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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第二章『夏』
66/160

57 浴衣

57話です!

よろしくお願いします!

 俺の目の前には一枚のポスターが貼られていた。

 「八月十五日燈津川花火大会」と大きく書かれている。

 そして、俺の視線が向いた先にあるスマホにも、それと同じ日付が表示されている。

 そう、今日は花火大会当日。俺は集合場所として指定された図書館の出入口に佇み、他のみんなを待っていた。



 数日前の部活の時に杏実さんと遭遇し、碧の勧誘に成功すると、それ以降は特に何もなく当日を迎えた。

 強いて言うなら、プールの帰りに起こった出来事に対する整理がようやくできてきた位だろう。

 今日の花火大会にはあの出来事の相手である『想い人』も来る予定となっている。彼女にしてみれば、無意識のうちに起こっていた身に覚えのない事のはずなので、変に気にして関わる、なんて事が無いようにしないと。

 そう意気込んでいると、一台の自転車が走り込んでいた。


「よっ、佑」


 自転車を降りて顔を合わせるなり、そんな風に朗らかに挨拶を飛ばしてくるのは、杏実さんの『想い人』である碧だ。

 俺も挨拶を返すと、ちらりと腕時計に目をやる。時刻は集合時間である午後五時の五分前。流石は碧、時間の取り方が上手い。うっかり十五分も前に到着してしまった俺とは大違いだ。


「こうやって二人で待つの、プール行った時みたいだな」

「あ、確かにそうだな」


 そんな会話を交わしていると、左手首の腕時計がピッと鳴り、五時を告げる。


「杏実さん達、遅刻か……? プールの時にちょっと遅れてた杏実さんはともかく、千波まで遅れてるのは珍しいな」


 思わずそんな言葉がそんな言葉が口から溢れると、隣にいた碧が呟く。


「ま、そんな時もあるんだろうよ。時間が切羽詰まってる訳でもないし、気長に待とう」


 碧のその言葉に、そうだな、と返してスマホに目を落とした──────途端、図書館の駐車場にすごい勢いで一台の車が突っ込んできた。

 キーッ!と音を立てて停止すると、()()の美少女がぱたぱたと駆けてくる───その身に、日本の伝統衣装、浴衣を纏って。その美しさに見惚れ、思わず息を呑んでしまった。


「ごめーん!ちょっとだけ遅れちゃった!」


 出てくるなり、ピンクを基調とした浴衣を羽織った『推し』が元気さと可憐さを詰め込んだ声を響かせる。


「ごめん、私がちょっと着付けに手間取っちゃって」


 杏実さんの声に続いて、水色の浴衣を揺らした『想い人』も謝罪を口にする。


「「適当に話してたからそれくらい気にしないよ〜」」


 二人の謝罪を受け、美しさで固まっていた口を開くと、碧と言葉が重なった。それを受け、杏実さんと千波が、ハモった、仲良しだ、と笑う。


 そんなやりとりが終わるのを見届けると、黄色の浴衣を着こなしている三人目のポニーテール美少女が一歩前に出て、口を開く。


「えーっと、一応初めまして、だよね? この間のプールを当日キャンセルした香山(かやま)彩陽(さや)です! 二人のことは杏実ちゃんと千波ちゃんから聞いてます! 今日はよろしくお願いします!」


 元気よく最初の挨拶をしたこの子を、俺は知っている。何回か学校で杏実さんや千波と喋ってるのを見たことがある。とは言え、ちゃんと関わるのは初めてだ。


「こちらこそよろしくね」

と返すと、「はいっ!!」と元気な返事がやってくる。今まで杏実さんのことを、元気だなぁと見ていたが、この子はそれをさらに上回る雰囲気を感じる。

 俺がそんなことを考えていると、碧が話題を転換する。


「ていうか、女子みんな浴衣?! 言ってくれれば合わせたのに」

「え、お前浴衣持ってんの?」


 なんだか聞き捨てならない言葉が聞こえ、つい口を挟んでしまった。


「母さんが和装好きでな……」

と苦笑しながら碧が答えると、「えー、見たかったー」と杏実さんが可愛らしいいちゃもんをつける。また機会があればな、と軽くあしらわれているが。

 それを微笑ましく見ていると、それと反対側からの視線を感じた。振り返ると、水色の浴衣の『想い人』が。


「ど、どう? 変じゃない?」


 こういう格好をほとんどしない千波はどうにも自分の姿に自信がないらしく、伏し目がちに恐る恐る尋ねる。


「うん、大丈夫だよ。似合ってる」


 可愛すぎて直視出来ず、少し視線を外して答えると、外した視線に彩陽さんが映り込み、こちらをじっと見つめてくる。その目線からは、なんでかは分からないが、本音を言えよという圧を感じる。

 何これ、ちゃんと話して一分の人に心読まれてる?


 圧に負け、つい本音が滑り落ちる。


「あと………めっちゃ可愛い」


 かなりの小声で付け足すように発されたその言葉は似合っていると言われて嬉しそうにしている千波には届かず、目の前のポニーテールの美少女の耳にだけ届いた。

 何か言われるかと思ったが、特に何もなく、代わりに意図の読めない笑顔が向けられた。

 と思ったら、やはり一言小さく口にする。


「やっぱ佑君、千波ちゃんのこと好きでしょ」


 ええええ、この子マジで何者??!!

読んでいただきありがとうございました!


彩陽は元々千波の持つ佑への恋心に薄々気づいてた上、佑も千波への恋心を持っているのではないかという疑惑を持っていたので、ここぞとばかりに仕掛けてきました。物語が動く気配がしますね。


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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