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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第四章『冬』
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97 お見舞いと付箋メモ 前編

お見舞い(?)回の97話!

お願いします!

 杏実さんが体調不良で早退してから数時間。

 本日最後の授業である古典を終え、荷物を片付けて帰り支度をしていると、珍しく碧の方から俺の席に話しかけにやってきた。


「佑、杏実さんのお見舞いに行かない?」


 真っ直ぐと俺の方を見て放ったその一言に、色んな人と仲良くしながらもあまり深くは関わろうとしない碧にしては珍しい発言だと少し驚きながら俺は言葉を返す。


「確かにかなり辛そうだったから心配だよな。うん、俺も付き合うよ……って言いたいところなんだけど、俺あの子の家知らないんだよね。碧が知ってるなら大丈夫なんだけど」


「ああ、それなら安心して。前に趣味のランニングで少し遠くに走りに行った場所がたまたま杏実さんの家の近くで、杏実さんとばったり会った流れで家も知ったんだよ」


 そう言いながら、碧は帰り支度のために一旦自分の席に戻る。俺の知らない所でそんな出来事が起こっていたのかとこれまた少し驚きながらリュックに荷物を詰める。

 授業で使った教材をすぐにリュックに仕舞わずに机の中に一旦放置している俺と違って、使った教材をその都度きちんと仕舞っている碧はすぐに荷物をまとめ終えたようで、自分の席に戻ってからそう経たずに俺の所に帰ってきた。慌てて俺も荷物をまとめ終えると、碧と並んで教室を後にした。



 自転車に乗り、学校を出てまず最初に向かったのは学校のすぐ近くにあるスーパー。

 店内に入るとすぐに飲み物を売っているエリアに向かう。


「スポーツドリンクとかが良いんだっけ?」

「そうだね。風邪の時は結構汗掻くから」


 碧の問いに答えると、碧は店頭に並んでいる何種類かのスポーツドリンクを手に取り、じっくり吟味した後に手に持っていたカゴにスポーツドリンクを二本放り込んだ。

 その間に俺はお菓子を売っているエリアに足を運び、大袋に小さいゼリーが沢山入っているものを取り、碧の持つカゴに入れた。体調が悪い時はこういう噛まずにすっと食べれるものを意外と重宝するのだ。


 併設している小さめの薬局を目にして、薬も買って行った方がいいかな、なんて呟く碧を、その辺はちゃんと杏実さんが病院で貰っているはずだから大丈夫だろう、と諭してスポーツドリンクとゼリーだけを購入した。もちろん割り勘である。


 その後は碧の先導に従い、真っ直ぐに杏実さんの家を目指した。十分ほど自転車を漕いでいくと、碧が足を緩める。


「確かこの辺だったよな…………あ、あった」


 碧が自転車を降りたので俺もそれに続くと、目の前に「三柴」と書かれたプレートがあった。ここが杏実さんの家か。

 俺が家を眺めているうちに碧が早速インターホンを押そうとしていたので、一旦制止して声をかける。


「家に上がる気は無いよな?」

「まあ風邪がうつる可能性あるし、これ渡すだけのつもり」

「なら良かった。女の子は風邪の時は片付けてない部屋を見られたくないし、片付ける余裕も無いから家に他人を上げたくないらしいって前に本で読んで」

「へぇ」


 俺の話に少し感心したそぶりを見せ、もう一度碧がインターホンに向き直ったので、慌てて俺はもう一度制止。


「ごめんごめん。もう一個話したいことあって。俺付箋メモ持ってるからさ、ちょっとメッセージ書いておかない?」


 筆箱から付箋メモを取り出して見せると、それを手に取って少し眺めた後に口を開く。


「確かに飲み物とか渡すだけだと無愛想だよな。おっけー。書くからペン貸して」


 道の端に自転車を寄せ、ノートを下敷き代わりにして付箋メモにペンを走らせる。途中で何を書こうか……と詰まっていると、その間に碧は迷う事なくメッセージを書き終えていた。

 その少し後に俺もメッセージを書き終え、それぞれの付箋メモをスポーツドリンクに貼ると、改めてインターホンを向く。


 碧の指が伸び、ボタンを押すと「ピンポーン」と軽快な音が鳴り、すぐに一人の女性が姿を見せた。癖のある髪が特徴的だ。


「「すみません、杏実さんのクラスメイトです。お見舞いに来たんですけど」」


 声を揃えて言うと、女性の顔がぱっと明るくなる。


「そうですか、わざわざありがとうございます! 生憎まだ娘は寝ていて……」


 「娘」という単語を使っている所から推測するに、どうやらこの人が杏実さんのお母さんのようだ。確かにくりっとした目が似ているし、この人ほどではないが杏実さんの髪も少し癖がある。見れば見るほど親子だなぁといった感じだ。


「これ、少しですけど持ってきたので杏実さんにお渡しください」

「ありがとうございます、ちゃんと娘の部屋に置いておきます」


 スポーツドリンクなどを入れた袋を碧から受け取り、丁寧にお辞儀をする杏実さんのお母さんにお辞儀を返す。

 もう一度お辞儀をして杏実さんのお母さんが扉を閉じるのを見てから俺と碧はふぅっ、と息を吐く。


「優しそうなお母さんだったな」

「だな。杏実さん、早く良くなるといいな」


 そんな会話を交わしながら自転車に乗り、俺と碧は普段よりも長くなった帰路を進み始めた。

読んでいただきありがとうございました!


実は杏実のお見舞いのためにあおは部活を欠席しています。

本当はこれの後に杏実パートが入る予定でしたが思ったより長くなったので前後編にしました。次回は杏実パートからの予定なのでお楽しみに。


読んでみて少しでもいいなと思ってくれたら、感想やブックマーク、評価などいただけると嬉しいです!励みになります!

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