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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第二章『夏』
42/160

39 そして、夏休みが始まる

夏休み突入の39話!

よろしくお願いします!

 教室の机の上に積まれた勉強用具、冊子、プリント類。そして、山の一番上に置かれたプリントに書かれている「夏休みの過ごし方について」という文字。


 そう、今日は夏休み前最後の日。前後期制のため、「終業式」という扱いにならないのがなんとなく違和感ではあるが。


 とりあえず俺達は現在、配られた課題や教室に保管していた教科書などの用具を鞄に詰める作業に追われている。クラスのほぼ全員が課題に対する文句や夏休みに何をするかなんかを話しながら作業を進める。

 それらを終えると、もう今日の学校は終了だ。先生から再度夏休み中の注意を受け、挨拶をすると俺達は自由の身となった。

 教室からクラスメイトが次々と飛び出していき、俺もそれに乗じようとしたところ、それを後ろから届いた『推し』の声に止められた。


「佑君、前に夏休みにプールに行こうって話したの覚えてる?あれについて話したいんだけどちょっと時間良いかな?」


 みんなが飛び出していくからそれに合わせていただけで、別に急いで何かしなければいけない事がある訳では無い俺は、杏実さんのその呼びかけに応じる事にした。




 ひとまずこれを最初に言い出した碧の席に俺と杏実さんで集まって話そうとしたところ、先生に教室から出ていくように促された。どうやらうちのクラスの教室は今から何かの会議で使うらしい。

 なので、とりあえず外に出たのだが、当然外は炎天下。その場で話していて熱中症になってはいけない、と俺達は近くにある小さな店に入った。


 俺達が入った店は地元ではそこそこ有名な和菓子屋。冬場は和菓子だけだが、夏になるとかき氷を取り扱うので中々人気だ。

 おやつ時ではない時間帯だったため、すんなりと席に座れた俺達はそれぞれが食べたい物を注文すると、プールの件について話し始めた。


「率直に聞くね。いつが空いてる?」


 杏実さんがそう切り出したのに対し、俺と碧はスマホのカレンダーを開いて予定を確認する。


「七月中なら結構空いてる。八月になると部活が多いから合わせるの厳しいかも」

「俺は七月も八月も活動量あんまり変わらないから佑と杏実に合わせるよ。主要な大会も無いから一日くらいなら部活は休んでも問題ないし」


 それぞれが返事をすると、今度は杏実さんが予定を確認する番。何度かスマホを横にスクロールした後に口を開く。


「じゃあ、来週の七月二十七日はどう?」


 杏実さんのその言葉に、確認のためもう一度スマホに目を落とすがその日の予定欄は見事に空白。


「「問題無いよ」」


 俺と碧が同時に返事をすると、パッと杏実さんの笑顔が弾ける。可愛い。

 と、そんな可愛い顔をした杏実さんが思い出したようにまた口を開く。


「そういえば、プールに行くのを決めた時に碧君が四、五人で行こうかって言ってたから、男女比も考えて同じクラスの友香梨ちゃんを誘おうと思うんだけどどうかな?」


 友香梨さんというと、杏実さんと仲の良いダンス部の子だよな、確か。何回か喋った事はあるから別に問題は無い。

 手でOKサインを作り、杏実さんの提案を了承しながら隣の碧に目をやると碧も俺と同じサインを作っていた。


「二人ともありがと!じゃああとで友香梨ちゃんに連絡しとくね」


 杏実さんが声を弾ませてそう言い、その後は軽く雑談をしていると注文した物が届いた。と言っても、どれもかき氷だが。

 赤、黄、緑の三色のシロップがかかったふわふわ氷のかき氷が机に並ぶと、急に視界が鮮やかになる。

 杏実さんが苺味、碧が抹茶味、俺がパイン味のかき氷を手に取り、スプーンですくって口に運ぶ。そして、口に入れたそれはあっという間に体温で溶けてしまう。


「美味しい!!」


 誰のものだったのか、もしかすると全員のものだったのかもしれない声が店に響く。そしてそのままの勢いで俺達三人は一気にかき氷を食べ尽くしてしまった。

 そのせいで全員の頭がキーンとなり、しばらく三人揃ってダウンするところまでがお約束である。





 一方その頃、これまた学校の近くのファミレス。


「えー、千波ちゃん、せっかくの夏休みなんだからどっか遊びに行こうよー。プールとかさー」


 学校帰りに寄ったファミレスで料理を待つ間に、私は目の前にいるポニーテールを携えた女の子──彩陽ちゃんに夏休み中にどこかに出かけよう、とせがまれていた。

 正直、暑い季節が苦手な私としては夏休み中はエアコンの効いた部屋でゆっくりしたいところ。でも友達がこれだけ熱烈に誘ってくれてるなら一回くらいはいってもいいかな。

 そんな考えのままに、「じゃあ、一回だけならいいよ」なんて答えたら、思った以上に彩陽ちゃんが喜んでくれたのでなんだかこっちまで嬉しくなる。

 そう思って微笑ましく彩陽ちゃんを見ていると、彩陽ちゃんから矢継ぎ早に言葉が飛んできた。


「じゃあ、暑いのが苦手な千波ちゃんでも楽しめるようにプールにしよっか!あそこなら屋内プールもあるから直射日光も避けれるし!映画とかも良いかなって思ったけどせっかく夏なんだから夏っぽい事しないとね!」


 彩陽ちゃんの勢いに思わず苦笑いしながら首を縦に振って答える。


「うん、それならいいよ。私の方に配慮してくれてありがとね」


 そんな会話を終えたところで丁度店員さんが料理を運んできてくれた。机の上にカルボナーラが二皿並ぶ。私がカルボナーラを注文したら、彩陽ちゃんも私を真似てカルボナーラを注文したのだ。


 チーズの香りに食欲を誘われ、フォークでパスタを絡め取ると口に運ぶ。う〜ん、美味しい!

 食べ進めるうちに、少し彩陽ちゃんの方を見ると、フォーク使いに苦戦しているのが見て取れて、また笑いを誘われる。

 別に私がフォークを使ってるからって彩陽ちゃんもフォークを使わなくてもいいんだよ?箸でも良いんだよ?と思ったけど、頑張ってる彩陽ちゃんの表情がとても良かったので口には出さないでおいた。


 彩陽ちゃんがカルボナーラを食べ終わるのを待って、お店を出ると暑い日差しに襲われた。それに私が顔をしかめていると、「あ、そういえば」と彩陽ちゃんが呟く。

 なんだろうと思い、そちらに耳を傾ける。


「そういえば、プールに行くって決めたけどいつ行くか決めてないな〜って思ったけど………暑いから今はやめとこっか」


 ここでも私の暑さ嫌いを気にかけてくれて、本当にありがたいな、と思いながら「またね」と彩陽ちゃんに別れを告げる。


 そして、私が自転車に乗って背中を向けたタイミングで後ろから声をかけられた。


「またね〜!今度プール行く前に水着も買いに行こうね〜!」


 水着!?あ、でも確かにスクール水着以外は中二の時に買った水着しかないから買う必要はあるんだ。サイズ合わないかもしれないし。

 どんな水着があるのかな、と考えながら私は彩陽ちゃんに手を振り、家路へと就いた。


 家に帰る途中、佑はどんな水着が好きなんだろう、なんて無意識に考えている自分に気づき、慌てたあまり、自転車事故を起こしかけたのは内緒。

読んでいただきありがとうございました!


お昼時にかき氷を食べる主人公達とちゃんとパスタを食べる想い人達。

個人的になんか好きです。


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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