51 スイミングレッスン
最近、更新日以外の日のPVの伸びが良くて結構嬉しい!ありがとうございます!
予告通り、杏実&碧パートの51話です!
よろしくお願いします!
怪我をした千波ちゃんを背負って佑君が歩いて行ってからおよそ一分。私は碧君と二人で並んで佑君の背中を見つめている。
別れる前、佑君が私にした目配せは、きっと「碧君と二人きりになるから頑張れ」って意味だったんだと思う。
でも………急にこんな事になっても、本当にどうしようもない。碧君との距離を縮めるチャンスだって分かっているのに、緊張で口も体も全然思い通りに動かない。
しばらくの間沈黙が続いた後、碧君が口を開いた。
「これから、何しよっか」
「う、うん、そうだね。な、何しようね…?」
盛大にどもりながらも何とか受け答えをして、これからのことに思考を巡らせる。
再びの沈黙の後、心の奥の微かな勇気を振り絞って今度は私から話を切り出す。
「ねぇ、学校で水泳の授業の時に私の泳ぎのあんまり上手くいってない所、教えてくれたでしょ? でも、やっぱり自分ではよく分からないから教えてよ、碧君」
ちょっと早口になっちゃったかな……なんて心配しながら碧君の方に改めて顔を向けると、どこかホッとしたような柔らかい笑みを浮かべていた。碧君も碧君で女子と急に二人きりになったから、どうすればいいか不安だったのかもしれない。
しっかりと私の方を向き直した碧君は、その柔らかい表情のまま、「うん、いいよ」と唇を動かした。
そして、そのまま私をエスコートするかのように、ちゃんとした水泳が出来る場所(私達が水泳勝負をしたプール)に向かって歩き出した。『彼氏』という存在は当たり前のようにこんな事をしてくれるのかな、なんて考えると一気に耳が熱くなるのを感じた。
碧君が前を歩いてくれているおかげで、今の表情を見られなくて良かった、なんて思いながら碧君の背中をぱたぱたと追いかけた。
人が最も多くなっているはずのお昼過ぎの今でも、本格的な水泳用の25メートルプールは閑散としていた。流れるプールのような楽しく遊べる場所が他にたくさんあるから、ここはあまり人気が無いみたい。
到着すると、すぐに碧君が「まず、俺が正しい泳ぎを見せるからしっかりと観察してみて」と言いながらプールに入る。
プールの端を蹴り、泳ぎ始めた碧君のことをプールサイドを歩いて追いかける。しっかりと観察して、と言われたから碧君の手足の動きをじっと見つめるのも忘れない。
よく観察すると、碧君の手足は均一なリズムで大きく動いているのがよく分かった。
大きく動かす、ということは私も意識しながら泳いでいるつもりだから、私の泳ぎに勢いが出ない理由はリズムなのかな。
泳ぎ終えてプールから上がった碧君に「何となくでも、何か分かった?」と訊かれた。
それに頷くと、一度泳いでみるように促されたので入水して、力強くプールの端の蹴ってスタート。
碧君の泳ぎを見て、私はリズムが良くなかったのかな、と思ったから心の中で、一、二、一、二と唱えながら泳いでみる。でも、いつものようにゆっくりとしか泳げていない感覚があった。
とりあえずゆっくりとしたスピードのまま泳ぎ切ってみると、苦笑しながら碧君が近づいてきた。
「杏実、前にも言ったけど、やっぱりバタ足だね。そこを改善すれば変わるよ」
そんな碧君のコメントに、私は内心で首をかしげる。
前にも言われたっけ……?
言われてたとしたら、多分プールに行く約束をした時だと思うから、そっちの衝撃が強すぎて記憶に残らなかったんだと思う。
ちょっとバタ足だけやってみてよ、と碧君が言うので、プールの端を手で掴んで足だけ動かしてみる。
すると、碧君もプールの中にやってきて私の足の動きを矯正しようと手を伸ばし────── 一瞬躊躇ってから引っ込める。
私の向ける恋愛感情に全然気づかない碧君でも、女の子の足に手で直接触れるのは流石に恥じらいがあったみたい。勝手に触られる私側への配慮だったのかもしれないけど。
そんな様子の碧君を、なるべくドキッとさせれるように、恥ずかしさみたいな色んな感情を心に押し込んで、なるべく可愛い顔と声を作って碧君に囁く。
「………いいよ、触って」
言ってから、なんだかHなことをしている時に言う事みたいだと気づいて顔が真っ赤になっていくのを感じながら碧君を見ると、一瞬だけ表情が乱れていた。
けれどすぐにいつもの碧君に戻り、手で私の足を動かしながら、一つ一つ丁寧に説明をしてくれる。
「杏実は、膝から下だけが動いている典型的なバタ足の失敗例だから、しっかりと太ももから───」
碧君に足を触られ、思わず甘い声が出てしまいそうになるのを堪えながら説明を聞いていると、自分の良くない所がよく分かって、しばらくすると正しい動かし方を理解する事が出来た。
しばらく碧君に見てもらいながら練習を続けると、実際に動かして泳ぐ事までマスター出来た。今水泳のテストがあったら高評価を得られる自信がある。
碧君は人に何かを教えるのが上手い。
バタ足を教えてもらっている中で強くそう思ったから「教師とか向いてるんじゃない?」なんて言ってみると、碧君は「ガラじゃないよ」と言って笑った。
読んでいただきありがとうございました!
先日リリースされた、なろう出身最強作品「リゼロ」のスマホゲーにガッツリ拘束されております笑
更新が滞らない程度に楽しみます
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プレイヤーID543768401310、ペンネームと同じ名義でやってますので
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