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推しの恋路応援前線!  作者: 赤いシャチホコ
第四章『冬』
112/160

0 君達の0歩目

ついにこの作品を投稿してから一年になりました!

ありがとうございます!


今回は記念と言っては何ですが、この物語の根底にある過去のお話をお届けします!


こんな中途半端な話数の中に混ざるからナンバリングはどうしようか、と悩んだのですが、『0』とさせてもらうことにしました。

 中学三年、冬。

 寒風が吹く中、(杏実)は滑り止めの私立高校を受験するために電車に乗っていた。


 電車に揺られながら、試験で少しでも点を取れるように友達と一緒に歴史の問題集を開いていた。

 電車内には私達と同じようにしている人達が多くいる。当然ながら全員同じ高校を受ける生徒。

 滑り止めの私立高校だからほぼ確定で受かるはずだけど、こうして多くの受験者を目の当たりにすると不安が少し湧き出てくる。

 急いで不安を忘れようと、私はさっきよりも一層集中して歴史の問題集を覗き込んだ。


 少し経つと、私立高校の最寄り駅に到着した。

 問題集をリュックを仕舞った私は急いでホームに降り、改札口を抜けようとすると、視界の端に鞄を落として中身をホームに撒き散らしてしまった一人のお婆さんが映った。


 あ、これ助けた方が良いやつ。でも、ここで助けていると友達に置いて行かれてしまうし、助けたところから何か問題に発展してしまうと受験に遅れてしまう可能性もある。どうしよう。


 そうして私が逡巡していると、一つの影がぱっと目の前を横切った。見ると、一人の男の子がお婆さんに声をかけて散らばった荷物を拾い集め出していた。


「碧、お前そういうの助けてる場合かよ! 時間あんまり無いぞ!」

「そんなのは分かってる。だけど気づいちゃったからこれをほっとくわけにはいかないでしょ」

「ったく、分かったよ。俺らも拾うの手伝うからさっさと終わらせるぞ」


 あお、と呼ばれた男の子の周りに何人かの同級生と思われる人達が集まり、お婆さんの荷物を拾い集める。

 その姿を見て、あぁ、かっこいいな。こうでありたい。私もこうならないと。そう思った。








 中学の卒業式の二日後。

 俺は高校入試の合格発表という途轍もなく大切な日を迎えていた。


 緊張を胸に発表時間を待ち、時間になると震える手で合格発表のページを開き、自分の受験番号を探していく。

 上から一つ一つ番号をなぞっていき、その手が途中で止まった。止まったその場所は、「北燈高校」と書かれた欄。つまり………。


「受かった……! 北燈高校!」


 俺は無事に第一志望の北燈高校に受かっていた。


 数時間後、俺は合格証書を受け取るために二日前に卒業した中学を訪れた。卒業早々に中学をまた訪れるのは、なんとも不思議な気分だった。


 先生から賛辞を受け、合格証書と入学に向けての少しの説明を受けると、それで用事は終了。

 外に出ると、すぐに一人の少女がこちらに駆けてきた。


「……佑、どうだった?」


 家がそれなりに近く、仲良くしている千波だ。

 恐る恐る尋ねるようなその声に、俺は力強く答える。


「受かったよ」


 すると、千波の顔がぱっと明るくなる。


「おめでとう、佑!」

「ありがとう、千波。……千波は? どう、だった?」


 話しながら俺達は帰路を歩き出し、今度は俺が恐る恐る尋ねる。

 千波は俺の第一志望の北燈高校よりも一つレベルが高い山生(さんせい)高校を第一志望にしていた。千波なら北燈高校は余裕で受かる範囲だ。

 俺達が住んでいる地域では公立高校を二校受けれる制度なので、千波の志望校は第一志望が山生高校、第二志望が北燈高校というわけだ。

 仮に千波が第一志望に受かっていれば、高校では別々になってしまう。だけど千波のためを思うと、それが良いんだ。同じ高校に通いたい、なんて俺の思いは隠しておかなければ。

 そんな思いを抱えながら尋ねると、千波が悲しそうにも嬉しそうにも取れるよく分からない表情を見せて答えた。


「………来年度もよろしくね、佑」


 ってことは………。


「……落ちちゃってた、か」

「うん。まぁ、自己採点の時点で結構怪しいかなって思ってたし。そもそも私は山生高校に強いこだわりがあったわけでもないから、北燈高校でもまあ良いかなって感じ。……佑とも、通えるし」


 千波はそう言うけれど、よく見るとやっぱり普段よりも少し落ち込んでいるようにも見える。

 だから、千波と一緒の高校に通える事を喜んでいる俺の悪い心をぐっと押し込めて、千波と少し言葉を交わす。


 本当は、一つこっそりと決めていた事があった。

 「次に千波と二人きりになったら、告白する」という事を。

 今は二人きりだし、なんならシチュエーションとしても、落ち込む千波を支える、という形になって成功率は高い気がする。

 だけど、俺が受かり、千波が落ちたというこの状況を利用し、恋を成功させるのは何か間違っているような気がした。

 だから、俺はその日告白するのを止めて、千波の家に着くまでなんて事ない会話を続けたのだ。

読んでいただきありがとうございました!

そして改めて一周年ありがとうございました!

ここまで続けられたのは間違いなく読んでくださっているみなさんのおかげです!

本当にありがとうございます!


じっくりと進めてきたこの作品も気づけば終盤に差し掛かってきています!

それぞれのキャラクターがどのような決断をするかなどを是非とももう少し見守ってあげてください!

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