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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第一章『春』
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1 出会い

初投稿作品です!

読んで頂けると嬉しいです!

 春風の吹く体育館──微かな話し声──入学式開始10分前。

 そして、体育館の端の最後方に黙って座っている、同年代と比べて僅かに小柄な男子生徒──俺、与田佑( よだ たすく)

 俺は今日からここ、北燈高校に入学する。


 苗字が与田なもんだから名簿番号はクラスの1番最後、そして何の因果か全9クラス中の9クラス目になってしまったので、学年で最後の男というわけだ。

 そんなわけで俺は体育館の端の最後方で同じ中学から進学した想い人(恋愛ヘタレなせいで中学の内に告れなかった)を遠目から探していたわけだが、その静寂は唐突に後ろからかけられた、透き通っていて、それでいて活発さも感じられる声によって破られた。


「ねぇ、1年9組の列ってここだよね?」


 そう声をかけられて振り向いた先にいたのは、茶色っぽい髪をボブカットにした少し小柄な少女。

 振り向いて目が合った瞬間、(あ、可愛い…)と思い、少したじろぎつつどうにか平静を保ち、


「うん、そうだよ、ここ9組」


と答えると目の前の少女は安堵の表情を浮かべ、

「だよね!あ〜良かった、合ってた!ありがと!あ、私、三柴杏実(みつしば あみ )。よろしく!」

と言い、俺の少し前の席に駆けていった。


(……あの可愛い子同じクラスなのか、初対面でああやって話しかけてこれるなんて、しっかりした子だな)

 そんな風に、あの子の事を考えている内に入学式が終わった。




 入学式後、教室に入ると先生からの話があり、それが終わると自己紹介が始まった。

 クラスメートが淡々と自己紹介をしていく中、ふと目に入ったのは入学式前に俺に話しかけてきた三柴さんーーのド緊張している姿。


 あれ?さっき俺に話しかけてきた時はあんな感じじゃなかったよな。大勢の前だと緊張するのかな。


 なんて考えている内に気づくと三柴さんの番。

 前の子が話し終えてから一呼吸置くと少し声を張って話し始めた。


「ひ、東中学校から来ました、三柴杏実です!好きな事は誕生日を祝う事、目標はクラスのみんなと仲良くなる事です!」


入学式の前に聴いた時にも思ったけど、やっぱり綺麗な声してるな、この子。なんて考えていると三柴さんの自己紹介も締めに入る。


「1年間、よろしくおねぎゃ………!」


あ、噛んだ……


 教室はささやかな笑い声に包まれ、三柴さんは顔を真っ赤にしながら下を向いた。


うん、ありゃ恥ずかしいわ。俺なら悶死するね。それにしてもあの照れ顔可愛いな。


 そして、少したってから三柴さんはさっきよりも少し小さな声で


「よろしくお願いします…」

と言い、席に座った。


 その後に俺の番が回ってきたが特別何をするでもなく、つつがなく自己紹介を終えた。(もちろん噛んだりはしなかった)




 そして、今は休憩時間。俺は初日からガツガツ話しかけまくるタイプではないのでぼんやりと教室を眺めていたのだが、どうにも三柴さんに視線が惹きつけられる。今は近くの子と談笑しているが、さっきまでは少し離れた席の子と話していたし、自己紹介の時は緊張していたけどコミュ力自体は高いのが見て取れる。あと、所作が一々可愛い。


 それにしても、なんか三柴さんを見てると『可愛い』って思考によく至るな…。でも俺は好きな子が既にいるし、その子ほどは惹きつけられてはいない(はず)なので、恋愛感情ではないと思う。ん〜、何なんだろうこの感情……?


そう悩んでいると、近くで話していた男子の会話が聞こえてきた。


「え、君もこのゲームやってるの?どれくらいやり込んでる?どのキャラが推し?」

「えっと、始めてからまだ日が浅いからそこまでやりこんではないよ。推しは…水属性のこの子かな。」


 その会話からさっきまでの悩みの答えを見つけた。

 『推し』…になるのか?俺が三柴さんに向けている感情は。でも、恋愛感情ではないけど、普通の人よりも明らかに好意をあの子に向けている自覚がある。じゃあ『推し』ってことにしてみるか、これ以上考えてもこれ以外の答え多分出ないし。

 そんな風に考えていると、歩いていた三柴さんが何もない所でつまづいてわたわたしているのを目撃してしまった。

 うーん、可愛い。やっぱりこれは『推し』に向ける感情な気がするな、うん。



高校生活1日目 友達ができる前に『推し』ができた。

読んで頂き、ありがとうございました!

感想等あれば頂けると幸いです。

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