103 ドタバタクリスマスパーティー 前編
前話でイブの千波ターンが終わり、今話はクリスマス当日!杏実側です!
最近1話あたりが長めだった反動で今話は少し短めです。
千波からクリスマスプレゼントを貰った。
もしかしたら貰えるかもしれない、くらいは考えていたけど、実際に貰えるとやはり嬉しいものだ。
もちろん、幼馴染として、友人としてのプレゼントであるとは思うが、ああして少し躊躇いがちに話しかけて渡されると「もしかすると俺のこと……」なんて淡い期待を感じてしまう。
千波の家から帰ってからそんな事ばかり考えているうちに気づけば日付が変わり、クリスマス当日になっていた。
昼には今度は杏実さん達とクリスマスパーティーをする予定があるから早く寝ないと。
そう考えてそそくさとベッドに寝転がり、頭から布団を被ってみたが、千波と過ごした思い出による興奮が収まりきらず、中々寝付けなかった。
翌朝、いつもより少し遅く目を覚ました俺は軽く朝食を摂ると、早々に出かける準備を始めた。
愛用しているショルダーバッグに丁寧なラッピングが施された包みをそっと入れる。そしてそれをうっかり忘れたりしないように玄関に置いておく。
これでとりあえず持ち物はオーケー。次は服装───と言いたい所だが、昨日千波の家に出かける服装を選んだ時に一緒に決めていたので問題無し。一応袖を通してから鏡で確認したが、昨日見た通りある程度様になっていた。よし、これで準備完了。
時計を見ると、まだ十時半を少し過ぎた頃。集合は十一時半となっていて、杏実さんの家までは約三十分で到着するので出発には少し早い。が、杏実さんの家はまだ一度しか訪れた事は無いから迷う可能性もあるし、少し休憩してから出発しようなんて考えてうっかり寝過ごしたりすれば大惨事だ。少し早くても出発しておこう。
俺は一度玄関に置いたショルダーバッグを肩にかけ、杏実さんの家を目指してペダルを漕ぎ始めた。
ペダルを漕ぎ始めてから三十分。見覚えのある一軒家が見えてきた。どうやら当初の所要時間予想は当たっていたようだ。
集合の十五分前となると流石にまだ誰も来ていない。時間になるまで適当に時間を潰そう、と俺はスマホに視線を落としながら一度大きな欠伸をすると、「眠そうだな、佑」とどこからともなく声が聞こえた。
キョロキョロと辺りを見渡すと自転車を押してこちらに向かってくる碧の姿があった。
もろに睡眠不足を指摘された俺は苦笑しながら「まぁな」とだけ返す。
まだ集合時間までは少しあったためしばらく談笑をしていると、碧の視線が俺の手元を捉えて固まる。
「佑、どうしたんだその手袋。ずいぶん良いやつじゃないか」
「…………別にただ買っただけだよ。前のやつ古かったから」
「なんか怪しい間あったな。多分今の嘘だろ。……本当は?」
「……なんで分かんだよ。…………昨日貰ったんだよ。千波から」
「へぇぇ〜〜〜」
「そのニヤニヤした目をやめろ」
どういう訳か、俺が千波に好意を向けていることを薄々勘付いているらしい碧は、俺がクリスマスイブに千波と会っていたと知って揶揄うような視線をひたすらに向けてくる。軽く追及してやろうかといったテンションで近づいてくる碧から後退りして逃げ回っていると、後からやってきた直紀と舜太から「何やってんだ」と不思議そうな目で見られた。
俺が一向に話そうとしないのと、残りの二人が来たことで碧が諦めてその場に立ち止まるのを確認してホッと息を吐き、腕時計に目をやると時刻はあと数十秒で集合の十一時半になる所だった。男子はこれで全員揃っているが、他に女子が何人か来るらしいのに見当たらない。集合時間が違うのだろうか。
とりあえず「そろそろ時間になるし、インターホン鳴らすか?」と碧達に向き直って提案しようとすると、ガチャリと扉が開く音がした。パッと振り向いて音がした方に目を向けると、そこにいたのは赤色のサンタ帽の付いたカチューシャを頭に乗せた美少女。なんかデジャブを感じる。昨日も同じような体験をした記憶が……。
しかし昨日と決定的に違うのは、サンタ帽カチューシャを付けていても違和感がなく、かつ派手すぎない服を選んでいた千波に対して杏実さんは赤と白の二色で構成されたもこもこの服とスカートを選び、ガチサンタコスになっていること。
完全にクリスマスを満喫する気満々のその姿と、その圧倒的なビジュアルの強さを見て少なからず衝撃を受けている俺達を見た杏実さんは、完璧にウインクを決めながら
「メリ〜クリスマスっ!」
と満面の笑みと共に言うのだった。
読んでいただきありがとうございました!
千波の方でちゃんとラブコメしたので杏実の方ではもっとカジュアルにクリスマスを楽しませようと思います!
読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!




