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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第二章『夏』
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56 お誘い

56話、予告通り本編再会です!

まだ夏は、終わらない。


よろしくお願いします!

 プールでのダブルデート?を終えてから少し経った。

 俺も千波も部活に出ているのでたまに会うことくらいはあるかと思っていたが、どうにもタイミングが合わないようで、あれ以来千波とは一度も顔を合わせていない。

 もっとも、あの日の帰りの電車で千波が発した寝言に心を惑わされている俺は、千波と顔を合わせた時にまともに振る舞えるかという不安を抱えていたので安心といえば安心でもある。ただ、その気持ちとは裏腹に「会いたい」という素直な欲求も抱えているのも事実なので非常に難しい。


 そんな複雑な心を引っ提げて、俺は今日も部活にやってきた。

 夏休みということで、少し夜更かしをしたせいで眠い目を擦り、欠伸を堪えて目を瞑って体育館への道を歩いていくと、肩に軽い衝撃が訪れた。前を見ずに歩いていたせいで誰かとぶつかったらしい。


「あ、すいませ……」


 謝罪をするためにしっかりと相手に向き直し、言葉を発し始めたところで俺の動きがキャンセルされる。

 向き直した先には『推し』がいた。


「うお、杏実さん?! ごめん、大丈夫?」


 止まった体を持ち直し、即座に謝って心配すると、「大丈夫だよ」と声が返ってくる。

 その言葉通り、杏実さんは体のどこかしらを痛めて抑えているといった様子は見られない。その代わり、少し恥ずかしげな表情を浮かべているように思えた。

 ………ぶつかった拍子に変なとこ触ったりしてないよな、俺……?

 と、そんな憂慮をしているうちに、杏実さんの表情はいつもの明るいものに戻り、「佑君も部活?」と尋ねられた。


 「うん、そうだよ。杏実さんはこんなとこで何してるの?」


 杏実さんからの質問に答え、俺も質問を投げ返すと、手に持っていた物を自慢げに見せてくれた。


「顧問の先生が中庭で育ててたプチトマトの収穫に来たの!いっぱい生ったから欲しい人はどうぞって言われて!」


 そう言いながら嬉しそうにプチトマトを持った手をぶんぶんと振り回している様子がとても可愛い。というか、ここのプチトマト育ててたの吹部の顧問だったのか………。

 そんな事を思っていると、杏実さんが思い出したように「そうだ!」と高い声を上げる。

 どうしたのだろうと見ていると、杏実さんが今度は普段の表情から、恋する乙女の表情に変わり、言葉を続ける。


「えっと……佑君にちょっと相談がありまして………」





「碧を花火大会に誘いたい?」


 諸々の事情を聞き終え、一応杏実さんに聞き返すと、杏実さんが慌てて声を上げる。


「しーっ!!声が大きいよ佑君っ!」

「いや、別にあんま大きい声を出したつもりもないけどね。しかも、今日テニス部無いから碧は学校に来てないしあんまり心配する必要もないと思うよ?」

「えっ、なんで今日テニス部無いって分かるの?」

「運動部は同じ場所を共有で使ったりしてるから部活の予定表も全運動部の予定が乗ってて……って今はこれはどうでもいいな」


 逸れかけた話題を軌道修正して。正しい方向に持ち直す。


「で、この間プールに行ったメンバーで花火大会に行きたいって話ね」


 しっかりと話の主題を確認すると、杏実さんが大きく頷く。


「俺はその日予定無いから大丈夫ってのは今伝えとくけど………自分で碧誘わなくていいの? 最近普通に話せるようになってきてるから出来るんじゃない?」


 俺が当然の疑問を投げかけると、杏実さんは少し困り顔になった後に答える。


「佑君の言う通りなんだけど……やっぱりお出かけに誘うのはまだハードルが………」


 なるほどね。そういうことなら今回は俺が誘っておこう。次の次に出かける時くらいには自分で誘えるようになってほしいところではあるが。


「了解。じゃあ部活終わったらメッセージ送っとくよ」


 杏実さんからの頼みを引き受けると、彼女は心の底から嬉しそうな顔を見せる。その表情がとても眩しくて。これだから、杏実さんの恋路を応援したいと思ってしまうのだ。

 なんて、感傷に浸っていると急に杏実さんが言葉を放った。


「じゃあ、私はあとで千波ちゃんに声かけとくね」

「───」

「佑君?」


 急に今の俺の悩みの種の原因となっている少女の名前が出て思わず思考が滞ってしまうと、杏実さんにかなり不思議がられた。

 あーごめん、ちょっと寝不足で、ととりあえず言い訳をすると、杏実さんは納得したような納得していないような微妙な表情を浮かべていた。


 この一件でなんとなく微妙な空気感になってしまい、会話が滞ると、杏実さんが切り出す。


「私、そろそろ部活に戻らなきゃ。碧君への連絡よろしくね!」

「うん、返信あったら連絡するよ」


 その会話を最後に、俺は体育館へ、杏実さんは音楽室へと向かい、部活に励んだ。




 部活を終え、家に帰ってシャワーを浴びると、メッセージアプリを開いて、この間のメンバーで杏実さんから花火大会に行かないかと誘われたという旨を送ったところ、すぐに既読が付き、快諾の返事が届いた。


 それをそのままスクショして杏実さんに送ると、即座に歓喜のスタンプが送られてくるのであった。

読んでいただきありがとうございました!

夏休み編二部(?)の開幕です!


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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