109 罰と電話
自分の作ったプロットほぼ全無視の109話!
よろしくお願いします!
新年早々、親からこってり絞られた。
理由は明白、初詣に出かけたまま神社のベンチでガッツリ寝てしまい、そこで一夜を明かしてしまった。その結果、家族をとても心配させる事となってしまったからだ。
さらに、女の子である千波まで巻き込んだ事が両親の怒りを増幅させていた。本当の所は千波がベンチで居眠りをしたのを見守ったまま俺も眠ってしまったという、ある意味俺が巻き込まれた側のようなものだが、そんな言い訳が通用するはずも無いし、そもそも言い訳をする気も無い。悪いのはその場で千波をおぶって帰るという選択肢を取れなかった俺だ。
両親は帰ってこない俺が何か事件にでも巻き込まれたのでは無いかとかなり不安に思ったようで、もう少し俺の帰りが遅ければ警察にも相談に行っていたと言う。
それだけの心配をかけていたのだと両親は怒り心頭で、俺は冬休みも真っ只中というにも関わらず、外出禁止を言い渡される事となった。おかげで冬休みの課題を進めるという名目で千波を誘って図書館にでも出かけてやろうと密かに企んでいた計画がパーである。まあ俺が悪いのは明らかなので罰は甘んじて受け入れるが。
そんなわけで俺は大人しくテレビで駅伝や高校サッカーの全国大会を見たり、真面目に課題や自主学習に取り組んだ。
また、罰は冬休み中の外出禁止のみでスマホ没収なんかは課されなかったので適度にゲームなんかを楽しめたのはせめてもの救いだ。
とはいえ、これまで少なくとも週に二、三度、長期休暇に入ってからも週に一度程度はは顔を合わせていた『想い人』に会えなくなるというのは思ったよりも俺の精神にダメージを与えた。恐らく千波に会う事でしか摂取できない何らかの成分があるに違いない。
と、そんな空想を浮かべながら、早く冬休みは終わらないだろうかとこの世の大半の学生を敵に回すような事を考えながら過ごしていると、机に置いていたスマホから着信音が響いた。ホーム画面を確認すると、有名テーマパークの外観のアイコン───千波からのメッセージ通知。慌てて画面をタップすると、たった一言『今電話できる?』とだけ表示される。
たった一言、されど俺を硬直させるには十分すぎる破壊力を秘めている。
(え…………は? 電話? 千波が、俺に?)
混乱が頭の中を駆け巡る中、千波からのメッセージに既読を付けてしまったという事実に気づき、早く返信せねばと震える手で「大丈夫」と返す。するとすぐに既読が付き、返事の代わりに電話がかかってくる。
意を決して電話を取ると、俺が心から求めていた愛しい声が鼓膜を打つ。
『ごめんね、急に。直接言いたい事があって』
「い、いや、大丈夫。……暇してたし」
『そっか、ありがと。じゃあ遠慮なく…………ごめん、佑! 私が神社で寝ちゃったせいで怒られたって……』
ああ、そういえば俺が自室で勉強してる時に「杉山さんの家にも謝りに行かなきゃ」とか親が話してたような気がする。本当に実行して、それで俺の現状が千波にも伝わったって解釈でいいのか?
「その事なら大丈夫だよ。千波が気に病む必要無い」
『でも……そのせいで佑は外出禁止だって聞いて』
「まあ仕方ないよ。千波が寝たのに釣られて俺まで寝ちゃったのは明らかに俺に非がある。寝た千波をおぶってでも家に送り届けるべきだった」
『おぶっ…………! ……………いや、でもやっぱ佑は悪くないよ』
少し慌てたような声が聞こえた後に少しの空白を経てから、あくまでも俺を擁護する言葉が続く。
「そう言ってくれるだけでも嬉しいよ。俺の親の言い分も尤もだし、これでいい」
『う………でも……。申し訳ないから冬休み明けになんかお詫びさせて』
「いやいや、別に──」
『私がしたいだけだからっ』
やんわりと千波の提案を断ろうとすると、俺の言葉を遮って千波が言い切る。そういえば千波は見かけによらず一度言い出した事は貫き通すちょっと頑固な所もあったっけ、と思い出して千波の提案を飲む事にした。
『言いかったのはそれだけ。本当は外出禁止なんて止めてもらいたかったけど、佑のお母さん達が言ってる事も分かるし諦めるよ。……じゃあ、冬休み明け、楽しみにしてて』
「分かった。……わざわざありがと。楽しみにしてる」
それを最後に電話は切れ、スマホはまた静かになる。
それにしても、千波はやっぱり優しいな。わざわざ電話してくれるなんて。おかげで千波不足も解消された。こんな事絶対に千波に言えやしないが。
それから一週間弱。
待ち侘びた冬休みの終わりがやってきて、またいつもの学生生活が始まる。
流石にクラスが違うのでいきなり千波には会う事は無かったが、数週間ぶりに杏実さんや碧といったいつものメンバーとは顔を合わす事ができた。
どうやら碧は冬休み終盤にスキーに行っていたらしく、お土産にスキー板の形のクッキーをくれた。
冬休み明け初日は課題の提出をして先生からありがたいお言葉をもらったら午前で帰宅。
碧のスキー話を聞きながら駐輪場に向かうと、なんとなく鼻先に冷たいものが当たった感触があり、思わず顔を上げる。
すると、天からはらはらと白い物が降り注いできているのが見え、思わず声を溢すと、俺と同じように空を見上げた碧と声が重なる。
「「え…………雪?」」
読んでいただきありがとうございました!
『推しの恋路応援前線!』豆知識(さっき作った設定)
各キャラのSNSアイコン
佑・・・・祖父の家の猫
碧・・・・テニスラケット
杏実・・・桜
千波・・・好きなテーマパークの夜の外観
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