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少年(?)山田の胃が痛い日々  作者: 夏澄
王宮生活~基礎生活編
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3・わたしが少年(?)になった日 その3

「うわぁぁっ!」

(死んだ、わたし死んだ。胃が痛い予感その4、死亡フラグ飛ばして死亡エンド来た。)


だが、わたしを襲った閃光は、わたしに触れる前にシュンッと消滅した。

そう、それはただ単に消滅したのだ。

・・・・・ただ桃姫のように花弁に変わりはしなかったが。


わたしは先ほどの閃光が飛んできた方向を探した。

(また攻撃されるかもしれない。)

視線を向けた先には黒いローブの集団。その中の一人と目があった。ゆるくウェーブのかかった長い髪を頭の上で一つに束ねた妖艶な美女。

美女は澄んだ緑の瞳を怪しく瞬かせてニヤリと笑った。


「〇◎△◇×□!」

声をあげたのは彼女。

意味が分からずとも、そのハスキーな声すら怪しく美しい。

「あの人、山田さんの身柄を引き受けるって言ってるよ」

桃姫がこっそり教えてくれた。


美女はバカ王子に近づいて、何事かやり取りを交わした後、今度はわたしに近付いてきた。

「付いておいで」

「えっ・・・?」

わたしの聞き間違いでなければ、今のは確かに日本語だった。

まさかこの場に日本語を理解し得る人間がいるとは思わなかったので、驚いて思考が一瞬停止した。

美女はわたしの動揺をよそにこう続けた。

「王子の了承は得た。お前の身柄は私が引き受ける。」


ついさっき、わたしを攻撃したのはこの人だ。

(それがわたしの身柄を引き受けるって?)

「賢明な子は嫌いじゃないが、今は私を信用して付いておいで」

(何か考えがあってのことなら、このまま考えなしの王子達に身を預けるより安全かもしれない。)

そう考えてわたしは返事のかわりに頷いた。


「山田さん・・・」

不安そうに声を掛けてきた桃姫には、「大丈夫」と視線で返し、

美女に続いて部屋を出て行こうとしたところで、バカ王子が声を掛けてきた。

言葉が分からないので首を傾げると、

「名を知りたいと言っている」

と美女が訳してくれた。


それにどう答えるか・・・・・

そんなの決まっている。


「山田。わたしの名は山田。どうぞヤマダと呼んでください」


こんな言葉も分からない世界にわたしを閉じ込めようとする彼らに名乗る名なんて、苗字だけで十分だ。

今できる精一杯の当て付けとして、わたしはそう答えた。




こうしてわたしは少年となって、この世界で生きていくことになった。




_____以後、美女と王子のやり取り_____


「その子の身柄、私が引き受けた」

そう声をあげたのは、魔法研究所の変わり者アデリアだった。

誰よりも実力がありながら、自分の興味のあることにしか動かない変わり者、年齢不詳の魔女。

妖艶な姿とは裏腹のきつい言動、詳しい出自を誰も知らないのにもかかわらず、何をしても許される立場が暗黙の了解として成り立っている。

ラズーロ王子が王宮内で最も苦手とする人物のうちの一人だ。


「魔女め。何を考えている?」

そう言って苦い顔をする王子にアデリアは近付き、囁いた。

「何を考えているもなにも、処分に困っているんだろ?だから私がもらってやろうと言っているんだ」


「いくら魔女殿とはいえ、前置きなく魔法を仕掛けるのはいかがなものかと」

そばに控えていた眼鏡の男が苦言を呈した。

この男、先ほど山田に内心で『ウザ眼鏡』というあだ名を付けられた男の役職は宰相補佐である。

ラズーロ王子が王位に就くと同時に次期宰相の座に就くことがほぼ確定している。


「ひよっ子共が、随分偉そうな口を叩けるようになったもんだね。

こっちはお前たちがションベン漏らしてビービー泣いてる頃から知ってるんだよ。

あの可愛らしいお嬢さんにバラされたくなかったら、口を慎みな!」


彼らが小さいころから魔女は魔女だった。記憶の中の魔女は今と同じ姿だ。へたをすると彼らが生まれる以前からその姿は変わっていないかもしれない。

(これだからこいつ苦手なんだよ。)

王子と宰相補佐は二人して苦虫を噛み潰したような顔になって口を閉ざした。


アデリアは気にせず続ける。

「今見た通り、多少の魔力無効化はできるようだが、花弁に変えられなかったあいつは『王の盾』とは成り得ない。第一、男だしね。それに前々から『王の盾』の力について調べてみたかったんだ。たいした力はないようだが、研究の足しにはなるだろう」


「分かった好きにしろ」

苦手な奴とはなるべく関わりたくない、とばかりにシッシッと手を振って追いやった。




アデリアが少年を伴ってこの場を去ろうとした時、ふと気になってラズーロ王子は少年に声を掛けた。

「そういえば男、まだお前の名を聞いていなかったな。今後、名を呼ぶことがあれば不便だ。名を申せ。」

アデリアが少年に声を掛け、促す。

「ヤマダ。※※※ヤマダ。♯♯ヤマダ※※※♯♯。」

「ヤマダと呼んでくれと言っている」


思いがけない強い視線に射抜かれた。

それは細身で背も小さく、ひ弱そうな外見とは真逆の強い意志の篭った目だった。

(これはこれは。桃姫に近づく虫ケラかと思いきや。良きライバルになりそうだ。)

そう直感で感じた。





やっと山田が自己紹介。

でも、フルネームは明かしません。


王子に恋のライバル認定されました(笑)。

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