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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第四章『冬』
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128 暗雲

なんで前話を更新した時の俺は二分割にしなかったんだ。二分割にしていれば今日こうやって急いで書き上げる必要もなかったのに……と自分に文句を言いつつ更新です。

 千波と杏実さんの卓球の試合に劇的な決着がついてからしばらく。

 昼休みとなったので、俺達は一旦教室に戻り、昼食を摂りながらさっきの試合の感想を口々に言い合っていた。


「まさか千波ちゃんがあんな技が使えるなんて……! 味方ながらびっくりしちゃったよ」


 弁当箱の中からウインナーをつまみながら彩陽さんが言うと、嬉しそうに千波が口を開く。


「ふふ、驚いたでしょ。この間佑に教えてもらったんだよ」

「教えたっていうか、見せただけだけどな? やたらとせがまれたから何回か見せたけど、まさか試合で使う気だったとは。しかも完璧って言っても差し支えないクオリティだったし」


 流れの中で俺が千波を褒めると、千波は少し照れているのか、俺から目を逸らしながら弁当箱に手を伸ばす。


 そして俺達がそんな会話を繰り広げている裏では、碧と杏実さんが仲睦まじくお互いのおかずを交換したりしている。

 球技大会中なので普段の教室ではなく適当な空き教室で昼食を摂っているため、所構わずいちゃつく二人に対して羨望の眼差しや鋭い視線が送られているが、大して気にも留めていないようだ。

 まあそんな事を言っている俺自身も、一緒に教室に来たメンバーから碧と杏実さんが実質抜けたような形になって千波と彩陽さんの美少女二人と机を囲んでいるので、多少なりちくちくと視線が刺さっているが。


 周りを気にしても仕方がないと割り切り、弁当を食べ進めていると、隣の千波から肩をつつかれる。


「ねえ、佑の試合っていつからなの?」

「えっ………と、昼休みが終わってすぐ、だったはず」


 突然のボディータッチに焦る気持ちを抑えながら千波の質問に答えると、途端に千波の目が輝きを増す。


「やった! そこなら私達の試合無いから見にいける!」


 千波の喜びの声を聞き、ちゃんと約束通りに俺の試合も見に来てくれるつもりらしいことを喜ばしく思って顔を綻ばせていると、対照的に彩陽さんの表情が曇る。

 すぐに千波もそれに気づいたようで、何かあったのか、と心配そうに声をかける。


「彩陽ちゃん……? 何かあった?」

「うーん、ちょっと面倒くさい事になったなって。今佑君から試合の時間聞いて気づいたんだけど、次のサッカーの試合───準決勝の対戦カードが、うちのクラスと佑君のクラスみたいなんだよね」

「ええっ!」


 千波が驚きの声を上げると、彩陽さんはほら、とスマホを見せる。

 そこには、友達から送ってもらったらしいサッカーの試合結果と予選リーグの順位、そしてそれに基づいて作られた決勝トーナメントの対戦カードが書かれた紙が映っていた。

 そして、準決勝の第一試合の欄にはっきりと「二組対九組」と書かれている。


「これだと試合を見るだけならめっちゃ自然だけど、佑君の応援をするのは少し厳しくなっちゃうね」

「で、でもさっき私達の卓球の試合も二組対九組だったけど、佑は私のこと応援してくれたし……」

「うーん、確かにそうだけど……負けても次がある総当たり戦と負けたら終わりのトーナメントだと少し事情が……」


 そうして難しい顔をしながら話す二人を見て、俺はパッと口を挟む。


「いや、応援してくれるつもりなのはありがたいけど、見に来てくれるだけで嬉しいから大丈夫だよ。下手に対戦相手の俺の応援をして千波がクラスの子から疎まれても困るし」


 本音だけで言えば千波の応援を背に受けながら活躍をしたいという思いはあるが、それを優先して千波に残り僅かな高校一年生生活を辛い思いをしながら過ごさせる訳にはいかない。

 そんな思いを込めて千波に伝えると、若干不満そうにしながらもゆっくりと頷いてくれた。


「でもその代わりに試合終わったら、どのプレーが良かった〜とか言わせてね」

「お、おう」


 行事だからか、いつもよりも分かりやすく好意が漏れている千波の言動に一瞬たじろぐと、昼休み終了五分前を告げる予鈴が鳴った。

 やば、弁当ちょっと残ってる、と慌てて掻き込んでから弁当箱をしまっていると、背後から「クラスの男子にそこまで仲良い人いないから佑を応援したかったな……」という呟きが聞こえ、恋のライバルになりうる人物はいないようだ、なんて少し喜んでしまった自分が少し情けなかった。







 昼休みが明け、グラウンドに出るとすぐに俺達の試合のアナウンスがされたのでやや急ぎ足で指定された場所に向かうと、すでに大喜達は到着していた。

 そこに俺と碧が合流すると、どうやら俺達が最後だったようですぐに円陣が組まれて大喜がチームを鼓舞する。


「午前の予選リーグは全勝で、一位突破。正直言って最高だ! このままあと二つ勝って、優勝するぞ!」

「「おぉ〜〜〜!!!!」」


 円陣を終えてポジションに着くと、やや遅れぎみに二組も円陣を組む。

 それを待っている間に少し辺りを見渡すと、応援席の手前に杏実さんと友香梨さんが並んで手を振っているのが見えた。そして、そこから少し離れた位置に千波と彩陽さんの姿も。

 千波から直接の応援は受けれないけど、少しでもいいとこ見せたいな。

 そう思っているうちに二組もしっかりとポジションに着き、審判の笛が高らかに響く。

 試合が始まった。


 

 試合が始まると、すぐさま俺にチャンスが訪れる。

 相手のキックミスを拾った白井が拙いドリブルで前進。俺は一気にスピードを上げてそれを追いかけると、気づいてくれた白井が俺に横パス。

 受け取ったボールを少し遠い間合いからシュートを打つと、かなり良いコースに飛んだのだが不運にもゴールポストに直撃、ゴールとはならない。


 ちら、と二組側の観客席を見ると、周りの人達が「危なかったー」と少しビビった感じで口々に交わしている中、一人だけ「惜しいー」といった感じで悔しそうにした後に慌てて棒読みで「危なかったー」と言う影が見え、思わず苦笑してしまう。


 しかし、そんな風に少し気が緩んでしまったのか、直後に事は起こる。


 相手の攻撃を碧が止めたのを確認した俺は、速攻に転じようと相手コートに向かってスプリントする。

 が、アイコンタクトを怠ったせいで碧と意思が合わず、碧は俺がいると思って緩いパスを前方に送る。

 鋭いパスを期待して飛び出していた俺は緩いパスには全く触れられず、相手にボールを掻っ攫われると相手の速攻が発動。

 やらかした、と自身の怠慢を罵りつつ懸命に相手を追うが、止められるはずもなく、あっさりとゴールネットを揺らされてしまった。

読んでいただきありがとうございました!


『想い人』の観戦を前に、空回り、失点。

さぁ、どうするか。


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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