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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第四章『冬』
141/160

121 好きと苦手と 前編

一話書き切ったら思ったより長くなったので半分で切りました!

その結果いつもよりも低ボリュームですが、よろしくお願いします!

 サッカー、か。


 球技大会の種目を確認し、そのスポーツが今回の種目に含まれていると知った俺は複雑な心境で自分の席に戻り、どの種目に出場するかを考え込む。

 そうしていると、教室の中央付近で友人達と騒いでいた大喜が急に俺の方にやってきて声をかけた。


「佑は何に出るか決めたか? やっぱ卓球部は卓球か?」


 このタイミングで声をかけてくるということは球技大会関連だろうと予想していたが、それが見事に当たった。

 俺は大喜の質問から一拍置き、考えをしっかり整理してから答える。


「いや、卓球は無いかな……。初心者と当たって無双してもつまらないし」

「おっ、そうなのか。まだ決まってないなら、俺達とサッカーしないか?」


 まだ種目を決めていない旨を伝えると、食いついたように俺を勧誘し、言葉を続ける。


「一番盛り上がりそうな種目だから出たいよなって話してたんだが、生憎とちゃんとルールとか戦術とか分かる奴がいなくてさ。その点、佑はよくサッカー観てるらしいから問題ないだろ? そんなわけで、ぜひ俺らのサッカーのメンバーに加わってほしいんだ」


「いや、俺は…………」


 大喜の熱烈な勧誘を受け、迷っている俺は思わず口ごもる。


 確かに、俺はサッカーが好きだ。

 サッカー好きの父親の英才教育を受けて幼い頃からよく試合を観に行き、盛り上がり、憧れを持った。

 だから、サッカーの楽しさは嫌というほど知っているし、だからこそこの仲の良いメンバーでサッカーを楽しみたいという気持ちはもちろん胸に秘めている。

 だが、俺の胸には同時にその気持ちを邪魔する、トラウマとも呼べるような苦い思い出も眠っているのだ。


 ピッチを駆け巡る選手の姿に憧れた俺が自分もプレーしてみたいと思うのは必然で、学生時代は全国を目指してサッカーをしていた父親は大喜びで俺をサッカー教室の体験会に連れて行ったのだが…………その結果が散々すぎた。


 プロ選手のように軽々とボールを扱うことができないのは当然ながら、俺と同じように体験で来ている他の子ができている簡単なポールタッチすらままならず、挙げ句の果てに俺よりも数週間先に始めた同い年の子を交えたミニゲームでコテンパンにされた。

 当時は今よりもずっと運動神経が同年代に比べて悪かったという一因もあっての出来事だったものの、幼い俺の心を叩き折るには十分だった。


 以来、俺は自分でプレーするのを完全に諦め、サッカーは俺にとって『観る』だけのスポーツになった。

 稀に学校の体育でやることはあったものの、大して運動能力が成長していなかった俺が以前の不甲斐なさを払拭できるだけのプレーをできるはずもなく、苦い思い出だけが残ったまま成長してきてしまった。


 そんな思い出によって、今回もあの頃と同じように酷いプレーを連発してクラスのみんなに迷惑をかけることになるかもしれないという恐怖が生み出され、「やってみたい」という気持ちを抑えつけてしまっていた。

 だから、大喜の誘いはありがたかったけど断ろうと思っていた。けれど、中三から高一の終わりの現在までの一度もサッカーをしていない時期に不思議と運動能力が発達して、クラス全体で見ても割と平凡なところにまでやってきたという事実が俺に一縷の期待感を残してしまっている。


「少し、考えさせてほしい」


 結局、期待感と恐怖の均衡が崩れそうにないと感じた俺は一度大喜に時間を貰い、じっくりと考えることにした。


読んでいただきありがとうございました!


続きはまた来週の平日のどこかで更新するのでお願いします!


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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