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8話 恥ずかしいコト、有名人?

 ルイスに戻り、俺たちはギルドに向かった。

 俺はクエスト完了の報告をして報酬を受け取る。

 その際に、俺と愛莉(あいり)のランクは一気にCまで上がった。

 理由は、俺たちがジェネラルを倒したからとのこと。

 いや、俺たちは戦ったけど倒してないんですけど……と言ったのだが、ニィゼルさんは「贔屓です♪」と笑顔で言った。

 ……いや、それダメじゃん。

 と思ったが、まぁ気にしないでおこう。気にしたら負けだ。

 

 その後、宿の前でドゥーエンさんたちと別れると、俺はまずミュウちゃん事情を話して井戸の水を使ってジェネラルの返り血を洗い流した。

 後でミュウちゃんに謝っておこう。血まみれの俺を見て涙目になってたし。

 

 

 ♡

 

 

 持ってきていた服に着替えた後、俺と愛莉は服屋に来ていた。

 金なら今回の報酬の金貨1枚と銀貨60枚があるので、ある程度の服は買えるだろう。

 と思ってたのだが……

 

「安すぎないか?」

 買い物を終えた俺は、思わずそう呟いた。

「そうですね」

 愛莉もうんうんと頷く。やっぱりあれは安すぎる。

 今回はシャツと下着を2着ずつ、俺はそれにズボンとコート、愛莉はスカートとスパッツ、それとローブを買った。

 これだけ買って、お値段なんと銀貨10枚と銅貨30枚。

 いや、確かに俺たちの収入が少し多かったが、流石に安すぎると思う。

 

 宿に帰ってミュウちゃんに聞いてみたところ、あそこは貧民でも買えると言うのを売りにしているらしい。

 なるほど、だから安かったのか。

 と納得し、俺と愛莉は部屋に戻った。

 

 

「ねぇ、お兄様、ぎゅーって抱き締めてください」

 部屋に戻るや否や、愛莉はそんなことを言ってくる。

「どうしたんだ?」

「いえ、ただ甘えたいだけです」 

 ……そう言えば、日本(向こう)にいたときは父が「柳沢家の者が甘えるなど言語道断だ!」なんて言ってたな。

 俺は「分かった」と返すと、俺は愛莉の体を抱き締める。

 

「えへへ、お兄様暖かいです♪」

 愛莉は嬉しそうに微笑み、俺の胸に顔を擦り付けてくる。

「すぅ……へへっ、お兄様良い匂いがします」

「おいおい、俺の匂いなんて嗅ぐんじゃない」

 そう言うと、愛莉は「大丈夫です」とドヤ顔で言う。

 

「……えいっ」 

 暫く抱き合っていると、突然愛莉が体重を掛け俺をベッドに押し倒してきた。

「あ、愛莉……?」

「ふふっ、ちょっと興奮してきました」

 愛莉は頬を紅潮させ、潤んだ瞳で見つめてくる。

「ねぇお兄様、このままシませんか?」

「……断る」

 そう言うと、愛莉はぷくぅっと頬を膨らませる。

「何でですか?」

「いや、こっちの方が聞きたいんだが」

「それは……」

 愛莉は顔を赤く染め、そしてゆっくりと口にする。

 

「もう我慢の限界で」

「我慢?」

「その……、こっちに来てから1回もシてませんし、向こうでも異世界の知識を蓄えるために4日近く我慢してて……」

 愛莉が何を言いたいのか、理解してしまった。

 あれだろう、つまり欲求不満なのだろう。

 ……俺は何て返せばいいんだろう。

 そう悩んでいると、愛莉はより一層抱き付いてくる。

 

「それに、こっちに来てからお兄様と触れ合う時間が増えて、余計に溜まっちゃって……」

 顔を真っ赤にしながらも、愛莉は口を止めない。

「その、だから……」

 俺はその先を言わせまいと、愛莉の頭を撫でる。

 愛莉は「お兄様っ」と呟き、顔を蕩けさせる。

「少しの間、俺は外に出とくから」

 愛莉は首を傾げ、そしてポッと顔を真っ赤にする。

 多分、俺の言いたいことは理解できただろう。

 俺は愛莉をベッドに寝かせ、部屋を出た。

 

 俺が部屋に戻ったのは、それから30分以上経ってからだ。

 それから寝るまで気まずかったのは、言わなくても分かるだろう。

   

 

 ♡

 

 

 翌日、俺たちはいつもより遅く起き、服装を整えてから部屋を出た。

 宿の裏にある井戸で水を汲み、顔を洗い髪を整える。

 

 それから食堂に向かい、朝食を摂った。

 今日の朝食はパンにポテツ入りの野菜スープ、それとモウ牛のステーキだった。

 どうやら、昨日運良く買えたため出そうと思ったらしい。

 豚肉に飽きてきたのは確かだが、流石に朝からステーキは胃に負担がきた。

 朝食を食べ終わった後、俺はさりげなくミュウにそのことを伝え、火狐亭を後にした。

 

 

 ギルドに着くと、俺はいつものようにニィゼルさんの元に向かった。

 

「おはようございます、ニィゼルさん」

「おはようございます、トーヤ様」

「あの、ニィゼル、その〝トーヤ様〟ってどうにかなりませんか?」

 様付けはどうにも恥ずかしい。それに昔を思い出す……

「それなら、トーヤくん、でいいですか?」

 トーヤくん、そんな呼び方は生まれて初めてだ。

 

「ふふっ」

 新鮮味を感じていると、突然ニィゼルさんが静かに笑う。

「ど、どうしました?」

 慌てて尋ねると、ニィゼルさんは「すいません」と謝る。

「トーヤくんがあまりにも嬉しそうだったので」

「えっ、俺そんなに嬉しそうにしてました?」

「はい。もうすっごい嬉しそうでしたよ。まるで親に褒めてもらった子供みたいでした」

 そ、そんなにか……。って、そう言えば両親に褒められたことなんて無かったな……

「ど、どうしたんですか? いきなり暗い顔をして」

 と、今度はニィゼルさんが慌てて尋ねてくる。

 おっと、顔に出てたか。反省しなければ。

 俺は心を切り替え、「何でもありませんよ」と笑顔で返した。

 

「……ところで、今日は少しギルドの雰囲気が違いませんか?」

 俺はギルドに入ってからずっと気になっていたことを尋ねた。

 ニィゼルさんは苦笑いを浮かべながらも説明してくれる。

「それはですね、皆トーヤくんのことが気になるからですよ」

「……へ?」

 俺はつい、()頓狂(とんきょう)な声を上げる。

「あの、どういうことですか?」

 俺は気になり、理由を尋ねる。

 

「だって、トーヤくんとアイリちゃんって冒険者になってたった2日でCランクに昇格したでしょ?」

 と笑いながら答えるニィゼルさん。

 情報早いな……って、それってニィゼルさんの所為だよな?

 俺がジト目でニィゼルさんを睨んでいると、ニィゼルさんは「有名人ですね♪」と何食わぬ顔で笑う。

「……」

 俺はただ無言で睨む。

 ニィゼルさんは吹き出し、「ごめんなさいね」と謝ってくる。

「まぁ、いいですけど……。厄介事は持ってこないでくださいね?」

 俺は念を押すようにそう言う。

「分かってますよ」

 

 それから数分程雑談をして、俺は愛莉の元に戻った。

この作品を読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字、改善点等がございましたら容赦なく教えてください!

この作品を読んで頂いた読者様に最大の感謝を

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