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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第一章『春』
23/160

21 新聞

久しぶりに新キャラ登場の21話です!

よろしくお願いします!

「あー……眠い…」


 球技大会の翌日、俺はそう呟き、目を擦りながら高校へと登校した。

 昨日は打ち上げのカラオケについ長居してしまい、さらにその後大喜に付き合ってラーメン屋に行ったため、いつもよりも就寝時間が遅くなってしまった。ちゃんと睡眠は取らないとな。

 そう思いながら教室に入ると、それを見た杏実さんが俺の方に勢いよく駆けてくる。


「佑君、おはよう!これ見てよ!」

「あ、おはよう、杏実さん。それは……何?」


 杏実さんが手に持っているのは……数枚の紙。そこまでは分かるが、一体それが何なのか分からず、尋ねるとすぐに答えてくれる。


「新聞部が発行してる学校新聞!もう昨日の球技大会の記事が出てるんだよ!ほら、ここ見てよ!」


 うちの学校、そんな物作ってたのか。初めて知った。

 そんなことを思いつつ、テンションがやけに高い杏実さんが指を指す所を言われるがままに見て、そこを読み上げてみる。


「えーと……?『最近、北燈高校周辺で不審者が頻繁に───』」

「違う違う!そこじゃないよ!」


 わざと違うところを読んでみたら速攻で指摘されてしまった。えーと、本題は───


「『ドッヂボールでバレーレシーブ炸裂!まさかの技に会場騒然!』?」


 何この見出し。百パーセント俺のことじゃん。うわ、写真まで載ってやがる。

 新聞には、中面ではあるが、それでもでかでかと俺のことに関する記事が写真と共に載っていた。

 確かに昨日のあの瞬間は俺が会場を沸かせた感じではあったが、こんなところにまで影響が出てくるとは思わなかった。知らないうちにささやかな校内有名人になっちゃったじゃないか。


 一体誰がこんな局所的な記事を書いたんだ。そう思い、この記事のライター名を見ると、そこには見覚えのある名前が。その名前を見た瞬間、何故あんな記事が書かれたのか妙に納得がいった。あの人ならやりかねない、そんな確信があった。

 あとで一言文句を言っておかないと。胸の奥でそう誓いつつ、杏実さん達とその記事についてなど、他愛もない会話を楽しんだ。




 放課後。俺は部活が休みだったので、帰りのHR(ホームルーム)が終わるとすぐに新聞部の部室へと向かう。道中、人とすれ違うと、なんとなく周囲がざわつく気がする。絶対学校新聞の影響だろう。


 新聞部の部室の前に辿り着き、一応ノックしてから扉を開けると、中から艶っぽい声が届く。


「あらぁ?今日は何だかお客さんがよく来る日ねぇ」


 扉を開けた瞬間に響いた声に聞き覚えがあったので、即座に声を返す。


「別に俺はお客さんじゃないですね。何ならクレーマー寄りですよ、舞唯(まい)さん」


 声の主にそう返すと、相手は少し間の抜けたような声を溢す。


「あら?誰かと思えば佑じゃない」

「誰かと思えばって声だけで分かってましたよね?」


 俺がそう返すと、相手───新城(しんしろ)舞唯(まい)は女性的な起伏に富んだ体に長い黒髪を揺らして笑った。



「舞唯さん……何で俺が来たか分かってますよね?」

「うーん、分かんないなぁ」

「じゃあ丁寧に教えてあげます!この記事に対する文句を言いにきたんですよ!なんで俺なんかの記事を書いたんですか?!そしてなんで優勝チームのインタビューよりも大きく載ってるんですか?!」

「ああ、それのこと?その記事を書くことに関しては先生からの推薦があったのよぉ?」


 え、そうなの?一体誰が推薦なんかしたんだよ。

 とりあえず何で記事にされたかは納得がいったが、まだ疑問は残っている。


「じゃあ、あの記事の大きさは?あれも先生からの指示があったんですか?」

「あれはわたしの独断だよぉ?」


 やっぱりか。この人はそういう人だ。

 家が近所で、一つ歳上の舞唯さんは俺をイジれそうなことがあれば散々イジってくる。小学校、中学校と一体何度やられたか。


 そんなことを思っていると、部屋の奥から誰かが出てくる。そういえば舞唯さんが「お客さんがよく来る日だ」って言ってたっけ。そう思い出しつつそちらを向くと、思わず声が溢れる。


「え、千波?」

「え、佑?」


 そこにいたのはなんと、数枚の紙を抱えている俺の想い人であった。


「千波は何しに来たの?」

「私は………ちょっと用事が…」


 そう答える千波の目線がイマイチ合わないことになんとなく違和感を感じるが、それはあまり気に留めないようにして会話を続ける。


「俺も似たような感じかな」


 俺がそう返すと、千波が小声で俺に尋ねる。


「ところで……さっきあの人と話してたの聞こえたんだけど…仲良いの?」

「ああ、舞唯さん?仲良いって言うか……俺がイジられてるだけって言うか……。まぁ、ちょっと面倒くさい先輩だよ」

「そうなんだ。じゃあ私、ちょっと急いでるから行くね」

「あ、おっけー。またね」


 そんな会話をして、千波と別れるとすぐに舞唯さんの声が飛んでくる。


「あの子可愛かったねぇ。彼女?」

「別にそんなんじゃないですよ。普通の友達です」


 そう返しつつ、心の中で、文末に「今はまだ」と唱える。


「俺の用事はあの記事に対するクレームだけだったので俺も帰りますね。今後は新聞使って俺をイジるのはやめてください」


 部室を出る前にそう念押しをすると、中から「はぁい」と気の抜けた返事が返ってくる。これは俺が何かしらの話題を作ると絶対またやられるやつだ。そう確信して、ため息をつきながら新聞部の部室を後にした。




 新聞部の部室を出て、佑と別れた千波はやや不機嫌であった。


(全く、何が「イジられてるだけ」よ。そういうのを仲がいいって言うんでしょ)


 本当に佑には困ってしまう。杏実さんという小柄で可愛い子と仲が良いかと思えば、さっきの新聞部の人みたいな女性としての魅力がある人とも仲が良い。

 特に、さっきの新聞部の人なんかは話し方と身体つきが相まって非常に妖艶な雰囲気を醸し出していた。


(佑もああいう人が好きなのかな)


 そんなことを思いながら、手の中の紙束を───佑と会った時に、本人にバレないか心配で抱えていた、佑が大きく写った学校新聞の束を、より強く抱きしめて廊下を駆けていった。

読んでいただきありがとうございました!


少しご報告が!前回の更新の日に、MF文庫Jより「この恋、おくちにあいますか?」を出版されている優汰さんが「ラブコメ小説」の募集して、読んでから感想と共に宣伝ポストをしてくださるという企画を行っていたため参加したところ、その日のうちに読んで頂け、宣伝までして頂けた結果、なんと一日のPV数の新記録124PVを記録することができました!初の三桁PVですよ!さらにブックマークも二件頂けました!

改めて、書籍化作家さんの影響力の強さを感じましたね。ありがたい!

優汰さんの「この恋おくちにあいますか?」もタイトルからわかる通りラブコメなので、拙作「推しの恋路応援前線!」を読んでくださっている方には間違いなく刺さると思うので、ぜひ読んでみてくださいね!


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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