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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第三章『秋』
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64 パート分け

新章開幕!!


よろしくお願いします!

 八月末、世間はまだ夏休み。

 でも俺達は今日で夏休みが終わり、学校に通う日々が再開する。

 なぜなら───九月半にある一年で最も大きい行事の準備があるからだ。


 残暑と呼ぶにはまだ早く、夏真っ盛りの空の下を汗をかきながら自転車を走らせ、学校へと向かう。

 高校の駐輪場に着いた頃には全身から汗が滴っており、駐輪場で汗を拭いていると隣に自転車が滑り込んできて、同時に挨拶も飛んできた。


「おはよう、佑。まだまだ暑いな」


 顔を上げると、坊主頭が似合った大柄な男、大喜がいた。

 おはよう、と挨拶を返し、汗を拭き取り切って隣に目を向けると、大喜が額にハンカチを当てて突っ立っていた。どうやら俺が汗を拭くのを待っていてくれたらしい。


「待っててくれたのか。ありがと」

「折角ここで会ったんだから雑談でもしながら教室に行きたいって思ってさ」


 そう言う大喜に「確かに」と返すと、歩き出した大喜の隣に並んで教室へと向かった。



「そういえば、夏休みにやってた野球の大会観たよ。大喜、すごい活躍してたな」


 雑談の最中、ふと思い出した事を口にすると、大喜は照れくさそうな表情を浮かべる。


「観ててくれたのか、ありがとな!」

「まあ、友達がベンチ入りしてるってなると気になるでしょ。予想よりもしっかり試合出てて、ちゃんと活躍してて驚いたけど」

「あれは先輩達のおかげだよ。めっちゃフォローしてもらった!それに───」


 そんな風に大喜の活躍具合について話しながら教室に入ると、クラスメイトが一気に寄ってきた。


「おっ、大喜!」

「すごかったな、あの逆転ホームラン!!」

「俺、現地で観てたぜ!大興奮だった!」


 クラスのみんなも大喜の活躍をしっかり知っているようで教室に入った途端に囲まれてしまい、こりゃ続きを話せそうにないな、と俺は自分の席についた。



 しばらくすると、教室に先生がやってきた。途端に大喜に集まっていた人達が一気に散らばり、それぞれの席についた。その様子を見た先生が苦笑しながら話し始めた。


「はい、楽しい楽しい夏休みは終わり、今日からは普通の日々だぞ〜。ちゃんと気を引き締めて、って言っても、無理か。なにせ、今日からしばらくは授業ほとんど無しで学校祭準備だからな」


 それを聞いた瞬間、クラスが湧き立つ。


 俺達が通っている北燈高校の学校祭は、一〜三年生が一クラスずつ集まって団を結成して一日目に文化祭、二日目に体育祭という二部構成となっている。 一、二年生は楽しい行事として、三年生は受験前最後のビッグイベントとして夏休み明けから総出で準備に当たる。


 元々夏休み前から告知されていた事ではあったが、こうして直面するとやはり気分が上がってくる。

 クラスが湧き立つ中、先生がパンパンと手を叩くと、一気に静まりかえる。


「はい、じゃあ静かになった所で説明を続けよう。知ってる人も多いと思うが、ここの学校祭では、応援、展示、舞台、アートの四つのパートに分かれて活動してもらうことになる。それについての詳しい説明は───三年生がしてくれる」


 先生はそう言い教室の扉を指差すと、示し合わせたように三年生が何人か教室へと入ってくる。クラスにどよめきが広がる。そして、先頭に立っていた見るからに活発そうな男の先輩が話し始める。


「えー、一年九組のみなさん、おはよう! 今回の学校祭で団を組むことになった三年七組です! 早速だけど、それぞれのパートについて説明していきます!」


 そしてそのまま、たまに話す役を他の人に交代しながら様々な説明をしてくれた。


 『応援』はその名の通り、体育祭の時に大声で叫びながら舞う「応援合戦」を行うパート。

 『展示』は文化祭で教室を丸々一つ使って何か出し物をするパート。真面目に何かを研究してまとめて発表する団もあれば、ミニゲームを行う団もあるらしい。

 『舞台』は文化祭の時に体育館のステージを借り、生徒のオリジナル脚本の劇を行うパート。これもまた、感動的なものからコメディまで団によって様々らしい。

 『アート』は学校祭中に飾られる「団パネル」と呼ばれる、団の特色を出したパネル型の作品を作成するパート。


 そこまで話すと、三年生が声を揃え、「ありがとうございました! これからよろしくお願いします!」と気持ちのいい挨拶。これにクラスが盛大な拍手で応えると、三年生は教室から退出し、再び先生にバトンタッチした。


