舞台』に非常に満足して体育館を後にした俺は、ふと良い香りが鼻についた。その香りは体育館とグラウンドの境目にある広場から漂ってきている。

 うちの学校では、衛生管理云々で学生が調理した何かを振る舞うという事が禁止されている。なので、生徒が出店を出すということは無いのだが、その代わりに地元などからキッチンカーを呼ぶ事でそれを補っているとの事だ。

 俺の鼻についたのはそこからの香りだろう。


 特に予定も無かったし、時刻もお昼時になっていたので少し腹も減ってきている。

 ということで、少し広場に寄ってみることにした。


 広場に足を踏み入れると、お昼時ということでキッチンカーの周りは中々な賑わいを見せていた。


 いくつかあるキッチンカーを見て回って、結局焼きそばを選んだ俺は列に並び、無事に焼きそばを手に入れた。昼ごはんゲット。


 次は食べる場所を見つけないとな、と辺りを見回すと、花壇の脇にやや狭いスペースが空いていることに気づいた。一人で昼ごはんを食べるのには丁度良い、とそこに座り、俺は焼きそばを頬張り始めた。



 焼きそばを半分ほど食べ終えた頃、不意に後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 振り返ると、そこには『推し』の姿があった。


「あ、佑君。隣、良い?」


 え、俺の隣? わざわざなんで? というか、狭くない? といった疑問を浮かべているうちに、杏実さんは俺の隣に腰掛けた。そして、俺の視線はその手に握られている棒の先に刺さった真っ赤な球体───りんご飴に惹きつけられた。


「杏実さん、りんご飴食べてるの? 好きだね、甘い物」


 そういえば夏祭りでは千波がりんご飴を食べていたっけ、そして杏実さんは飴細工を食べてたよな、なんて思い出しながら声をかけてみる。すると、杏実さんはそれにすぐに返す。


「佑君も焼きそば好きだよね。確かお祭りか何かの時に食べてた」


 そう言われればそうかもしれないな、と思いながら無言で麺を口に運んでいると、杏実さんも可愛らしく舌を出してりんご飴を舐める。

 それをしばらく続けているうちに、流石に無言は気まずいと思い立ち、少し話を振ってみることにした。


「そういえば、友香梨さんは? 『舞台』の時は一緒だったよね?」

「…………友香梨ちゃん、午後からは彼氏と文化祭デートだって」

「あぁ……」


 言葉が出る前の溜めに、自分に向けた負の感情が混ざっていることを感じた俺は思わずため息が漏れる。


「佑君、この後何か用事ある?」

「いや、特に。まあ、他の団の『展示』でも見て回ろうかな」

「じゃあ、私ついて行っていい?」


 え、まじで?

 『推し』と一緒に文化祭回るなんてシチュエーションなんか早々無いから普通に緊張するんだけど。

 でも、俺が一緒に居れば、たまたま途中で碧と遭遇した時に自然に碧と杏実さんを接触させれるな。


 とりあえず断る理由なんか無く、なんなら利点さえありそうだったので、杏実さんからの申し出を受けると、杏実さんは「やった」と小さく喜ぶ。

 こういうちょっとした仕草が可愛いのが本当によろしくない。これを見て碧は何も思わないのか。


 そうこうしているうちに気づけば焼きそばが手元から消えていた。いつの間にか食べ終えてしまったらしい。

 ちらと杏実さんに視線を向けると、焼きそばを食べ終えた俺を見て焦ったのか、りんご飴を一気に口に放り込もうとしていた。

 そんな事を実行すれば喉に詰まること請け合いなので、俺は慌ててそれを止め、ゆっくりとりんご飴を齧る杏実さんのことを待った。

 杏実さんがりんご飴を完食したのはそれから十数分後のことである。




 腹ごしらえ(杏実さんは腹ごしらえというより間食だったが)を終えた俺達は、予定通り『展示』を回り始めた。

 しばらくは純粋に楽しめていたのだが、しばらくすると一定数の視線が俺達に向いていることに気づいたことで、ややテンションが下がった。

 何が「あのカップル、手繋がないのかな」だ。俺達は別にそういうのじゃないし、なんならお互いに別のところに本命がいるんだよ! なんて文句を胸の内で唱える。


 だが、やはり迂闊だったかとも思う。

 文化祭を二人の男女が一緒に回るというのは側から見れば確かにカップルだ。

 うっかり碧や千波なんかに会ったら誤解されてしまうかもしれない。そうなるとかなり面倒な事態になる。そう気づいた俺はそれからずっと周囲に気を配り、碧と千波、またクラスメイトと出くわさないように気をつけた。

 そんな事をしながら『展示』を回り続けているうちに、学校祭一日目、文化祭は幕を閉じた。


 ずっと気を張ってたおかげで、妙に疲れた。

読んでいただきありがとうございました!

読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

PS.前回の話で「年内中に総合評価100ポイントまで行けたらなぁなんて我儘を言いながら」なんて書いたらブックマークを一件いただけて歓喜

あと四点、いただけたら……

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