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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第二章『夏』
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幕間 とある少女の七月二十七日

今回はちょっと短めの幕間です!

 私───香山(かやま)彩陽(さや)は、ほとんど無目的でショッピングモールをぶらついていた。


 千波ちゃん達がダブルデートを実現できるように、と頭痛がすると偽ってプールから離脱した私は当初、これからどうしようかと頭を悩ませていた。


 とりあえず、千波ちゃん達に姿を見られると話が拗れる未来しか見えないから一旦移動。ついでに暑さも凌げるようにコンビニへ。並んでいる商品を眺めながら今後について考える。

 普通に家に帰ってゆっくりするのも良いかな、と思ったけど、友達と遊んでくると言って家を出てきたのに早々に舞い戻って、お母さんに私の交友関係を不安がられても面倒だなと考えてそれを選ぶのはやめた。それに、せっかく少し遠出したのに何もせずに戻るのは勿体無いとも思った。

 なので、スマホの地図アプリを立ち上げて近くに何かないか調べてみると、徒歩五分ほどの所に大きめのショッピングモールがあると分かったから私はそこに向かうことにした。

 ショッピングモールに向かう途中、夕方からお祭りをやる事を告知している看板を見かけた。

 お祭りか、いいなぁ。上手く時間を潰して夕方まで粘って参加したいな。

 そう思いながら着々と足を進めた。



 そして今に至る。

 時刻は午前八時半過ぎ。

 開店したばかりのショッピングモール内は、まだ閉まっている店も多くて閑散としている。

 今頃みんなは水着に着替えている頃かな、なんて考えながら歩いていると、空いている店内で一ヶ所だけ人が多く集まっている場所に辿り着いた。


 淡く光るネオンに、並べ貼られたチラシが照らされている。

 そう、ここは映画館。時間を潰すのに最も適していると言っても過言では無い場所。

 そういえば、巷で人気のアニメの劇場版が上映中らしくて、ちょっと気になってたんだよね。

 せっかくの機会だし見てみようかな。


 上映時間を確認すると、丁度三十分後ほどで始まる回があったからチケットを購入し、売店で飲み物だけ買って、私はシアターに吸い込まれた。



 二時間後、映画を見終えた私はかなりの満足感に包まれていた。流石に人気だけあった。

 登場人物の中に杏実ちゃんによく似たキャラクターがいて、なんとなく親近感を覚えたから、そのキャラクターのキーホルダーを一つ買って映画館をあとにした。



 その後は、千波ちゃんと杏実ちゃんは上手くやってるかな、という少しの不安を抱えながらカフェで昼食を取って、服屋巡りをして可愛い服を物色して………と過ごしているうちに時刻はあっという間に午後四時前。もうお祭りが始まる時間になる。

 そう気づいた私はショッピングモールを出て、もと来た道を遡った。



 お祭りの会場に着くと、最初にかき氷の屋台が目に飛び込んできた。そういえば、今日はまだおやつ食べてないな、と思い一つ注文して、食べながら祭りを巡る。

 そうしているうちにどんどん人が増え、騒がしくなっていく。

 そんな増え続ける人混みの中から、私の耳は聞き慣れた美しい声を捉えた。

 もしかして、と思いながらうっかり顔を合わせないように気を配りつつ近づいていくと、思った通り私の『推し』がいた。しかも意中の人に手を握られながら顔を真っ赤に染め上げている。


「良かった、うまくいったんだ……!」


 思わず口から言葉が漏れ出ていた。


 私が行くのをやめたせいで、会話が滞ったりした時にどうしようも出来ずに関係が悪化したらどうしようなんてネガティブな考えも頭の片隅に居座っていたけど、そんなものは消えていった。

 手を繋いでいるだけだから付き合っているのかは分からないけど、良い方に転がっていった事は分かる。


 私が勝手にやった事が良い結果を招けて良かった。

 千波ちゃん、頑張ったんだ。

 そう思いながら、私は浮かれた足を携えて無言でその場を去った。

読んでいただきありがとうございました!


以前、プールに行くのをやめた彩陽が何をしてるかと訊かれたことがあったので、このタイミングでねじ込んでみました。

今後もタイトルに『幕間』とついている時はかなりの確率で彩陽パートになると思うのでよろしくお願いします。


次回、プールダブルデート終幕(予定)!!


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 彩陽は何をしてるのかと思えば千波たちのその後を目撃することができたのか。応援するためとはいえ、ひっそりとそのまま帰ってたら悲しすぎたからね。
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