「そんなわけで、早速だけどパート分けをします。友達と話し合ってもいいから、一限終了までに決めろよ〜」


 先生がそう言うと、一気にクラスが騒がしくなった。みんな仲良い子と一緒のパートにしようと奔走している。

 そんな中、俺は自席に座ったままどこにしようか、やはりあそこかな、と考えていると、思考の外から「佑君っ!」と呼ぶ声が聞こえた。

 声の出所を探すと、俺の右側に『推し(杏実さん)』が立っていた。


「あ、杏実さん。どうした?」


 そう尋ねながら彼女の顔を見ると、仄かに赤みを帯びているのが見受けられた。

 あ、これ碧関連だ。大方、碧はどこのパートだと思うって訊きに来た感じだろう。

 そう思いながら杏実さんが話し始めるを待つと、少し溜めてから口を開いた。


「えっと……碧君ってどのパート選ぶと思う?!」


 ビンゴ。

 どうしてこんなにもわかりやすいんだ。


 そう考えて苦笑しながら「頑張って本人に訊きな」と答えようとして碧の姿を探すと、丁度他の子と話し込んでいる最中だった。仕方ない、教えてあげよう。


「多分、応援だと思う。前にそう言ってた」


 そう答えると、明らかに杏実さんのテンションが落ち込んだ。


「応援、か……。大声と共に舞うって私に一番向いてないやつだ……。他の人達に絶対迷惑かけるからやめとこう……。絵とかは得意だし、大人しくアートに行こう」


「まあ、人には得手不得手あるから仕方ないよ」


 落ち込んだ様子の杏実さんを励ますようにそう言うと、「佑君はどこにするの?」と今度は俺についての質問がやってきた。


「う〜ん、どれも面白そうだけど、自分達で出し物やるの面白そうだから展示にしようかな。ああいうのの運営好きなんだよね」


 そう答えると、杏実さんはなるほどね〜、ありがと!と言って別の友達の方へと駆けていった。



 それからしばらくすると、クラスの大方の希望が決まった。各パートに定員があったが、俺は運良く希望通り、展示に入ることができた。ついでに舜太と直紀も同じく展示になった。杏実さんと碧も無事に希望していたアート、応援にそれぞれ入れたようだった。






 一方その頃、一年二組。


 (千波)はどのパートに入るかでかなり悩んでいた。

 応援は私には合ってないから除外するけど、それ以外はどれも先輩からの説明を聞いた感じでは楽しそうだった。


 佑はどれを選ぶだろうか。

 そんな考えが不意に頭に浮かんだ。

 佑とはクラスが違うからこういう所で接点を持ちたい。そう思って、頭に考えを巡らせる。


 応援は、ない。佑はそういうタイプじゃないはず。美術とかもあんまり得意じゃなかったと思うからアートも除外。展示か舞台か。

 そういえば中学の頃に「何かを運営するのが好き」みたいなことを言ってた気がするな……。なら選ぶべきは展示!うん、展示以外ありえない!


 進むパートを決め、一息ついていると、クラス全体の希望調査が終わったようで担任の先生が教壇の前で話し始めた。


「今の希望の結果を見ると、展示が人気で定員を超えてます。そして舞台が少ないです。なので、展示を希望する人でじゃんけんをしてもらって、負けた二人は舞台に移ってもらいます」


 そんなわけで、じゃんけんに巻き込まれてしまった。

 でも佑と同じパートになるためには勝たないと!

 えーっと、確か統計的にはチョキが一番負けにくいんだっけ?あれ?パー?


 そうして無駄な事を考えているうちに急にじゃんけんの音頭が取られ、私は慌ててグーを出した。私以外みんなパーだった。


 佑と同じパートになるという事すら出来なかった……。

読んでいただきありがとうございました!


そんなわけで学校祭編スタートです!!

季節的にはまだ夏ですが、章名は『秋』です。


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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