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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第四章『冬』
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98 お見舞いと付箋メモ 後編

後編、杏実パートです!

よろしくお願いします!

 うぅ、頭が痛い…………。


 激しい頭痛に襲われた私は、その痛みに無理矢理意識を覚醒させられる。とは言っても、全身に広がる倦怠感のせいで体を起こすことなんかできず、ぼんやりとした世界が見えるだけ。


(ここ、どこ……?)


 痛む頭は全く機能せず、今自分がどこにいるかも分からない。ただ、体が横になっている感覚と頭の下の柔らかな感触からどこかしらに寝かされているらしいということだけは分かった。近くで誰かが話しているような気がするが、聞き取れない。


 酷い頭痛のせいで眠れず、かと言って動くこともできない私はただただぼうっと天井を眺めるだけ。

 そうしているうちに倦怠感が色濃くなり、頭痛もより激しくなる。結果、私はさっきとは対照的にあまりの痛みに意識を刈り取られた。

 意識が消える瞬間、誰かが手を握っているような気がしたが、誰が握ってくれていたのか、そもそも本当に誰かが握ってくれていたのかも分からないまま私の意識は闇に吸い込まれていった。




 次に目が覚めた場所はよく見知った場所───私の部屋のベッドの上だった。───ってあれ?なんで私、こんなところにいるんだろう。今日は学校行ってたはず…………あ、そうだ。私、体調崩して早退したんだ。

 と、そこまでは思い出せたけど、そこに至るまでに何があったのかが思い出せない。

 まあ体調悪い時は頭が回ってないから仕方がないか、と割り切って一旦思い出す作業を中断する。


 私が寝ている間にお母さんが薬でも飲ましてくれたのか、目覚める前よりも体はかなり楽になっていた。頭痛などの不調感は残っているけど、辛すぎるという程ではなかった。

 試しに一度体を起こそうと力を込めると、すんなりと体が持ち上がった。うん、やっぱり体調は良くなっている。

 胸を撫で下ろしていると、ふと部屋の中から何かの気配を感じた。慌てて周りを見渡すが、当然誰もいない。

 と、そこで机の上に普段の私の部屋には置いていないものが見えた。


「なんだろ、あれ………。飲み物と……ゼリー?」


 独り言を呟き、回復に向かっているとはいえまだ本調子とは言い難い体を動かして机に近づくと、二本のペットボトルの飲み物のそれぞれに一枚ずつ紙が貼り付けてあることに気がついた。


『無理しないでしっかり体を休めてね。杏実さんが元気に戻ってくるの待ってるよ。 佑』


『とにかく今は休む時。元気になってまた杏実の素敵な笑顔を見せてね。 碧』


(え、佑君と…………碧君? え、なんで……)


 さっき目覚める前がめっちゃ辛かった、ということ以外覚えていないせいで、どうしてここに佑君と碧君からのメッセージがあるのか検討が付かず混乱していると、私が起きたことに気づいたお母さんが私の部屋にやってきて、私の体調を案じるのと同時に少し説明してくれた。


「あんた、体調悪すぎて廊下で倒れかけたらしいよ。そこを、その佑君と碧君って子が保健室まで運んでくれたんだって。で、そこに置いてある飲み物とかは、学校が終わった後にその子達が持ってきてくれたんだよ」


 体温計持ってくるから熱測りな、と言って一旦私の部屋からお母さんが退出する。


(そうか……私、碧君達に助けられたんだ)


 お母さんの話を聞いてそれに気づくと、連鎖的に記憶が蘇りだす。

 朝から体調悪かったのに無理して学校に行った事。

 結局移動教室の時に力尽きた事。

 そこを佑君と碧君に見つけてもらって、ほとんど意識を飛ばしながら碧君にもたれかかって保健室に行った事。


 そこまで思い出すと、最初に頭痛で目が覚めた時は私は保健室にいたのだということに気づいた。

 すると、あの時は聞き取れなかった、いや、頭痛のせいで認識できなかった何かが言葉となって頭の中に蘇った。


『碧、杏実さんの手を握ってあげてくれないか。人は手を握られてると落ち着くものらしい。俺はその間に保健室の先生に経緯を話しておくから』

『了解』


 会話が蘇ると同時に、あの時感じたような気がした温かみも蘇った。


(手、握っててくれたの碧君だったんだ)


 今度、ちゃんとお礼を言わないと。そう思いながら何の気なしに掌に視線を向ける──────あれ?

 もしかしなくても、この掌と、碧君の掌が、直に触れ合っていた?


 その事実に気づいてしまった瞬間、私の顔は火が灯ったように赤くなるのを感じた。


(わぁぁ〜〜〜〜!…………っ、絶対熱のせいで手汗とか凄かったと思うのに〜〜!)


 内心で大騒ぎしていると、お母さんが体温計を持って戻ってくる気配を感じ、咄嗟に布団を被って真っ赤になった顔を隠した。


 布団の中から片腕だけ出し、何やってるんだ、と呆れるお母さんから受け取った体温計で体温を測ると、三十八度を軽く超えていた。


 体温計をお母さんに見せると、まだ熱があるね、寝てなさい、と言って部屋から退出しようとする。体温がそこまで高く出たのはほぼ間違いなく碧君に手を握られていた事を意識したせいで、実際の体温はかなり下がってきていると分かっていたけれどそんな事言えるはずもなく、おとなしくベッドに寝転がっておくことにした。



 運が良いことに私が体調を崩したのは金曜日だったので、土日でしっかり休んだ私は月曜日には全快して元気に登校。

 教室に入ると、碧君を筆頭にいろんな人から心配の声をかけられるのだった。

読んでいただきありがとうございました!


ありがたいことに、この100話目前のタイミングで総合評価ポイントが3桁に乗りました! 手厚い応援ありがとうございます! いやぁ、やっぱPVがたくさん出るよりもポイント入れてもらった時の方が嬉しい! これからも精進して参りますのでよろしくお願いします!


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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